VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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4ー2:流れ、流され、川下り

◇147 本物のA

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 突然現れたのはA-スさんだ。
 私達がこんな危険な目に遭った原因の一つ。
 ここまで一向に姿を現わさなかったけど、今ようやく合流できた。

「A-スさん、遅いですよ!」
「ん?」

 私はA-スさんに私は泣きつく。
 ギュッと拳を付くって腕をブンブン振るった。
 するとA-スさんは首を捻り、真顔になる。

「私達怖かったですよ」
「そ、そうか?」
「はい。本当に死んじゃうかと思ったんです」
「そりゃあ、あんな高い所から落ちたら死に掛けるよな」

 分かり切っていたらしい。
 なんだろう、ちょっとだけイラっとする。
 何せ完全に他人事な言い回しで、私だって黙ってない。

「本当に怖かったんですよ!」
「はっ?」
「なんでポカンとしているんですか。それでも責任者さんですか!?」

 私は詰め寄ってしまった。
 本気の私は怖い。
 堂々とした殺意の目を剥き出しにされると、A-スさんも唾を飲む。
 恐怖心に心臓が止まりそうになると、過呼吸寸前だった。

「落ち着いてよー、アキラー。怖いよー」
「だって怖かったよ? なにが起こるか分からないし」
「全くそうよね。でもA-スさんに怒鳴り付けても仕方ないでしょ?」

 なんでだろう。こんな時だけ、急にベルが大人ぶる。
 よくよく考えて見たらそうなんだけど、何故かムカッとする。
 もちろん誰かが悪い訳じゃない。
 なんだけど、何か無性に引っ掛かる。

「そもそもの話、お前は一体何処にいたんだ?」
「はっ、それはこっちの台詞だっての」
「こっちの台詞だと? どういう意味だ」

 急に意味の分からないことになった。
 A-スさんは嘘を付いていない。それだけは確かだ。
 だけどそれだと言葉の意味が半分おかしい。
 なにがって、A-スさんとの意識の齟齬が生まれる。

「私はずっと持ち場で待ってたんだぞ」
「えっ、持ち場って?」
「いつもの調子でやってやろうと息巻いていたのに、全然来ないじゃねぇか」

 A-スさんは急に怒鳴り付けた。
 もっとややこしくなる。
 そんな私達の顔色を窺うと、A-スさんは爆弾を投下した。

「ちょっと待てよ、アンタ等なにか勘違いしてるんじゃないのか?」
「「「えっ?」」」

 勘違いって一体なんのことだろう?
 私達はポカンとしてしまう。
 するとA-スさんは頬をポロポリ掻いた。

「おいおい、アタシにアンタ等の記憶は一切無いんだぞ? 一体なにと見間違えたんだ?」

 ・・・えっ、如何いうこと?
 私達は顔色が悪くなり、互いに見合う。
 首を捻ってしまい、理解に苦しんでしまうと、ポツリと口にした。

「見間違えた?」
「えー、えっと、A-スさんだよねー?」
「おうそうだぜ。みんなの船長、A-ス様だ」

 A-スさんは短剣を抜いた。
 YESと言いたそうで、私達は身構える。
 完全にA-スさんが担当するレジャーの上だった。

「あっ、設定だってことは忘れんなよ?」

 まさかの保険を掛けられた。
 そんなことを言うスタッフは聞いたことが無い。
 私達は調子が崩れそうになるが、Nightだけは踏み込む。

「どういうことだ」
「どういうこともなにも、見間違えたんだろ?」
「そんな筈が無いだろ。その格好、その口調に言動、なにを取ってもお前だった……うおっ!?」

 しつこくNightは突き付けた。
 追及がウザかったのか、A-スさんはちょっかいを出す。
 指を前に出し、デコピンをNightの額に繰り出す。

「危なかった」
「へぇ、避けるんだな。ナイスだぜ」
「ナイスじゃないだろ。私達は一応試乗試験に」
「それなんだよな。アタシ、試乗試験のことをミーNaに頼まれて、仕切りに来たっていうか、見張りに来たっているか、安全が確保されてないとダメだろ? それなのに一向に現れないから、アンタ等を探してたんだよ」

 ・・・今度は何を言い出したの?
 初耳に近い情報が飛び出し混乱する。
 けれど私とNightは意識を変えたり、思考を切り替えたりして、何とか話に食らい付く。

「ちょっと待ってください。それじゃあ私達が会ったA-スさんは?」
「だから見間違いだろ。それにこんな危ない場所、ギルドが容認する訳ないっての」
「ええっ、それじゃあ前提が全然」
「崩れるな。一体なにが起きていたんだ?」

 そもそもの話、この場所を指定したのはギルドだ。
 だけどリュウシン大渓谷は詳しい情報が開示されていない。
 そのせいか、初めて訪れるダンジョンだから迷ってしまった?
 その可能性はあるけれど、Nightが間違えるとは思えない。

「もしかして、地図が違っていたのか?」
「そ、そんなことあるの!?」
「それ以外考え付かないだろ。実際、この場所によく似た地形の可能性もある……よな?」

 Nightは一応確認を取った。
 するとA-スさんは自信満々な顔をする。
 さっきと同じことを堂々と伝えた。

「だからよ、そもそもこんな場所を指定する訳ないだろ?」
「そうか。いや、この地図には……」
「地図? ちょっと貸してみろ……ん、なんだこれ?」

 A―スさんは地図を要求した。
 この地図はNightが代表して持っていた。
 ギルドから受け取ったものだから、間違いない筈なんだけど、顔を歪められる。

「私が見ていた地図と違う?」
「「「ええっ!?」」」

 Nightは地図を取り出した。
 まさかのことを言われてしまい、私達は驚く。
 地図に視線を落としたけど、確かに、なんとなく、違うのかな?
 よく分からないけど、きっと違ったんだ。

「どうなってるの?」
「化かされたんだよ。このダンジョンに立ち入った時にな」

 ここまでのことをされるなんて。
 もう笑っちゃうよね?
 私は「あはは」と笑ってしまう中、Nightは悔しがる。

「腹が立つな。ここまでバカにされるなんてな」
「仕方ないっての。実際、本来のレジャースポットと、この場所は似てるからな。ほれ、船員受け取れ」

 船員クルー呼びは相変らずだ。
 だけど思い返せば、今目の前に居るA-スさんと最初に会ったA-スさんとは口調が違っていた。
 特に違うのは「アンタ達」と「アンタ等」だ。そこを見逃していたらしい。

「た、確かに似ているな」
「本当。でも滝が小さいわね」
「当り前だろ。このリュウシン滝とは比べ物にならないっての」

 A-スさんも笑ってしまった。
 確かに見せて貰った地図に描かれている滝とは規模感が全然違う。
 これはもう完全に一本取られちゃった。そう思うしかなく、私達は呆れてしまった。
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