VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー4:黒鉄の巨兵と五人の探索者

◇189 VS黒鉄の巨兵

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「眩しぃ……」
「なんて言ってる場合じゃないぞ!」

 黒鉄の巨兵は突然動き出した。
 何が引き金トリガーになったのかは分からない。
 それでも確かに息を吹き返すと、鋭い拳を放ち、先制パンチを繰り出した。

「雷斬、行けるわよね?」
「はい。なんとかですが」

 HPを大きく失った雷斬。回復ポーションをゴクリと飲んで、失ったHPを回復する。
 けれど体が痺れているのか、動きが鈍い。
 刀を握る手に力が入っていない様に見えた。

「コレがキツいんだ」

 このゲーム、CUでは、HPの管理よりも体と精神の管理が大切だって、Nightが言っていた。
 HPが減ることよりも、ダメージを受けて、心身に影響を与える方がキツい。
 色んな意味合いで不安になると、身が竦んでしまいそうになる。

「いやいや、大丈夫。なんとかなる!」

 私は瞬間的に意識を切り替えた。
 今までも戦って来たんだ。
 私は忘れないように思い出すと、珍しく一番最初に動いた。

「【キメラハント】+【甲蟲】!」

 私は勢いよく飛び出した。
 まずはあの硬い装甲を破壊するのが先決。
 だと思ったから、私は拳を振りかざすも……痛い、痛過ぎる。

「い、たい!?」

 涙目になってしまった。当然のことだけど、黒鉄の巨兵の装甲は“黒鉄”。
 それが何かはもちろん知らない。だけど、鉄なのは確実。
 腕を伝った痛みが全神経を駆け上ると、私は地面に倒れた。

「い、痛い……硬いよ」
「大丈夫か、アキラ?」
「大丈夫だけど、大丈夫じゃないよ……でも、もう痛みは覚えたかな」

 あんなの二度度ごめんだ。
 私は仕方が無いので、短剣を抜いた。
 ここまで私を支えてくれている初期武器。今こそ使う時だ。

「そりゃぁ!」

 カキン!

 まあそうなるよね、って音が聞こえた。
 軽い音を上げると、短剣では無理だと分かる。
 つまり私のできることは無いので、後は他の人に任せる。

「ごめん。やっぱり私は……」
「分かってるわよ。そんなの!」

 私は申し訳なかった。
 みんなに謝るけれど、ベルは一蹴した。
 シュパン! と空気を切る音共に、矢が放たれると、黒鉄の巨兵を襲う。

「チッ。矢じゃ足りないのね」

 悪態に舌打ち。ベルは悔しくはないが、ダメだったと痛感した。
 所詮は木の矢だ。強度には限界がある。
 鏃は鉄製とは言え、相手も鉄の塊。通用しない。地面に落ちた矢を渋々回収した。

「それなら数を撃てば……」
「待って待って、ベル。今度は私だよー」

 弓を何本も番えたベル。
 一気に三本射て見せようとするが、後ろからフェルノが飛び出す。
 燃え上がる様な竜の鎧に身を纏うと、自分の番と飛び出す。

「【吸炎竜化】。せーのっ!」

 フェルノは竜の拳で黒鉄の巨兵を殴り付ける。
 すると微かに仰け反ったように見えるけど、それだけに留まる。
 硬い装甲に少しへこみができたような気がするけど、フェルノはまだまだ止まらない。

「それなら連続攻撃で、どうだー!」

 連続でパンチやキックを繰り出した。
 目にも止まらぬ速さ……じゃないけど、とにかく力強い。
 一発一発がとんでもない破壊力を秘め、黒鉄の巨兵を圧倒……はできない。

「うぇーん、全然ダメだ―」

 泣きべそを掻くフェルノ。
 いい線言ってると思ったけど、まだまだ足りない。
 装甲に傷はないけれど、凹ませることに成功し、それでもそれ止まり。
 ダメージもほとんどなく、ガガガ、ギギギ、と歯車が回る音がするだけ。
 地面に着したフェルノはムッとした顔をする。

「コイツ強い! でも燃える」

 それでも楽しそうなフェルノ。
 私達は乾いた笑いを浮かべる。
 そんな中、背中に殺気が落ちた。

「私が切ります。皆さん、避けてください!」

 雷斬はそう言うと、刀を抜いていた。
 おまけにスキルも発動している。
 私達は正面の道を開けた。

「来てください、【雷鳴】。雷流剣術—氷柱針!」

 雷斬は高く跳び上がった。
 全身をビリビリと走る電気で覆っている。
 身体能力を一時的に極限以上に高めると、今度は刀を振りかざす。
 今回は突きのようで、まるで氷柱のように鋭く鋭利だった。

「はっ!」

 黒鉄の巨兵の胸に刀が触れる。
 ギシギシと軋んだ音と、熱のニオイを上げる。
 アニメみたいなカッコいい演出が施されるも、雷斬が力負けした。

「クッ、ダメですか」

 雷斬は真っ向勝負で負けた。
 軽く地面に突き返されると、受け身を取りダメージを減らす。
 それが限界で、雷斬でも傷を付けるのが精一杯だった。
 いや、それが凄いんだけどね。私は全然だったから。

「惜しいわね。後少しなのに」
「流石に硬いですね」
「硬さか……つまり、ただの攻撃は通じないか」

 冷静になって嫌な分析をするNight。
 しかし物は試しとばかりに、ベルトの拳銃に手を掛けた。

「つまりは……」

 Nightもお得意の拳銃を取り出す。
 今日は自動拳銃《オートピストル》みたいで、パンと引き金を引いて薬莢を弾く。
 放たれた弾丸は黒鉄の巨兵に当たったけれど、当たっただけでビクともしない。

「ぜ、全然効いてない?」
「嘘でしょ?」
「いや、嘘じゃないな。クッ、地獄だな」

 そう簡単に地獄って言って欲しくない。
 だけど、コレだと完全に地獄だ。
 黒鉄の巨兵に何度も何度も攻撃を繰り出した。
 だけどまともなダメージにはなっていなくて、硬い装甲に阻まれて、攻撃が通らなかった。

「でも、攻撃が効かないんじゃ……」
「あはは、無理だよねー」

 無理とも簡単に言いたくなかった。
 だけど今のままだと無理だ。
 私達の攻撃なんて、黒鉄の巨兵のガガガって音だけで掻き消される。

「こんなの一体どうやって倒すの!」

 あまりにも強過ぎる黒鉄の巨兵。
 もう戦いにさえなっていない気がする。
 けれど容易に逃げられる訳もなくて、私達は苦戦を強いられた。

「どうするもなにもだろ」
「そうね。とにかく、攻撃の手を休めるわけにはいかないわ」

 Nightとベルはそう言った。
 だけど言う通りだと思う。
 私達には攻撃する以外の選択肢がない中、一つだけ言えることがある。

「全然攻撃して来ないよね?」

 ここまで、黒鉄の巨兵は一切攻撃を仕掛けて来ない。
 仕掛けてはいるけれど、最初に雷斬をぶん殴ってから、まともな鋭いパンチを繰り出していない。
 完全に舐められている。それは分かるけれど、如何して攻撃して来ないのか、全然分からなかった。

「そうね。なんでかしら?」
「あはは、きっと私達の攻撃を浴びて、動けないんだよー」
「えっ、ってことは?」

 その予感は当たっていた。
 私達が攻撃の手を休めた瞬間、黒鉄の巨兵は単眼を爛々と光らせる。
 まるで、「ここからはこっちの番」と言いたそうで、黒鉄の巨兵は拳を振り上げた。
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