VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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4ー2:流れ、流され、川下り

◇148 アクイタヌキに化かされて

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 本当に何が起きてるの?
 私達は戸惑ってしまう。
 しかし考えてみれば単純で、ギルド職員がそんなことする訳ない。
 だけどまだ忘れていることがあった。

「あれ、ちょっと待ってよ」
「どうしたの、アキラー?」

 ここで忘れていたことがあった。
 さっきまで会っていたA―スさんは見間違いだった。
 おまけに筏の正体も偽物だった。
 それじゃあA-スさんは?

「それじゃあ私達が会っていたAースさんって」
「偽者だった訳か? そんなバカな……」

 Nightは顔を押さえていた。
 目が怖い。そんなことあり得ないって思うのが普通。
 もちろん私も同じで、頭を抱えてパニックになる。

「ん? もしかしてアンタ等、タヌキにでも化かされたのか?」
「タヌキ、だと?」
「ああ、そうだぜ。このダンジョンにはよ、アクイタヌキって言う人間を騙して楽しむ陰湿なモンスターがいるんだよ。そのせいで、普段は立ち入れないようにしてんだけどさ、多分アタシの姿に化けたんだな」

 アクイタヌキ。そんなモンスター知らない。
 Nightも初耳だったのか、記憶に留める。
 一体どんなモンスターなのか。姿形は分からなくても、少なくとも嫌なモンスターだと判った。

「それじゃあなに? 私達、まんまと化かされたってこと!?」
「そういうことになりますね」
「ムカー。なんか腹が立つよー」
「フェルノだけじゃない。私もムカついている」

 〈《継ぎ接ぎの絆》〉全員が怒っていた。
 当然だ。こんな怖い目に遭ったんだ。
 しかもそれが一匹のタヌキの仕業なんて許せない。

「タヌキに化かされるか。どれだけ、このダンジョンはことわざが好きなんだ」
「そんなことどうでもいいよ!」
「実際問題、このダンジョンはことわざをモチーフにしていただろ」
「そうだけど……やっぱりムカつくよ!」

 私はついつい本気になってしまった。
 だけどモチーフをそのまま使うのは面白いかも。
 ふとそんな意識が芽生えるが、A-スさんはこのやり取りに終止符を打つ。

「まあ命があっただけでよかっただろ?」
「そんなこと言われても……Aースさんは、自分の姿を真似られて、迷惑じゃないんですか!?」

 私はついついA―スさんに当たってしまった。
 もちろん悪気があった訳じゃない。
 すぐに反省した私はA-スさんに怒られずに済んだけど、同時にA-スさんの本音が飛び出す。

「迷惑? 当たり前だ。迷惑に決まってる」

 A-スさんは鬼のような形相になる。
 海賊帽を押し上げると、ムカついた顔をした。
 けれど私達を怒鳴り付けても仕方が無い。
 A-スさんは大人だ。

「けどな、私に化けてたタヌキはもういないんだ。こんな広いダンジョンマップ内を探し回るなんて無理な話だろ?」
「そ、そうですけど」
「だから今回は命があっただけよかったって思おうぜ。それと、結局楽しめただろ?」

 A-スさんはニカッと笑った。
 確かに怖い目にはたくさん遭ったけど、結局楽しんでいた。
 本来のレジャーの形じゃなくて、アドベンチャーになっちゃったけど、それでも結果的にはオーライだ。

「確かに楽しかった……よね?」
「うんうん。すっごく楽しかったー」
「大変だったけどね。にしてもあの龍まで化かされた内なんて、ちょっと残念ね」
「龍? そう言えば、さっき黒龍が飛んでったな。アレはなんだったんだよ!」

 私達は龍を見かけた。
 アレさえアクイタヌキの仕業、かと思えば如何やら違うらしい。
 A-スさんは食い気味に顔を近付けると、目をキラキラさせる。
 お宝を求める海賊の目だ。

「えっ、アクイタヌキの仕業じゃないんですか?」
「あはは、面白い冗談だな。アクイタヌキがそこまでするわけないっての」
「えっ、それじゃああの龍は……」
「幸運だったらしいな。まあ、龍が見れただけよかったと思うか」

 まさかの本物だった。
 ってことは私達は幸運だったってこと?
 思えばあのマグロは私達のことを助けてくれていたのかも?
 今となっては真実は分からないけど、何故かホッとする。

 私達は凄いものを見ちゃったんだ。
 それが正直に嬉しく感じる。
 私達は貴重な体験に笑むを浮かべると、A-スさんは気を取り直す。

「ふん。そんじゃあアンタ等はとっとと帰りな。ここは立ち入り禁止だ」
「ええっ、立ち入り禁止なんですか!?」
「当り前だっての。アクイタヌキが化かすようなとこ、レジャーに使える訳ないって。はぁ、ミーNaには後で説明しないとな」

 A-スさんは溜息を付いていた。
 確かにせっかく計画したイベントが中止になるなんて。
 まだ大々的に告知していなかっただけよかったかもと、私達は胸を撫で下ろした。

 だけど貴重な体験をしたことは変わらない。
 私達は龍に出会ったんだ。それとアクイタヌキって言う恐ろしいモンスターにも。
 これは全部まとめてよかったって思うべき? 色々頭を悩まされる。

「もしかして、コレがお宝?」
「おっ、言うこと言うじゃねぇか。捉え方だよな」
「捉え方って……うわぁ」

 私はA-スさんに腕を引かれた。
 それとフェルノも腕を引かれた。
 A-スさんは楽しそうで、ニヤニヤ笑みを浮かべている。
 本物の笑顔。アクイタヌキが見せた狡猾な物とは違う。

「A-スさん!?」
「アンタ等にとってのお宝は手に入ったんだ。つー訳だ、これで今回のレジャーは終了。アタシは船長として、船員達を守る義務があるんだよ」
「ええっ、まだ続いてるんですか?」

 A-スさんのペースは続いている。
 未だにここはレジャー会場だ。
 埋め合わせも兼ねてか、A-スさんのテンションはやけに高い。

「当り前だろ。それじゃあ全速前進、ヨーソロー」

 A-スさんは腰に携えた短剣を抜く。
 指し示す先に陽の光が当たると、煌めいて眩しい。

「ちょっと待て、A-ス。この後はどうするんだ?」
「どうすもなにも無いだろ。誰かがなんとかする」
「誰か? ギルドの職員かなにかか?」
「はっ。アンタ等が気にしなくてもいいんだよ」

 A―スはNightが食い気味で来るので面倒そうにあしらう。
 これ以上この一件にかかわってはいけないのかな?
 多分だけど、かかわっても碌なことが無いからだ。
 
「ほらほら、私達のアジトに戻るまでが冒険。気を引き締めろよ」
「お、おー?」
「声が小さい! 後違うだろ」
「「「あ、アイアイサー???!!!」」」

 私達のことを最後まで楽しませようとする。流石はギルド職員。
 何故だか上手く丸められたような、アクイタヌキさえ利用してしまったA-スさんにすっかり乗せられると、私達はリュウシン大渓谷を離れるのだった。
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