VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー1:太陽印の歯車

◇152 戦車のサイですか?

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 八月になった。
 学生にとっては最高の休日。
 夏休みに突入し、時間にとんでもなく余裕が貰えた。

 おまけに高校に入ったら義務教育じゃなくなった。
 おかげで課題の山に襲われることもない。
 ましてや美桜高校は、進学校じゃない。だから部活にも入っていない私は、こうしてゲームにのめり込んでいた……訳でも無いんだけどね。

「ってことで、ギルド会館に来てみたんだけど」

 私の足は早速ギルド会館にやって来ていた。
 何せ行く所が無いし、目的がない。
 残念ながら今日はソロで、暇も暇だった。

「ギルドランクを上げたいって思ってたけど……」

 ここに来た目的はいい感じの依頼を受けるため。
 受理してこなせばこなすほど、ギルドランクは上がりやすい。
 
次のランクはC。
 まだまだ遠い感じがする。
 だからここは頑張らないとな気分で、私はギルド会館にやって来たんだけど……

「これはどういうことですか、ミーNaさん?」

 何故かミーNaさんに呼び止められてしまった。
 しかも私の姿を見るや否や、手招きをしていた。
 明らかに何かある。だけど無視も悪い気がして私はノコノコ向かった。

「お待ちしていました、アキラさん」
「待ってた? んですか」

 受付の窓口にやって来ると、何故かそんなことを言われた。
 明らかに怪しい。
碌でもない話しなのは確定で、私は身構える。


「実はとある荒野にモンスターが出現したそうです」
「モンスターですか?」

 そんなの普通だと思うけど。
 しかも荒野なんて、私は少なくとも行ったことが無い。
 
「変なことですか?」
「あまり見かけないモンスターでして」
「はぁ?」

 珍しいモンスターなんて山ほどいると思う。
 だけどそんな提案されるなんて。
 これは私の興味が顔を覗かせる。

「ちなみにどんなモンスターが現れたんですか?」

 私がほんの少し、本当にちょっぴりだけ興味が顔を出した。
 するとミーNaさんの顔色が変わる。
 私はゾクリとしてしまうが、モンスターの名前を呼ばれた。

「タンクライノスと呼ばれるモンスターだそうです」
「タンクライノス?」

 なんだそれ。戦車とサイ? 組み合わせ的に想像しやすい。
 だけどそんなモンスターが現れるなんて、ますますファンタジーじゃない。
 SFに片足を突っ込むと、私はポカンとする。

「このタンクライノスは、Cランク相当ではありますが、Bランクにも近いとされています」
「それじゃあほぼBランクってことですか?」
「そうとも言われていますね」

 つまり強いってことだ。
 勝てるのかな、そんな相手に?
 あれ、なんで私勝つ前提なんだろう。

「まさかとは思うんですけど、討伐とかじゃないですよね?」
「察しがいいですね、まさにそうです」
「無理です」

 即答した私。
 タンクライノスなんて強いに決まっている。
 私は断固として首を縦に振らないでいると、ミーNaさんはもう一声。

「こんな機会滅多にありませんよ?」
「つまり珍しいってことですか?」
「もちろんです。いい経験になると思いますが?」

 どっち? それはどっちを言ってるの?
 人生経験的な意味? それとも経験値的な方?
 訳が分からないでいるも、私は自問自答をする。

「えー、えっ?」

私はよく考えることにした。
 唸り声をつい上げてしまいそうになる。
 それだけは必死に抑え込むと、心の中で唱える。

(タンクライノスの討伐か……)

 きっとフェルノなら飛びつくんだろうな。
 私は遠い目をしてしまった。
 とは言え珍しそうなモンスターの名前で、興味はある。
 興味はあるんだけど……ちょっとね。

「どうですか、アキラさん?」

 それにしても不思議だ。
 どうしてそんな話を私なんかにするんだろう?
 この前もそうだけど、変な話だな。

「でもどうしてそんな話を私にするんですか?」
「アキラさん達なら、きっと調査に向かってくださると思うからです」
「えー」

 なんでそうなるのかな?
 完全に使い勝手にいい駒にされてる。
 ムカつくなと思いつつ、ミーNaさんはこっちを見ている。

「それでどうされますか?」

 ミーNaさんの期待の目。
 気持ち悪いくらいキラキラしている。
 これは流されてはいけない。私は波から外れる。

「うーん、私一人じゃどうにも」
「大丈夫ですよ、皆さんと一緒でしたら」
「ごめんなさい。興味はあるんですけど、もう少し簡単な依頼にします」

 私は笑顔で立ち去る。
 何せ今回の依頼は難しそう。
 ソロだととてもじゃないけど無理だし、みんなにも悪い。
 前回のことがあるから強く言えず、私はミーNaさんの期待? を踏み潰す。

「あっ、待ってください」

 そんな私の背中をミーNaさんは引き留めようとする。
 だけど私は無視も無視。スルーを決め込む。
 このままだとマズい。なんでそう思ったのか分からないけど、余計なことを言った。

「それに、この依頼を無事に達成していただければ、〈《継ぎ接ぎの絆》〉はCランクにあと一歩になりますよ?」

 私はピタッと足を止めた。
 それは旨い話過ぎないかな?
 怪しいと思う私だけど、一旦窓口に戻った。

「それって本当ですか!?」
「はい。本当ですよ」

 この依頼をこなせば、一気にpも稼げる。
 そうすればCランクまでは一直線。
 私は正直悩んでしまった。

「うーん、勝手に引き受けてもいいのかな?」
「ギルドマスターであれば、構わないと思いますよ?」
「うーん、職権乱用な気がするんですけどね」

 完全にギルマスの立場を利用するように迫っている。
 むしろ脅迫にさえ聞こえる。
 私は目を泳がせつつも、逃げられないと悟った。

「分かりました、頑張ってみます」
「本当ですか!? ありがとうございます」
「ありがとうございますって……」

 如何して感謝されるのかは分からない。
 まだ依頼もこなしていないし、上手く行くかも分からない。
 保証が全くできない中、私は渋い顔をした。

「あっ、アキラさん。それともう一つ」
「えっ、まだなにかあるんですか?」

 立ち去ろうとする私を、ミーNaさんは引き留める。
 踵を返すのを止めた私。
 嫌な予感がする。

「はい。あくまでも噂なんですけど」
「う、噂……」

 大体この手の噂は碌なことが無い。
 それは前回で証明済みだ。
 私はげんなりした顔になるも、ミーNaさんは楽しそうで、単に噂を誰かに話したい人になっていた。



「って、ことになったんだけど、いいかな?」
「「よくない!」わ」

 私はギルドホームでみんなに説明した。
 正直勝負にはならないって分かってた。
 案の定、Nightとベルに反論される。

(あはは、こうなっちゃうよねー)

 私は目を泳がせた。
 何せ事前に確認も取らなかった。
 だからこうして詰め寄られてしまうけれど、もう受けちゃったんだから、二人もそれ以上は言い返せなかった。凄く気まずかった。
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