VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー4:黒鉄の巨兵と五人の探索者

◇196 崩壊する地下空間

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「なんだろう、この気持ちよくない終わり方……」

 私は正直な感想を吐露した。
 ここまで頑張ったのに、最後はフェルノの独壇場だった。
 結局、何やったんだろう? って気持ちになる。

「仕方が無いだろう」
「仕方が無いって……」
「勝ったんだ。それで“よし”としろ」

 Nightはもう諦めていた。
 勝ったことだけを考えて、過程は捨てている。
 あんなにアッサリ終わるとは思っていなかったみたいで、何故か歯切れが悪い。

「イェーイ、イェーイ、勝ったぞー」
「ほら、アレだけ喜んでいる奴の前で、暗い顔をするのか?」
「できないよね」

 私は即答した。何せ、当の本人が喜んでいる。
 フェルノは腕を振り上げ、一人でバンザイをしていた。
 それだけで、何も言えなかった。

「フェルノ、喜び過ぎよ」
「だって嬉しいじゃんかー。ようやく活躍したんだよー」
「ようやくではなく、フェルノさんはずっと活躍していましたよ」
「ありがとー、雷斬。でさ、これからどうするの?」

 ベルと雷斬は優しかった。
 フェルノの活躍を讃えている。
 多分だけど、フェルノは変なことを言っても怒らない。
 全部楽しくて笑って許してくれる筈だ。

「そうだな。とりあえず全員ドロップアイテムを確認しろ」

 何もすることが無い訳ない。
 とりあえずステータスとドロップアイテムを確認する。

「えっと……おおっ!?」

——レベルアップ! “アキラ”のレベルが13になりました——
——ドロップアイテム獲得! 黒鉄の鉄くずを獲得しました——

「レベルが上がってる。後、変なアイテムも?」
「手に入っているな。これは、“黒鉄”?」

 嬉しいことにレベルが上がっていた。後、使い道のよく分からないアイテムも手に入った。
 Nightやフェルノも同じような顔をしている。
 ポツリと呟いたのは、やっぱり気になる“黒鉄”の二文字。目の前の巨兵を倒したから得られた限定アイテム? かな。

「もしかすると、この巨兵の素材でしょうか?」
「そうみたいね。今回は、素材が目の前にドロップしないのね」

 雷斬も“黒鉄”系の素材が落ちたらしい。
 後、ベルの言葉からも分かるけど、今回はゲームの中でも更にデータとしてアイテムがドロップした。ゲーム世界のリアルには、直接アイテムがドロップしていない。
 違いが全然サッパリ分からなかった。

「そうらしいな。とは言え、この反応……」

 Nightは全員の顔色を窺った。
 考えなくても分かるけど、微妙な反応だ。
 多分、みんな同じ系統の素材が落ちたんだ。

「コレ、なにに使うの?」
「さぁね~」
「だよね。分からないよね……」

 フェルノに訊いても分からないのは知ってた。
 だけど知ってそうなNightも黙ってる。
 きっと分からないんだろうな。ってことは、不用品? 私はそう思った。

「仕方が無い。一旦忘れるぞ」
「忘れるって……ええ?」
「他になにかないか探すぞ。きっとなにか……ん?」

 Nightは黒鉄の巨兵に近付く。
 もしかすると、私達が見逃がしただけで、何かあるかもしれない。
 そう期待したけれど、何故か顔を突っ込んだNightは止まった。
 嫌な音が聞こえたみたいで、私は「ん?」となった。

「どうしたの、Night?」
「いや、今のは……気のせいじゃないな。全員逃げるぞ」

 Nightの行動は早かった。とんでもなく迅速だった。
 もはや私達が判断するよりも前の段階だ。
 私は顔色を歪めると、Nightは急いで黒鉄の巨兵から離れた。

「に、逃げる?」
「そうだ。急いで逃げないとマズいぞ」

 Nightがそう言った瞬間、急に地面が揺れ始めた。
 ガタガタガタガタと凄まじい振動が伝わる。
 立っているのがやっとの状態で、壁や天井の土が落ち始めた。

「う、うわぁ、な、なにっ!?」
「恐らくは黒鉄の巨兵を倒した影響だ。地盤が緩んで、衝撃が振動に変ったんだろうな」

 そんな漫画みたいな展開有りなの?
 私はそう思ったけど、事実は事実。
 とにかく揺れが酷くて、急いで逃げないと生き埋め間違い無しだ。

「ど、どうしよう、Night!?」
「どうするもないだろ。全員走れ、急いで地下から脱出するぞ」

 焦った私はNightに訊ねた。流石に心はまだ冷静な経験を積んでいない。
 そんな中、Nightの指示はいつもよりも厳しい。
 無茶を承知で、生き残るための最善策を考えた。

「こんなに揺れてるのに? 動いた方が危険だよ」
「動かないと死ぬぞ」
「ううっ……みんな、行ける?」

 絶対にこんな揺れで動かない方がいい。
 だけど動かないと死ぬのも事実。
 一応みんなに確認を取ると、全員大丈夫そう。寧ろ行けそうだ。

「行くしかないんでしょ」
「大丈夫ですよ」
「よっしゃ、行くぞー。おー!」

 みんな異様にノリノリで、余裕そうだった。
 特にフェルノはテンションがおかしい。
 相変わらず元気一杯で、怪我したことも忘れていた。

「あ、あはは。アドレナリンが凄いんだね。でもそうだね、行くよみんな!」

 考えたって仕方が無い。生きて帰るためには逃げるしかない。
 いくら危険なことでも乗り越えられる。
 だって、黒鉄の巨兵を倒したんだ。そんな私達が超えられない訳ない……もんね?

「まずは螺旋階段だ。そこ意外に、地上に出るための道筋ルートはない」

 そう言うNightは最後尾を走っていた。
 もう背中が丸くなっていて辛そう。
 それでも声を張り上げ、何とか付いて来ると、目の前に黒い物を捉えた。

「皆さん、螺旋階段です!」

 雷斬が叫んだ。
 目の前にはここまで下りてくるために使った螺旋階段が見える。
 ようやく辿り着いた。私達は階段の板に足を掛ける。

「急げ、階段を駆け上がれ!」
「そんなこと言ってるNightが一番遅いんだよ!」

 Nightは私達に指示を出した。
 だけど一番最後尾で、一番遅かった。

「うっ、仕方が無いだろ。私は体力が……うわぁ!?」

 Nightは自分の体力の無さを自覚していた。
 喋っている余裕もないのか、捲し立てることもできない。
 息を切らしていると、一番遅れていることもあり、階段の板に爪先をぶつけた。

「Night!?」
「よっと。えへへ、ちゃんと前見て走ろうねー」
「クソッ、お前にだけは言われたくない」

 Nightは階段の板を踏み外した。
 螺旋階段だから、走り難いのはあった。
 一人転びそうになるNightだったけど、フェルノに腕を掴まれる。
 ナイスだったけど、Nightは不服そうだ。

「皆さん、急いでください。崩れますよ!」
「そうよ。早くしなさい」

 けれど雷斬とベルの言う通り、螺旋階段は崩れかけていた。
 地面を伝う振動に、流石に負けてしまっている。
 このままじゃせっかく倒したのに終わりだ。そんなの嫌だから、無駄口は叩かないで一気に駆け上がる。

「見えましたよ、地上です!」

 黙々と螺旋階段を駆け上がった私達。
 ようやく地上の入口が見えると、少しだけど喜んだ。
 これで助かる。そう思ったけれど、まだ甘い。

「バカ、地上に出ても止まるな。そのまま太陽の古代遺跡も出ろ」
「「「えっ!?」」」

 念には念を入れているNight。
 地上に出ただけじゃダメらしくて、私たちは太陽の古代遺跡も飛び出すように指示される。

 緩めかけていた足を引き絞る。
 全速力で命の危機から助かるためには知った。
 各々が黙って、険しい顔をして(フェルノと雷斬以外)、マンホール上の入口から飛び出した。

「よ、いしょっと!」
「止まるな、走れ!」
「分かってるよ。えいっ!」

 私達は太陽の古代遺跡から駆け出す。
 急いで外に飛び出し、月の光を浴びる。
 まだ深夜なのは変わらない。太陽が一切出ていない中、私達は何とか全員脱出した。

「はぁはぁはぁはぁ……間に合ったわね」
「そうですね、ふぅ、ふぅ……疲れましたね」
「あはは、楽しかったー」
「楽しかったじゃないだろ。全く……ん?」

 全員少なからず息を切らしていた。
 まだ地面は少し揺れていて、体がフラフラする。
 そんな中、Nightは私の様子を気にした。視線の先には、太陽の古代遺跡がある。

「見て、太陽の古代遺跡が!」

 私は指を指していた。
 地上に出てもまだ揺れているのは、それだけ影響が大きいから。
 丈夫な造りの筈の太陽の古代遺跡すら揺れていて、本当に危険だった。

「これ、崩れるかもしれないな」
「崩れちゃうの!?」
「ああ、形あるものは、必ず壊れる運命にあるからな」

 これだけ丈夫そうな建物でも、最後には壊れてしまう。
 それが自然の摂理で、抗うことができないもの。
 Nightは良いことを言うと、私達は達観した。

 ガタガタガタガタガタガタガタガタ……ボトッ!

「「「あっ!?」」」

 その瞬間だった。本当に崩れた。
 太陽の古代遺跡の一部、中の様子は分からないけれど、少なくとも軒の部分が崩れた。
 すると入り口部分を覆ってしまい、出入りできなくなってしまう。

「ほ、本当に崩れた?」
「言霊でしょうか?」
「はぁっ!? 絶対に違うでしょ!」
「ですが……」
「単に振動が伝わって、脆くなった部分を崩しただけだ。しかしよかったな。生き埋めになって、強制ログアウトしなくて」

 あのまま、ほんの少しでも判断が遅かったら今頃は……想像したくもない。
 私達は身震いすると、助かったことに感謝する。
 強制ログアウトは辛い。精神に来るって、聞いたことがあるから、とりあえず安堵する。

「確かに。幸運だったわね」
「あはは、ボスも倒したしねー。結果オーライ?」
「そうだな。アキラ?」

 本当に幸運だったと思う。
 一歩間違えたら、きっと死んでいたに違いない。
 私は結果的には何とかなったけど、物足りない感も、若干あった。
 それはみんなが共有していることで、私が言っても仕方がないんだ。

「うーん、うん。楽しかったね」
「そう……だな」

 私はここまでの苦労を重ねた。
 大変だったし、最後はアッサリだったけど、これでよかったと思うことにする。
 Nightは私の心中を察してくれたけど、確かに結果オーライかも。
 そう思い込むことにして、月の光に当てられた太陽の古代遺跡を眺めていた。
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