VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー1:太陽印の歯車

◇156 ボンバー……な、岩

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 とりあえず場所はある程度特定した。
 だけどここからが問題だ。
 タンクライノスが見つかっていない。ここからは見つける必要がある。

「よし、ここからは手分けをするぞ」
「手分け?」
「当り前だ。これだけ広大な荒野だ。何処に潜んでいるかは分からない。お互いが五百メートル圏内を監視できるように散開しろ、いいな」

 あまりにも端的な言い方だった。
 ちょっとだけイラっとするけど、これも性格。
 私達は押し黙ると、Nightに訊ねる。

「Night、そんな真似して大丈夫なの?」
「なにがだ?」
「なにがだじゃないよ。危険じゃないの?」

 私はあまりにもバカバカしい程、直球な質問をした。
 するとNightは溜息を付きそうになる。
 けれど途中で遮ると、鋭い目をする。

「そんなもの、常に隣り合わせだ」
「隣り合わせって……」
「この世には絶対の安全は存在しない。それは現実リアル非現実ゲームも同じことだ」

 確かになことを言われた。
 この世界には、否、どんな世界にも安全なんて無い。
 常に命は危険に晒されている。それをみんな忘れているだけだと思い知る。

「確かにそうね。でも五百メートルって」
「お互いを認識できる距離に置く。それでお互いを守り合うんだ。見張るためなんかじゃない」

 最後に補足してくれた。
 だけど認識し合うってことは見張るのと同じだ。
 大変な作業になると私は思うが、こうしている時間も惜しいらしい。

「ほら、とっとと探しに行くぞ」
「おー、なんか盛り上がって来たねー」
「そうですね、頑張りましょうか」

 Nightの号令にフェルノと雷斬だけは真面目に取り組む。
 文句の一つも言わないらしい。
 私とベルはそんな二人を揶揄する。

「二人はどうして乗り気なのかしら?」
「うーん、真面目だから?」
「単純よ」

 確かに単純と言えば単純だ。
 だけどそれは真面目なことの裏返し。
 フェルノと雷斬らしいと割り切り、私とベルも納得する。

「とは言ったものの、全然見つからない……」

 あれから一時間程が経過。
 私達は各々がタンクライノスを探した。
 けれど周囲を見回しても見つからない。
 場所を変えるべきなのでは? と少しだけ思い始める。

「ふぅ、ちょっと疲れちゃった」

 私は探し疲れた。別にサボってる訳じゃない。
 ただただ疲れが蓄積されていた。
 何せあれだけのサイズの落とし穴を掘ったんだ。
 私だってタダの人間。疲れたって普通だ……そんなに疲れてないけど。

「本当、この辺にいるのかな?」

 果たしてタンクライスが居るのだろうか?
 もしかしなくても、かなり移動されている。
 その可能性は極めた高くて、疑いたくないけど、Nightの判断を疑った。

「ダメダメ、そんなこと思ったら」

 だけど私は首を横に振る。
 余計なことを考えたらダメ。
 そんなことで信頼を棒に振るのは無い。

「はぁ。それにしても岩多いね、しかも大きい」

 私は身体を預ける大きな岩達を見つめる。
 この辺りには何故かサイズはバラバラだけど、岩がたくさん並んでいる。

 これも荒野だから? それで妥協するべきなの?
 私はポカンとしてしまう。
 一度距離を取り、ソッと閉じた瞼を開く。

「ん?」

 突然岩に目が付いた。
 ジロッと開眼して睨み付けられる。
 私は一瞬理解できなかったけど、全身から血の気が引く。
 この岩、全部モンスター!? 生きてるってことだ。

「うわぁ!?」

 私は急いで距離を取った。
 後ろに倒れ込むようにして受け身を取る。
 最大限距離を取ると、私は固まってしまった。

「どうしたんだ?」
「な、Night!?」

 私はつい驚いて声を上げてしまった。
 すると異変に気付いたNightがやって来る。
 私は口がプルプル震え、何とか説明する。

「い、今ね、この岩に目が付いて」
「ああ、そうか」

 私は端的に説明した。余計な尾鰭は付けない。
 だけどNightは淡白。
 あっさりと返されてしまい、私は拍子抜けする。

「刺激は与えていないんだろうな?」
「えっ、ちょっと触っただけで……」
「そうか……バカな真似するな。この岩は危険なんだぞ」
「ええっ!?」

 なんで私が怒られたの? 私怒られることしたのかな?
 Nightと岩を交互に視線を飛ばす。
 一体何故と頭の上にハテナが点灯した。

「どういうこと?」
「いいか、この岩の名前はボンバー岩だ」
「ボンバー……なに?」
「ボンバー岩だ」

 全然聞いたことないモンスターだ。
 私はポカンとしたまま。
 首を左右にメトロノームすると、Nightは教えてくれた。

「いいか、ボンバー岩はな。衝撃を与えれば爆発し、周囲一帯を破壊する危険なモンスターだ」
「あれ、その設定何処かで聞いたことがあるんだけど」
「その破壊力は相当なものだ。規模は個体によって様々だが、それだけ被害の拡大もあり得る」
「ねぇ、その設定何処かで聞いたことあるよ?」
「おまけにこの辺りにはボンバー岩がたくさんある。見てみろ、周りにある岩。全部がボンバー岩だ」
「そっか、それは危険だよね。それで、この設定ってさ」

 私はしつこかった。
 とにかく設定に引っかかる。
 まぁ、アイデアって誰かのイメージや先人の知恵が形になる。
 そのせいかな? パクリじゃないけど、オマージュしちゃう。

「お前の言いたいことも分かるぞ。これは超有名なRPGのものだ」
「やっぱり……」

 こんなこと言いたくないけど、自爆するモンスターは山ほどいる。
 どんなゲームにだって大抵ファンタジーなら登場する。
 だけどコレは明らかに爆〇岩だ。
 まあ、こんな設定今の時代何処にでもあると思うけど……うーん、やってるよね?

「まあいいだろ」
「よくはないよね?」

 ・・・無言が広がった。
 空気に溶けてしまいそうで、私達の間に無が生まれる。
 これはしんどい。そう思う前に、Nightは口を開く。

「それより、タンクライノスの手掛かりは見つけたのか?」
「それが見つからなくて……えへへ」

 私はおどけてみせる。
 だけどNightは面白くないらしい。
 真顔になられると、何だか間が怖い。

「えっと、真面目に探しているんだよ?」
「そうだな」

 なんでそんな淡白なの?
 もしかしなくてもNightも見つかってない?
 私は目を回しそうになるが、ここは精神を研ぐ。

「こんなに探しているんだよ?」
「そうだな」

 やっぱり淡白だ。
 白身魚みたいに淡白だ。
 ここはニュアンスを少し変えてみる。

「でもNight、全然見つからないけど?」
「そうだな」
「そうだなって。もしかしたら、もっと遠くに行っちゃったかもしれないよ?」

 これだけ探しても見つからないんだ。
 普通に諦めた方がいいのでは?
 もしくはもっと遠くにと思うけど、Nightの目は真剣だ。

「本当にそう思うのか?」
「うっ……そう言われると」

 私はNightに問われた。
 もちろんそんなこと言われても困る。
 だって何も言えない。そこで意識を切り替える。

「この辺りにいるのかも?」
「切り替えが早いな」

 何となくだけどそんな気がした。
 何せNightがここまで推すんだ。信じるしかない。
 実際、タンクライノスは相当な大きさの筈。
 それなら重量もある筈。じゃないとあんなハッキリ痕跡が残らない。

「だって、途中で痕跡が途絶えるのは、普通に考えておかしい……あっ!」
「そういうことだ」

 Nightの考えを想像して汲み取る。
 頭の中に流れるイメージ。
 まさしくタンクライノスの行動を示している。

 如何して途中でキャタピラの痕跡が途絶えたのか。
 意図的に消した訳でも、モンスターの仕業でもない。
 この地形がそうさせた方に転ぶ。

 何せここは荒野。常に荒れている。
 吹いた土煙が覆い被されば、簡単にではないが消すことはできる。
 おまけにこの辺りにはボンバー岩の生息地。
 ちょっとの衝撃で爆発するのなら、その影響で巻き上がった土煙がキャタピラの痕跡を潰してしまう可能性も高い。

 まさかここまで考えていたなんて。
 だからこそタンクライノスにとっても安全圏。
 Nightの思考の恐ろしさを痛感すると、私は驚愕した。

「分かったならつべこべ言わずに探せ。私も近くにいるからな」

 Nightはそれだけ言い残すと、持ち場に戻った。
 私からそう遠く離れないようにしてくれている。
 一体どれだけの景色が見えているのかな?
 私は詩的に表現すると、段々と怖くなる。

「つべこべ言わずに探せって言われても……無理だよね?」

 ここまでやって無理だったんだ。
 諦める気はないけれど、見つかる気が全然しない。

 何せタンクライノスはどんな形であれここに生息る。
 その証拠はあのキャタピラの跡。
 途中で途切れていたのが運の尽き……なんて、絶対に言わない。

「でもどうしたら」

 ふと溜息を付いてしまう。
 ボンバー岩に手をかざして体重を預ける。
 けれど私くらいじゃビクともしない。もしかして、優しいのかな?
 私はつい笑ってしまうと、顔を上げた。そこに影が映る。

「……ん」

 私は遠目になってしまった。
 視線を飛ばすと、ザッと奥に小さな黒い影がある。
 否、ちゃんとした形を成している。

「なーんか、嫌な予感がするんだけど」

 私はその姿に嫌な予感を覚えた。
 何も無ければいいんだけど。
 まあ、関わらなければ大丈夫かな? そう思った私はソッと視線を外そうとした。
 否、外すことはできず、走行音が近付いていた。
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