VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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4ー2:流れ、流され、川下り

◇138 興奮剤はヤバくない?

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「な、なにこれ?」

 私は首を捻ってしまった。
 明らかにヤバそうな液体が漏れ出ている。
 
「うぅー、気持ち悪い」
「そうね、この臭い」

 嗅ぎたくない臭いだった。
 一応水に流されているおかげで、そこまで強くない。
 けれどこの液体の正体は何か。それが分からない以上、安心はできない。

「どれどれー……なるほどな」

 しかしこっちには天才のNightさんがいる。
 Nightさんの手に掛かれば、圧倒的な知識の本棚から、データを引っ張り出せるのだ。

「Night、これはなに?」

 私はNightに訊ねると、険しい表情をする。
 眉根を寄せると、唇を噛んだ。

「これは興奮剤だ」
「興奮剤?」
「それってアレだっけ? 精神を興奮状態にする薬だっけー? へぇー、そんなのが漏れてるんだー」

 Nightがポツリと呟いたのは、漏れ出た液体の正体。
 それが興奮剤だと聞いて、正直ピンと来ない。
 ポカンとしてしまうと、Nightはそれ所ではいられない。

「バカか。興奮剤がアウトリガーの中に入っているんだぞ」

 簡潔な説明すぎて一瞬理解ができない。
 ここは意識を切り替えてみよう。
 アウトリガーの中に興奮剤。あれ、なにかおかしい?

「それのなにがマズいの? あっ」
「そうだ。興奮剤が漏れると言うことは、アウトリガーの中には興奮剤が液状に含まれていることになる。それがなにを意味するか、分かるな?」

 考えてみればおかしな話だ。
 興奮剤がアウトリガーの中に入っている。
 それって仕組まれていたってことだ。

「ちょっと待ってよ。そんなのが漏れるって大問題じゃない?」
「大問題もなにも、もっと問題がある」
「問題ってー?」

 私にだって分かってる。これは凄く問題がある。
 ギルド側に対して、流石に不信感を抱いてしまう。

「こんなものを入れる理由。そんなもの、一つしか考えられないだろ」
「考えられないって、まさかだけど」
「そうだ。コレを使って、無理やりスリルを味わわせようとしているんだ」

 つまりはこれは意図的な物。
 レジャーのスリルをより一層際立たせるための演出。

 しかし最初から仕組んでいれば面白みが掛ける。
 そこで少しでも自然を利用しようとした。
 それがこの紫色の液体の正体と、存在の証明になる。

「つまりNightさんは、ギルド側が意図的に興奮剤をアウトリガーの中に仕込んだとお考えですか?」
「そうとしか考えられない。実際この筏は、既に筏じゃないからな」

 ずっと黙っていたけれど、確かに筏じゃない。
 もはやカヌー……いや、ボートになっている。
 全て破綻してしまうと、ここまで黙っていた不満が爆発した。

「おかしいと思ったんだ。安定のためにアウトリガーを使うのは分かる。理解はできる。しかし、これだけ危険に巻き込まれるのはないだろ」
「確かに、おかしいよね」

 もちろんおかしくない部分も幾つもある。
 例えば最初だ。上流の激流は理解できる。
 けれど初心者には相当厳しいコースで、下手したら怪我をしていた。

 もちろんゲーム内の怪我は時間が経てば勝手に治る。
 しかし心へのダメージが大きい。
 そうなれば現実に負担が掛かるので、現実と非現実を理解しているNPC達が、それを見落とすなんておかしい。

「一体誰が仕組んだんだ?」
「それは分からないけど……どうする? 止まる?」

 正直ここまで来た以上、引き返すのは無理。
 それなら岸に寄せるのがベスト。
 これ以上面倒ごとにかかわらなくて済むのだが、そんなことも言っていられない。

 バッシャーン!

「「「うわぁ!?」」」

 大きな水飛沫が上がった。
 筏が波に乗り上げる。
 如何やら流れが急に速くなったらしい。

「全員、しっかり掴まっていろよ」

 幸いなことに全員体幹は強い(Night以外)。
 そのおかげか、私がNightの体を抱き寄せることで、全員筏から落ちずに済む。

「ふぅ。第一波は乗り越えたな」
「第一波?」

 これが後何回か続くってことかな? それは怖いな。
 コンドルによる岩雨攻撃を掻い潜ると、今度が川が反旗を翻す。
 私達を帰らしてくれそうにない。

「仕方ない。このまま波を乗りこなすぞ」
「乗りこなすってどうやってよ!?」

 Nightの発想は飛んでいた。
 一体何を如何するのかまるで見えない。

「決まっている。お前の出番だ」
「私の? ああ、そう言うことね」

 ベルは何かを悟った。
 すると不安定な筏の上で立ち上がる。

「Nightなにをする気なの?」
「決まっている。こうするんだ!」

 ベルに指示を仰ぐと、【風招き】を発動した。
 風を呼び寄せる<シルフィード>の種族スキル。
 何度もお世話になるけれど、今日はこれで二回目だ。

「さぁ、行くわよ!」

 ベルがそう言うと、急に波が荒れる。
 バッシャーンと音を立て、筏が浮き上がる。

「うわぁ、なに!?」
「逆だ逆。波を落ち着かせろ!」
「分かってるわよ。分かってるけど……」

 ベルにして欲しいことは決まっている。
 風を操って波を落ち着かせようとした。
 だけど上手く行かない。ベルの風が通用しない。

「ベル、上手く行きませんか?」
「ダメね。これじゃあ……」

 ベルの【風招き】が通用しない。
 体が持っていかれそうになる激しい波。
 私達は何とか耐え抜こうとする。

「あはは、楽しいねー」

 フェルノはただ笑っていた。
 この激しい揺れを楽しんでいる。

 バッシャーン!

 もう一回筏が揺れる。
 今度は転覆しそうになるほどで、アウトリガーのおかげで耐える。

「「うぉっ!?」」
「くっ、これは……」

 Nightは唇を噛んだ。
 筏がボコボコにされてしまうと、フラフラと回転する。
 モーターもプロペラも、これじゃあ何も意味が無い。

 バッシャーン!
 バッサ―ン!!
 ドッシャー――――ン!!!

「うわぁ、揺れが激しいね」
「ううっ、ウザッ」
「ベル、言葉が汚いですよ」
「仕方ないでしょ。私はスキルまで使ってるのよ!」

 確かにベルはスキルまで使っている。
 スキルの発動は脳と心の容量メモリを使う。
 そのせいか、集中状態で、この波を掻い潜るのは大変だ。

「でも一番大変なのは雷斬なんじゃ……」

 正直一番大変なのは雷斬だった。
 何せずっと立っている。
 オールを使って、風と波を巧みに操る。

「ううっ、それを言われたらお終いじゃ……」
「とにかく、この波を抜けるぞ」
「あはは、楽しいけどー」
「「「楽しくない!!!」」」

 フェルノだけはこの状況を楽しんでいる。
 何処までも心が広い親友だ。
 だけど波をグワングワンと打ちつけると、体が筏から弾き出されそうになる。

 完全にジェットコースター気分だった。
 だけどただのジェットコースターじゃない。
 三半規管が弱い人ならもう撃沈。そのレベルの酷い揺れに煽られながらも、私達はもっと脅威に気が付くべきだった。
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