VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー4:黒鉄の巨兵と五人の探索者

◇187 地下の黒鉄

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 私達は螺旋階段を下り続けた。
 けれど全然底が見えてこない。
 真っ暗闇の中を、ランタン片手に進んで行くと、深淵がより一層強まる。

 私達を誘っている。
 真っ暗闇が巨大な手の様に見える。
 損な想像力を武器にすると、フェルノが声を上げた。

「あっ、見えたよ!」

 何が見えたんだろう。
 私達は螺旋階段の柵から、向こう側を覗く。
 すると真っ暗だけど、ようやく地面が見えた。

「本当だ。地面だね」
「地面はあるだろ」
「当り前だ。そんなのあるだろ」

 Nightは真っ直ぐに言い切った。
 確かに地面はあると思うけど、それを言ったらお終い。
 私達はげんなり顔になる中、フェルノと雷斬は違った。

「あはは、やっとボス戦だー!」
「気を引き締めましょうね。皆さん」

 私とベルはこう思った。「二人共真面目」。
 凄くいいことで、私達も気を引き締める。
 この先にはボスモンスターが待っていて、潜んでいる。
 油断したら、下りた瞬間に負けかもしれない。

「まさか、急襲なんてして来ないよね?」

 私は物騒なことを言った。
 するとNightは続けた。

「無い方がいいだろうな。まぁ、分からないが」

 結局分からないんだよね。このゲームのモンスターに搭載されたAIは基本的に賢い。
 予定調和なんか最初から壊してくるから、何が起きても不思議じゃない。
 人間がするような厭らしい戦法も平気で使って来る。
 だから怖くて、私達は螺旋階段を下り、地面に辿り着いても、警戒を怠れなかった。

「……」
「……なにも……」
「起きないわね」

 雷斬とベルは息を合わせた。
 五人の中でも、特に“武”に精通している。
 だからこそ、精神を研ぎ澄まし、空気を介して、状況をいち早く察した。

「とりあえず安全そうね」
「そうですね。皆さん、大丈夫そうですよ」
「よかったぁー」

 ホッと一息を付いた。
 とりあえず、モンスターに速攻で襲われるようなことは無いらしい。
 安心したのも束の間。Nightは警戒を怠らない。

「とりあえず、なにがあるのか探すぞ」
「探すって言われても、なにを探すの?」
「それをこれから探すんだ」

 ここにやって来たのは、何でだろう? 正直よく分かっていない。
 だけど黒鉄の巨兵が待っているに違いない。
 それを探す? ことになったけど、何で探すのかは分からなかった。

「ねぇ、Night。バカみたいなこと言うけど、黒鉄の巨兵って、探さないといけないのかな?」
「無いな」
「無いんだ。えっ、それじゃあいいの?」

 正直、私達がやっていることは自己満足だった。
 三つの試練は既に突破していて、別日でも良いのは良い。
 けれど今更引き返す選択肢はない。
 だって、ここまで頑張ったんだ。どうせなら最後までやりたい。

「けれど……」
「最後までやりたいよね。それじゃあみんなで探そっか」

 私は号令を掛けると、みんな乗ってくれた。
 今日はまだまだ動ける。体力がある。
 せっかく深夜にやって来たんだ。これ以上の機会は無いかもしれない。

「本当、単純だな。人間は」

 Nightはポツリと呟いた。
 もちろん自分もその内の一人で、単純だからこそ、やることは決まっている。
 目的を決めて動く。今はそれをするのが一番楽しかった。


「とは言っても……」

 なにを探したらいいのかは分からない。
 もちろん、黒鉄の巨兵を探すのは分かってる。
 だけど何処に何があるのか、真っ暗だから見えなかった。

「夜でも明るく見える能力……奪っておけばよかった」

 そんなこと言っても、持ってないものは持ってない。
 だから仕方が無いので、私達はとにかく歩き回る。
 人数分のランタンは流石のNightでも用意できていない。
 だからこそ、私達は若干の謎の明かりを頼りに、何とか歩き回った。

「うーん、見つからない」

 全然見つからなかった。
 歩き回ったはいいものの、広過ぎて見当たらない。
 私は頭を掻くと、困ってしまった。

「これだけ暗かったら、なにも見つからないよね?」

 正直悪態を付くのも分かって欲しい。
 暗すぎて見えないんだ。
 目を擦ると、より一層暗闇に変わる。

「なにかなかったかな? ……あっ!」

 流石に暗すぎてダメだった。
 これ以上は目が疲れる。
 私はインベントリを開いた。

「ソウラさんから買った……よし。それっ!」

 私はインベントリから箱を取り出した。
 コレはDeep Skyのソウラさんから買ったものだ。
 中には黄緑色をした小さなスポンジボールが幾つも入っている。
 おまけに蛍光色になっていて、暗闇でも光った。

「コレを落として……それっ!」

 私はスポンジボールを投げた。
 すると蓄光効果で、少しだけ明るくなる。
 もちろんここはゲーム。現実の何倍も……って言うより、普通に明るかった。

「明るい! これならなにか見つかるかも?」

 私はスポンジボールを撒きながら進んだ。
 暗闇もこれで少しは進める筈だ。
 私は意気揚々とは行かないけれど、慎重に足を稼いだ。
 すると何だか嫌な感じがしたのが、空気で伝わる。

「……うっ!」

 私は頭の中で意識を切り替えた。
 これは警戒しないとマズい。
 そう思ってゆっくり進むと、目の色を変える。
 目の前には暗がり。だけど影があった。

「暗闇の中に影? ってことは……」

 陰影がハッキリとしている。つまり何かあるってことだ。
 私は下手に攻撃されないように、まずはスポンジボールを投げる。
 灯りを確保すると、ジッと見つめた。

「なにもして来ない? それじゃあなに!?」

 威嚇してみたけど何もして来なかった。
 私は首を捻ると、ゆっくり近付く。
 地下のかなり奥。そこに置いてあったのは、黒い鉄の塊だった。

「うわぁぁぁぁぁ!? なに、コレ。大きい」

 悲鳴みたいな声を上げた。
 それだけ大きくて、私は度肝を抜かれる。
 つい腰を抜かしそうになるけれど、ソッと体勢を立て直す。

「しかも固い……コレって鉄?」

 私は手のひらでソッと撫でた。
 冷たい。後質感がいい。きっとこれは鉄だ。
 紛れもなく、目の前のソレは、鉄の塊だ。

「もしかして、黒鉄の巨兵の正体って、鉄の塊ってこと!?」

 確かに味方によっては巨兵にも見える。
 もしかして、置物のゴーレム。つまりは鉄像のこと?
 私は勝手に解釈すると、ポカンとしてしまった。

「な、なんだ。えっ、動くとか?」

 コツンコツンと恐れながら叩いてみた。
 けれど動く様子は何処にもない。
 もしかしたら偽物ダミーかも? そう思って、よく観察するけれど、私にはサッパリだった。

「うーん。とにかく、みんなを呼んで来よう」

 とりあえず私は、みんなを呼びに行った。
 ここで一人考えていても分からないからだ。
 どのみちみんなでパーティーを組んで戦う。私はそう思うと、踵を返してみんなを探しに向かった。

 その瞬間、背中をゾクリとする感触があった。
 矢で射抜かれたように冷たくて、真っ赤な光が撃ち抜いた。
 様な気がしたけれど、きっと気のせい……とは言い切れないのだった。
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