VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー4:黒鉄の巨兵と五人の探索者

◇188 赤い単眼、眩しくて

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「コレが……」
「鉄の塊ね」

 私はみんなを集めて、黒鉄の塊の前に戻って来た。
 Nightはポツリと呟くと、ベルが本音を吐露する。
 確かにそれは鉄の塊。それ以上でもそれ以下でも無かった。

「うぉぉぉぉぉ! カッコいい、メッチャカッコいいー!」

 けれど一人だけ喜び方が違った。
 フェルノだけは大袈裟に飛び跳ねると、両腕を高く振り上げた。

「フェルノ、こういうの好きそうだよね」
「うんうん、大好き。やっぱこういうの熱いよねー!」

 フェルノと私は親友だ。
 だからフェルノがロボットもののアニメが好き。プラモデルが好き。
 目の前のそれは鉄の塊かもしれないけど、今にも変形しそうな迫力があった。

「で、コレがなにになるのよ?」
「もしかして、黒鉄の巨兵なんじゃないかな?」

 私はベルに問われたから、思っていたことを口にする。
 するとベルは「コレが?」と首を傾げた。
 確かに動かないとただの像だ。鉄の塊だ。
 ボス的な風格は……まぁ、微塵も感じられなかった。

「全然動く気配無いわよ?」
「そうだな。動く気配は無さそうか」

 確かにここまででピクリとも動いていない。
 つまり、目の前のそれは、単なる置物だ。
 私は何も言い返せなくなると、フェルノは楽しんでいる。

「なに言ってるのさー、カッコいいじゃんかー」
「それとこれとは、別の話でしょ?」

 フェルノは楽しそうだけど、ベルの言い分も最もだった。
 確かにカッコいい? 気はするけれど、それだけ。
 結局は戦うこともなく、Nightは余裕で近付いた。

「この像、どんな構造だ?」
「気になるの、雷斬?」
「当り前だ。構造を調べるのは大事だろ」

 Nightはゆっくり近付いた。
 動かない像をペタペタ触っている。
 危ないと思うけど、Nightは気にせずに調べ物を続けた。
 情報は命に直結する。それを体現していた。

「なるほど、面白いな」

 Nightは楽しそうだった。
 一体何が面白いんだろう?
 傍から見ていても分からないから、合いの手を入れた。

「なにが面白いの?」
「この辺りをよく見ろ」

 私はNightに呼ばれた。
 ランタンを掲げ、指定した場所に視線を落とす。
 すると大量の歯車が収まっていた。少しだけ空間を開けると、何だか回りそうだ。

「なんか一杯詰まってるね」
「ギアが噛んである。どうやら単一では動かせないらしい」

 難しいことだからサッパリ分からなかった。
 私達はお手上げで、フェルノだけが興奮する。
 多分だけど、理解してない。

「他にも見てみるか」

 Nightは見える部分に視線を落とした。
 私達には分からないけれど、一人で納得している。
 黒鉄の巨兵を隅々まで観察すると、Nightは唐突に言った。

「とは言え、なにも起きないか」
「そうだね」

 色々調べてはみたけれど、何も起きなかった。
 起動するようなスイッチも無ければ、レバーもない。
 動力らしきものも見当たらず、Nightは考えに考えた。

「はぁ。一旦出直すか」
「出直すって、ここまで来て!?」

 Nightも諦めてしまった。これ以上できることは無いんだ。
 早速踵を返して帰ろうとすると、ベルはあんぐり口を開けた。

「ここまで来てもなにも無いだろ。これ以上、できることはない」
「まぁ、そうだよね」

 言いたくないけど、確かにできることは無かった。
 私達はここまで来たにもかかわらず、一旦出直すことになる。
 落胆するベルの背中を雷斬が撫でる中、私は黒鉄の巨兵を見つめた。

「本当に、動かないのかな?」

 私は像が今にも動きそうだなと思った。
 それもその筈、黒鉄の巨兵のことが、石碑には書かれていた。
 アレが何も意味していな訳がない。ジッと視線を配るも、結局変化はなかった。

「ほら、帰るぞアキラ」
「待って。すぐ行くね」

 私はNightに呼ばれた。
 踵を返して振り返ると、みんなの背中を追い掛ける。
 その時だった。ガガガと嫌な鈍い音を聞いた。

「ん?」

 私は立ち止まって動かない筈の像を見た。
 やっぱり動いていない。微動だにしない。

「気のせいかな?」
「おい、アキラ。なにかあったのか?」

 私が遅かったせいで、みんな引き返してきた。
 だけど私は気になってしまう。多分気のせいだと思うけど、像から音がした。様な気がした。

「いや、今、この像が動いたような気がして……」
「像が動いた? 本当か」
「そんなに食い気味に言わないでよ。私だって、なんとも……」

 私だっても分からなかった。
 けれど何だか引っ掛かる。
 視線を飛ばしてしまうと、沈黙が流れ、突然像が軋んだ。

「やっぱり……」

 私は目を伏せた。ただの気のせいだった。
 トボトボなって肩を落とすと、その時だった。
 再びガガガと異様な音を立て、額越しに世界に赤が侵略を開始する。

「えっ!?」

 突然ピカンと光った。真っ赤な世界が暗闇を消す。
 地下空間を一瞬にして染め上げると、嫌な音が鈍く響く。

ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

 けたたましい轟音が聞こえた。
 私達は素早く気が付くと、突然真っ赤な光が、私達を襲った。

「うわぁ、眩しい!?」
「なによ、急に、眩しいわね」

 赤い光の原因は、目の前の巨兵。
 置物になっていた黒鉄の巨兵が突然動き出したから、赤い光が放たれた。

「まさか、今の轟音って?」
「きっと動いたんだよー。あはは、面白くなって来たー」
「なにがだ。全然面白くないだろ」

 フェルノだけが喜んでいた。
 だけど私達は全然面白くもないし、嬉しくもない。
 寧ろ轟音によって、本格的に黒鉄の巨兵が動き出す合図になっていた。
 何だか嫌な予感がする。これは私の勘だった。

「まさか、動くの?」
「当り前よ。分かってるわよね?」
「皆さん、気を引き締めてくださいね」

 ベルの言葉を雷斬が繋いだ。
 各々が武器を手にすると、黒鉄の巨兵の動きに合わせる。
 一体どんな攻撃をしてくるのか。
 突然立ち上がり、軋む轟音を立てる中、鋭い拳を繰り出した。

「うっ!?」

 雷斬は重力に捧げられ、全身に鋭い拳が走った。
 衝撃が伝わり、何とか刀で受け止めようとするけれど、上手く行かない。
 そのまま体を吹き飛ばされると、後ろに吹き飛ばされていた。

「「「えっ?」」」

 一瞬何が起きたのか分からなかった。
 私達は放心状態になり、時間に取り残された。
 ただ一瞬の時が、無限に加速した。全てを理解している。けれどできない。
 それだけの破壊力が、私達の脳裏を過ぎ去った。

 まさか雷斬がやられるなんて。
 あんなの喰らったら勝てる訳がない。
 私達の顔から血の気が引くも、背後から雷斬の息遣いが聞こえた。

「くっ……あっ、はぁはぁはぁはぁ、重たいですね」
「「「雷斬」さん!?」」

 雷斬はHPが半分以上削られていた。
 相当な痛みとダメージが走っている筈。
 それでも何とか耐えて見せると、あまりの凄さに“さん”付けしちゃった。

「大丈夫、雷斬!?」

 私は絶対に大丈夫じゃないけど心配して声を掛ける。
 刀を杖のように地面に突き立てた雷斬は顔を上げた。
 疲れているけれど、何とか無事を伝える。

「はい。ですが、皆さん気を付けてください。この像は強いですよ」

 それは痛い程今分かった。
 油断なんて絶対にしちゃダメだ。
 私達は気を引き締めるも、赤い単眼はギラギラと、私達を見つめていた。
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