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٭❀*レモニカ様へ、ピザの旅

∫4話 自然の暴走

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10.人間ヒューマノイドと自然の対立
 散歩から帰ってきた私は、リカエルちゃんと2人でフルーティア全書に目を通した。むやみに人間ヒューマノイドに衝突するよりも、一通り相手のことを知っておきたかった。
「ねぇ、リカエルちゃん。人間ヒューマノイドって、魔物なの?」
「うーん…この本にはそう書いてあるけどね。魔物の定義は魔術を操れる者だから、違う気がするんだけど…この世界の魔素量に耐えられてるってことは、少しは魔物の血が流れてるのかな?」
そうか、魔物の定義が魔術を操れるものなんだね。あ、でもということは…
「もしかして、魔術的魔式は使えないけれど、別の魔式なら使えるとか?」
この世界では魔法と言うと魔式、魔術、魔生物などの魔素に関係のあるものに対して初代魔王神が取り決めた法律を表すらしい。生前の世界で言われていたものは魔法ではなく、魔式と呼ぶらしい。
「ミール、もしかして科学的魔法の事かい?よく知ってるね、まだ幼いのに。」
「前に本で読んだのよ、お兄様の本で。」
読んだ本の内容は、全て記憶している。(無限記憶エンドレス・メモリーの効果らしい)
「確かにそう考えるとそうかもしれない。あと、人間ヒューマノイドが厄介な理由はもうひとつある。それは、人間は、無属性だってこと。つまり、弱点が無いんだよ。」
やっぱそうだよね…予想はしてたけど。
「あと、人間は自然と物凄くなかが悪い。あいつらは自分たちの科学力が上がれば上がるほど自然を破壊する。」
はあ、なんかごめんね…。
 だいたい人間については知ることが出来た。あとは自分たちの戦力をあげるだけ。本当は戦いたくないけど、もし戦わざるを得なくなった時に困るからね。と、言うわけでこの前お父様に剣術を教えてくださいって言うと…
「剣術か…女の子には似合わないかもね。ミールは魔術的魔式を極めなよ。」
って言われちゃって。剣術の方が圧倒的に攻撃力が高いのになー。ま、お兄様もいる事だし、私は魔術的魔式に頼ろう。
「ミール、そろそろ夜ごはんだし、いったん休憩しようか。あと、ボクのことはリカエルでいいよ。」
「そうしようか、リカエルちゃん…いや、リカエル。」
私がそう言うと、リカエルは嬉しそうに尻尾を振った。

11.伝説のスキル、料理霊スイート・シェフ
 翌朝、私は魔式の修行を始めた。お兄様とリカエルも手伝ってくれるらしい。私はリカエルに『魔式には色々な種類があり、種族、また個体によって得意属性が異なる』という事を教わった。
「良いかミール、魔術的魔式は自然の力を借りる。だから、魔術的魔式を操るには、自然を大切にし、敬い、そして愛することが何よりも重要だ。」
お兄様がそう言うと、リカエルがお兄様の話を補い始めた。
「魔術的魔式の属性は、7つある。火・水・木・雷・地・光・闇。魔法を定め初代魔王神は、自然をこの7つの力によって、作り、そして守った。」
自然か…。もしかしたら人間ヒューマノイド達は自然を破壊しているから、魔術的魔式を使えないんじゃなくてそもそも使うのかも。
「そこで一つ問題があるんだけど…」

人間ヒューマノイド達の研究の影響で、自然に影響が出始めていて、作物が育たなくなったんだ。それに激怒した美食家の自然の精霊、レモニカ・ピザ様が魔術的魔式の力を暴走させてしまったみたいなんだ。ミールが出来る魔式の強さだと影響は出ないけど、僕達はその影響で1番簡単な魔式を使っただけで、魔素が切れてしまうんだ。」
話によるとレモニカ様は、暴走すると同時に周りから魔素を吸収してるらしい。だから今は簡単な魔式しか使えないとの事。
「レモニカ様の暴走が原因なら、その暴走を止めれば良いんだよね?」
「それは試した。けど、レモニカ様は自然の精霊。自然関係の魔生物マジカリーまで暴走させて僕達を襲わせて来たんだ。それに、そいつらを倒した所で僕達に勝てるはずも無かった。」
はぁ…そりゃ、敵いっこないか。じゃあどうすれば…
「あ…」
私が途方に暮れていた時、お兄様があることを思い出した。
「ミール、スキルチェックのこと、覚えてる?」
「うん、何日か前にやった、私が持ってるエクストラスキルが何かを調べるやつでしょ?確か私のスキルは…あ!」
「「料理霊スイート・シェフ!!」」
料理霊スイート・シェフ、持ってるの!?」
リカエルが驚いた理由、それは、このスキルが伝説上の物であると言われていたからだ。
「正直、僕もびっくりしたよ。まさかそのスキルが実在するとは思ってもみなかったし、そのスキルの所有者がミールだったなんて…」
さっきリカエルが言っていたように、レモニカ様は美食家。私のスキルを使えば、信じられない程美味しい料理が出来る。つまり、レモニカ様の暴走を止められるかも、という訳。
「でも私、料理した事ないし、レモニカ様の好きな物が何かわかんないよ…」
まあ、前世でめちゃくちゃ極めたけどね。こっちの食べ物は全て記憶してるけど、扱い方は分からないよ。
「レモニカ様の好物はピザだよ。前にレモニカ様に会いに行った時、お供え物としてピザが山盛りだったし、間違いないと思う。」
ピザね…。得意分野だ!前世でイタリア留学したとき、ピザを極めたもん!
「レモニカ様が好きなピザは、ジェノベーゼ。その原料は、バーズとオリヴァーオイルと…あ、あとアモンディアだ。」
んー…なんとなく見当はつくような?
「ピザ生地はうちにあるから、バーズとオリヴァーオイル、そしてアモンディアを手に入れなきゃ。レモニカ様に作るから、1番高級で、美味しい物にしよう。」
「それじゃ、ミール、ステビア、極上のピザを求めて…レッツゴー!」
「「おー!」」
レモニカ様用に作ると思うと緊張するなー…。でも、みんな張り切ってるし、やりますか!
「ミール、、これから少し長旅になるけど、良いかな?家に入って、準備しよう。ピザの作り方は判る?」
「うん、何日か前に本で読んだのよ。覚えてるから、大丈夫。」
ま、読む前から完璧なんだけどね。
「よし。ミールは何冊か持ってきて欲しい本があるから、カバンに入れといてくれ。リカエルは、これ提げてて。」
お兄様が、リカエルにバッグを提げると、リカエルは中を漁り始めた。
「色々入ってるんだね。見たところ、回復薬ヒール・ポーションがいっぱいあるみたい。」
「またアルラウネみたいなのに襲われて傷だらけになったら、食材を手に入れられなくなるだろう?だから、とりあえずだ。」
私が本を取りに行くと、お兄様は、剣を研ぎ始めた。少しして研ぎ終わると、私と一緒にお母様に経緯を説明し、旅に出る用意が整った。
「ミール、準備出来たか?」
「うん。いつ出発するの?」
「明日の夜だな。昼だと、またに襲われるかもしれないし。それまで寝てようか。」
今夜か…眠くて歩けないなんて事にならないといいけど。
「ミール、ステビア、リカエルちゃん、そろそろ寝なさい。ミールの部屋で、3人一緒に寝たら?きっと仲も深まるはずよ。」
お母様、そんな夢のような時間をありがとう!お兄様と一緒に寝られるとはね!リカエルのしっぽ、寝ながら触ろうかな~。
「お母様、ありがとうございます。もう寝ますね。」
「うん、おやすみ。頑張ってね。」
「「「おやすみなさい!」」」
私達はベッドに入り、明日から始まる旅に期待を込め、3人仲良く、同じベッドで抱き合うのだった。
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