VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー1:太陽印の歯車

◇154 もしかして落とし穴?

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 私達は荒野を歩き回っていた。
 ここまで大体三十分ほど、ほぼ無言。
 おまけに成果が出ていない。タンクライノスの姿がない。

「Night、一体何処に向かってるの?」
「何所でもない」
「はい?」

 まさかの返しだった。
 いつもはあんなに隈なく考える筈のNightが思考を放棄している。
 そんなのNightらしくない。と思ったのは、私だけじゃなかった。

「どういうことよ、Night。いつもみたいに偉そうなこと言わないの?」
「言う訳が無いだろ」
「あっ、最初から戦うことを放棄してるわね」

 もはや口喧嘩の舞台にも上がっていない。
 いくら罵っても調子に乗らない。
 これはダメだ。戦うことを放棄しているというより、戦う意思がない。
 完全にスマートなやり方に切り替えシフトしている。

「調子が狂うわね」
「そんな気負いするな」
「気負いなんてしてないわよ。それで、なに企んでるの?」

 ベルは追及を忘れない。
 するとNightは憶測でものを言った。

「私もタンクライノスに付いての情報は片手程しか集まっていない。なんと言ってもレアなモンスターだからな」

 今回の相手、タンクライノスは非常に好戦的。
 一度視界に捉えた相手は何処までも追い続ける。
 だけど動き自体や本能に忠実な側面。その辺りの内面的な行動については多く情報が集まっていた。

 それでも片手程。
 何しろ目撃例が少ない。
 そのせいか、ネットの広大な海に潜っても、有益な情報はなかなか見つからない。
 それがNightの思考を乱した。

「それじゃあ外見の情報はほとんど無いって訳?」
「そんなこともない。タンクライノス、ある程度の形の想像は付くだろ」

 確かにタンクライノスなんて名前、想像しやすい。
 如何想像しやすいのか。
 簡単だ。戦車でサイなんて組み合わせは二つだけ。

 一つは下が戦車で、上がサイ。
 サイの角に戦車のキャタピラ。
 可愛くは無いけど、カッコいいかも?

 もう一つは最悪のパターン。
 下がサイで、上が戦車。
 強そうだけど何だか気持ち悪い。私は顔色を歪めた。

「戦車でサイ……だよね」
「そうだ。想像できるパターンは二種類が精々、分かってるな?」

 もちろん分かっている。
 だけどどっちのパターンだとしても、私は下が戦車の方がいい。
 頭の中の靄を切り払うと、コクンと首を縦に振る。

「そのどちらにも有効そうな仕掛け……つまりは罠を用意する」
「そんなことできるのー?」
「できるかじゃない。やるんだ」

 凄くカッコいい。
 主人公って言うよりも主人公の先輩ポジションの台詞だ。
 私は感嘆とするが、Nightは目を見開いて声を上げた。

「おっ!」

 目の前が急に開けた。
 空が見える。地面がない。
 一体どういうこと? そう思うけど、Nightは小走りすると、ニヤリと笑みを浮かべる。

「いいものを見つけたぞ」
「いいもの? 低いね」

 私は眼下を覗き込み。
 するとそこまでの高さはない。
 拍子抜けしてしまう私に、Nightは答える。

「これだけの段差があれば使えるな」
「使えるって?」
「もちろん罠にだ」

 私達の目の前には段差があった。
 大体一メートルくらいかな?
 軽く跳び越えられそうで、罠に使えるとか分からない。

「Nightさん、本当にここを使われるのですか?」
「不満か?」
「いえ。ただ、これほどの段差では脅威には……」
「脅威になるかならないかじゃない。脅威にするんだ」

 メチャメチャカッコいい言葉ワードだった。
 確かに思い込ませることが大事。
 ちょっと意味が違うかもしれないけど、催眠術とかそうだ。
 後はマジックとかもそれっぽいかも? とにかく思い込ませることで、効果を発揮する。

「って、意味違うんじゃないかな?」
「お前、催眠術やマジックとは違うぞ」
「なんで分かるの!?」
「むしろどうしてそこまで飛躍させた」

 完全に読み当てられてしまった。
 否、多分Night的には色々と私の仕草を観察したんだ。
 複数の想像を同時に働かせて私の思考を暴いた。
 うわぁ、ちょっと怖いかも。とは、私は言えない。

「って、対比したアキラが怖いわよ」

 ベルにグサリと刺さる言葉を言われた。
 流石に傷付く。私は落ち込んでしまう。
 まあ確かに飛躍はし過ぎたかも。これは反省ものだ。

「さてと、状態も把握した。充分だ」

 Nightはしゃがみ込んで地面を叩く。
 するとボロボロと崩れてしまう。
 かなり脆い。特にこの辺りはそれが顕著だ。

「よし、それじゃあ始めるぞ」
「始める? 一体なにをするの」

 Nightは段差を跳び越える。
 一瞬足がグニャリ掛けていたけど何とか耐える。
 それから私達に振り返ると、疑問に答えてくれた。

「決まっているだろ。それっ、受取れ」
「うわぁ!? ってシャベル?」

 突然渡されたのはシャベルだった。
 全員分行き渡ると、堂々とした口調を取る。

「今からここを掘るぞ」
「ほ、掘るって?」
「一体なにする気よ」

 私とベルはもちろん首を捻る。
 けれどNightは眉間に皺を寄せた。
 「分からないのか?」とか今にも言いそう。

「なにをする気だと? 決まっている、コレは罠だ」
「「罠?」」
「そうだ、深い穴を掘る。それが今回の罠だ」

 あまりにも自然な流れだった。
 この段差を利用して、罠を作るってこと?
 だけどそれって落とし穴じゃ……なんてことを思う前に、Nightはニヤリと笑ってしまった。


「よいしょよいしょ!」
「もっと深くだ」
「はーい」

 フェルノが一生懸命掘っている。
 もちろん私達も頑張っていた。
 だけど一人、Nightに対してイラっとする。

「Nightも手伝ってよ」
「私が手伝って、なんの足しになるんだ?」

 Nightは一切手伝ってくれない。
 ましてやサボっているっていうよりも、グチグチ指示だけしてくる。
 しかも自分が体力が無いことを分かった上でだ。
 なんだろう、正直納得はできない。

「そうだとしても手伝ってよ」
「ふーん、仕方が無いな」

 傾斜を滑り降りるNight。
 羽織るマントに土が付く。
 もちろんそれだけじゃない。フラリと倒れそうになってしまった。

「おっとっと……」
「あっ、Night!?」

 私はNightを支える。
 ただ傾斜を滑り降りただけなのに、こんなにフラつくなんて……。
 体幹が弱いのかな? それとも疲れが溜まっているのかな?
 ここまでの移動でかなり発汗していた。

「大丈夫、Night?」
「ああ、大丈夫だ。さて、手伝うか」

 インベントリからシャベルを取り出した。
 Nightはシャベルを地面に突き刺す。
 すると腕に激痛が走り、険しい顔をした。

「大丈夫、Night? 硬い石でもあったの?」
「いや、無かったが……」

 私は地面を見た。確かに石は埋まっていない。
 つまりただ単に硬い土をショベルが貫いただけ。
 否、弾かれただけだ。

「本当だ、なにも無い」
「はぁ。私の体力と筋力の無さには絶望するしかないな」

 ステータスがマイナスになることもある。
 もしかすると、今のNight……なんて野暮なことは考えない。
 だからここは意識を切り替える。

「あはは、Nightも気落ちしないで頑張ろうね」
「そうだな。私は私ができることをする」
「よーし、みんなもう少しだけ頑張るよ!」
「「「おー!!」」はぁー」」

 私の号令にみんな応えてくれた。
 フェルノと雷斬は黙々と作業を続ける。

 対してNightとベルは溜息を付いた。
 正味意味を考えだしている。

 けれどそんなこと言っていられない。
 ここまで来たんだ。目標まで掘るしかない。
 そう、私達の目標は……深さ十メートルだ。
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