VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー1:太陽印の歯車

◇157 タンクライノス

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「うーん、気になる」

 私は目を凝らした。
 流石に視力に影響を与えるスキルは持ってない。
 そのせいか、遠目になってしまうと、黒い影はこちらに気が付いたらしい。

「あれ、なんか来てない?」

 私はゾワリとする。
 これはここに居てはいけないのでは?
 そう思わされると、私はゴクリと唾を飲む。

「うーん、嫌な予感が……あれ?」

 ふと耳を澄ましてみた。
 すると耳障りな雑音が鼓膜を貫く。
 まさしくこの重低音。私は頬が固まる。

「えっ?」

 私はゾッとした。
 全身を駆ける肌寒い感覚。
 鳥肌ものの恐怖がすぐ近くに来ている。
 間違いない、これは走行音だ。

「ま、マズいかも?」

 私の直感が囁き掛ける。
 アレは距離を取るべきだ。
 近付かれたら終わる。そんな気がしてならず、まずは視界に入ったNightに呼び掛ける。

「Night、逃げるよ!」
「どうした、アキラ……」

 私はNightに叫んだ。
 急いで走り出して近くに寄ろうとする。
 けれどNightの顔色は悪く、固まっている。

「急いでNight。私じゃNightを背負ったまま走れない」
「分かっている。分かっているが、お前ソレは……」

 分かってる。言わなくても気が付いてる。
 走行音が近くに聞こえている。
 つまりさっき見えた黒い影、それが私達を追っている。

「来てるよ、Night!」
「分かってるならこっち来るな」
「こっちしかないでしょ!」

 後ろを振り返っている余裕はない。
 すぐ近くに走行音が聞こえ、キャタピラが鳴り響く。
 荒野の地面を踏み潰すと、チラリ背後が見えた。

「ラガァーラガァーラガァーラガァー」

 巨大な黒い塊が現れた。
 上半分がサイ。下半分は戦車。
 あまりにも奇怪な生命体で、私は言葉を失う。

「うわぁ、な、なにこれ!?」

 だけど声をとにかく出したかった。
 だからお腹の底も底から吐き出す。
 もう驚くしかない。怖いという感覚が襲う。

「タンクライノスだ。来るぞ!」

 Nightは教えてくれた。
 これがタンクライノス。見れば分かる。
 だけどそんな余裕はない。私はゾクリとしてしまうが、何が来るのか分からなかった。

「ラーガァン!」
「は、速い!?」

 移動系のスキルは持ってない。
 だから私の足は等速のまま。
 一定の速度で走り続けると、タンクライノスだけが速くなる。

「くっ、こうなったら!」

 私は体を起こした。
 跳ねる様に足を動かすと、急いでNightの元へ向かう。
 こんな時、何をするべきなのか。
 もちろん、何とか出来る人の力を借りるんだ。

「お、おい、こっち来るな!」
「Night、助けてー!」

 私はNightの所までやって来た。
 少しだけ息が荒くなる。
 まさかこんなことになるなんて。油断したつもりは無いんだけどね。

「おい、こっち来るなって言っただろ!」
「言ったけど、なんとかしてよ」
「私を青い猫型ロボットと一緒にするな!」

 超国民的漫画・アニメを口にした。
 確かに例えとしては合ってる気がする。
 だけどこの顔。正直困っている。

「き、来てるよ!」
「クソッ。こうなれば……」

 タンクライノスはキャタピラを使って優雅に襲い掛かる。
 鋭いサイの角を突き出している。
 高速移動しながら突進攻撃を繰り出してくる。

 流石に当たればひとたまりもない。
 何とかしないとダメだと、Nightも腹を括った。

「なにかいい方法があるんだね。それじゃあ早速……あれ!?」

 私が振り返ると、Nightの姿がない。
 代わりに凄く近い所にNightが居た。
 走って逃げてる。だけどもの凄く遅い。

「ま、待ってよ、Night!」
「はぁはぁはぁはぁ……」

 Nightは息を荒くしている。
 疲れ切った様子で瞼が重い。
 そのせいか走りも軸がブレていて、私でも簡単に追い付いた。

「Night、逃げるなんて酷いよ!」
「これが最善だ」
「これが最善って……それでどうするの?」

 私はNightに訊ねる。
 今こそNightの知恵の出番。
 そう思ったのも束の間、厳しい見解を見せた。

「正直な話、私一人だと手は無い」
「手が無いってどういうこと!?」
「そのままだ。私は……はぁはぁはぁはぁ」

 Nightがドンドン後退する。
 全身から汗が噴き出ている。
 相当疲労しているのか、Nightは苦しそうだ。

「まさか、体力切れ?」

 Nightはとにかく体力がない。
 運動神経が悪いとかではなく、単純に体力が足りない。
 そのせいか、普通にすぐバテる。
 これだけ走れば相当で、もはや限界ギリギリだ。

「はぁはぁはぁはぁ……ああっ、あっ!」
「ダメだよ、ここで倒れたら」
「アキラ?」

 私は今にも倒れそうな、虚ろな目をするNightの手を掴んだ。
 流石に置いてはいけない。
 私は自分の体を使って、前傾姿勢になってでも、一緒に走る。
 きっとフェルノや雷斬、多分だけどベルもそうする。多分だけど。

「ああ、でもこれじゃあ……」
「状況は変わらないな」
「そんなこと言ってないで、Nightは考えてよ!」

 結局事態は好転していない。
 ましてやタンクライスは襲って来る。
 逃げ切れるかな? いや、無理そうだ。

「どうしよう。どうしよう、どうしよう!」
「どうしようもなにも無いだろ!」
「なにも無いって……でもどうしたら」
「お前のスキルじゃ足りないか」

 今私が使えるスキルは限られている。
 普通に考えて【適応力】は意味ない。
 ましてや【キメラハント】が奪って来たスキルも、【半液状化】に【甲蟲】・【灰爪】・【熊手】に【蠍尾】、【幽体化】なんて皆無だ。
 頼みの綱、もはや奥の手の【ユニゾンハート】も如何使えばいいか見当も付かない。
 これは万事休すだよ。

「私も体力的に厳しいからな」

 一方のNightは【ライフ・オブ・メイク】が使えない。
 使えなくはないけれど、体力が持たない。
 今のままだとまともに使えずで、できることが無かった。

「それじゃあどうするの? このままやられる?」
「そんな訳にはいくか」

 諦める様子はまるでない。
 タダでやられる訳にはいかない。
 頭をフル回転させて考えると、Nightは何か思い付く。

「やるしかないか」

 けれど何か思い付いている。だけど顔色が悪く、嫌悪している。
 本当はやりたくないが、やるしかない。
 渋々な表情を浮かべ、唇を噛む。

「クソッ、かくなる上は」
「まだなにかあるの?」

 正直に気に転じた時点で手遅れだった。
 だけどまだ勝機が残っているらしい。
 ここからじゃまともに落とし穴まで引っ張れない。
 そう悟ると、一瞬で作戦を切り替える。

「こっちだ!」
「こっちって、危ないんじゃなかったの!?」

 Nightは方向転換した。
 私も頑張らずに付いて行く。
 するとタンクライノスも曲がり難そうにはしつつも、方向転換を開始。
 私達を見逃してくれない。

「うわぁ、まだ追って来た!」
「仕方ないだろ。ほら、走れ」

 タンクライノスは何処までも追い掛けてくる気満々だ。
 私とNightはずっと追い掛けられる。
 だけどなんで方向転換したんだろう?

「ねぇNight、信じたくはないんだけど」
「想像通りだ」
「想像通りって?」

 いや、この方向は想像できる。
 私は嫌な予感がした。スキルとか関係無しにだ。
 もちろんタンクライノスを倒せるかもだけど、そんな危険なこと、あの岩々を着火する何てバカ気ていて笑えなかった。
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