VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー4:黒鉄の巨兵と五人の探索者

◇197 色違いの短剣

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 あれから数日が経った。
 結局、太陽の古代遺跡の攻略はあんな形で幕を閉じた。

「アレでよかったのかな?」
「なんの話~?」

 私はポツリと呟いた。
 と言うのも、あんな中途半端な感じで終わってよかったのか、凄く引っ掛かる。

「黒鉄の巨兵は倒しましたよ、アキラさん?」
「そうだけど、まだ探索できそうだったよね?」
「ああ、地下空間のことね。それはそう……よね?」

 地下空間の探索が中途半端だった。
 あの時、地面が揺れなかったら、もっと探索できた。
 だけどそんなことをしている暇もなくて、命からがら逃げるので精一杯。
 別にそのことは悪いと思っていないけど、何だか引っ掛かる。

「あの時、もう少し慎重に動いていたら……」
「仕方が無いだろ。地震は止められないんだ」

 Nightは本を読みながら、話に入り込んだ。
 もちろん、Nightの言うことは正しい。
 あんなの予期できなかったんだ。命があるだけマシに思った方がいい。

「終わったことをクヨクヨしても仕方が無いだろ」
「それはそうだけど……うん、そうだよね?」

 いつもなら意識を切り替えれる。
 けれど今日は何だか上手く行かない。
 ここ数日ずっとモヤモヤしていて、そのうち忘れると思うけど、何だか引っ掛かる。

(あの場所になにかあったのかな?)

 私は太陽の古代遺跡に何か置き忘れた物があったのかなと考える。
 だけどそんなものは一切無い筈だ。
 訳が分からなくなる中、そんな私を鑑みてか、Nightは口を開いた。

「あっ、そうだ。アキラ!」
「ん?」

 唐突に話を変えられた。
 Nightは私に声を掛けると、スッと首を回した。

「どうしたの、Night?」
「お前、この間短剣のことでボヤいていたな」
「えっ?」

 “短剣”の話なんてしたっけ? 私は思い出す。
 すると黒鉄の巨兵と戦っていた時のことを思い出した。
 あの時、確かに短剣が効かなかった。そう言えば装備しているけれど、最近切れ味が悪い。

「そう言えば効かなかったね。あの時……」
「アキラさん。短剣が刃毀れしていますよ!」
「えっ?」

 私は短剣をベルトの鞘から抜いた。
 すると雷斬が素早く飛び付く。
 私の見せた〈初心者の短剣〉は、確かに刃の部分がポロンと刃毀れしている。
 これじゃあまともに切れないのも当然で、私は先端の部分が抉れて短くなった短剣を見つめた。

「本当だ。どうして? もしかして、この間無理したから?」
「そうだろうな」
「うーん」

 私は唇を噛んだ。
 何だか悲しくなってしまうのは、ずっとここまで使って来たからだ。
 だけど刃毀れしちゃったら、もうまともに使えない。私は目を伏せると、Nightは私から短剣を取り上げる。

「やっぱりな」
「Night?」
「そんな顔をするな。いいか、この世に存在する数多のものは、必ず壊れるんだ。だからコイツも壊れる、それだけの話だ」

 Nightは短剣をクルクル回した。
 手首のスナップを活かして巧みに操ってみせる。
 凄くカッコいい言葉を言っていて、私は何だか胸を打たれる。

「だが、武器が無いのは困るな」
「そうですね。武器を買いに行きますか?」
「そうね。って言っても、アキラはどんな武器でも使える訳じゃないでしょ?」
「あはは、いっそのこと、武器なんて使わなかったらいいのにねー」

 雷斬とベルは真剣に考えてくれていた。
 フェルノはいつものようにノリだ。
 でも確かに、私は最近武器をほとんど使ってない。
 きっとそのせいで、短剣をダメにしちゃったんだろうな。私は自分の責任を重く受け止める。

「でも、短剣をダメにしちゃったのは、私だから……」
「そんなことは無いだろ。それに、新しい物を用意すればいい」
「用意すればって……なにしてるの、Night?」

 私は顔を上げた。
 そこに立っているNightは変なものを床に置いている。
 黒い板? 何だか鉄製みたいだけど、見覚えがある。

「もしかして、黒鉄の巨兵の?」
「そうだ。あの鉄くずを使うことにする」
「使うってなにを……あっ!」

 何となく想像ができた。
 確かに鉄くずはみんな手に入れた。
 でも使い道が分からなくて、全部ギルドホームに置いてある。
 その内の一枚を使って作る物。もしかしてと思うけど、本当にそうらしい。

「決まっているだろ。【ライフ・オブ・メイク】」

 Nightはスキルを使った。
 お得意の固有スキル【ライフ・オブ・メイク】を発動。
 すると床に置いていた鉄くずの一部が切り取られ、形がみるみるうちに変わる。
 その形は、完全に短剣だ。真っ黒で、艶があって、なんかカッコいい。

「できたな」
「「凄い」」
「へぇー、いいわね」
「はい。見た所、性能は一度置いておくとしまして、素材が変わってしまいましたが、全く同じものの様に見えます」

 私達はそれぞれが思い思いの感想を述べた。
 まさか、一瞬で短剣を作ってしまうなんて。
 しかも、私が使っていたものと全く同じ。Nightはクルンと指で回すと、「ふん」と鼻を鳴らす。

「少し重いが、威力は出るな。やはり簡単なものは作りやすい」

 短剣を作っちゃうなんて、しかも真似しちゃうなんて。
 全然簡単じゃない気がするけど、Nightにとっては造作もないことらしい。
 私達は圧倒されると、Nightが私に手渡す。

「素材や重さは変わったが、使える筈だ」
「ありがとう、Night」
「ふん。私はあまり役に立てなかったからな。それに使える物はなんでも使う。それが手段に繋がるんだ」

 Nightは真っ当なことを口にした。
 私達はポカンとしてしまうと、頭の中で確かにと納得。
 渡された短剣は、刃毀れしちゃった短剣と色違いだけど、全く同じもの。
 素材が違うから重さも違うけど、それでも使える。

「あー」

 短剣を受け取ってしばらく、私は見つめてしまった。
 別に何処かおかしな所は無い。
 それでもNightは説明する。

「一応作ったが、あくまでも模倣品だ。耐久値は通常のものよりも低い」
「それじゃあすぐに壊れちゃうわよ?」
「その時はその時だ。新しい武器に……ん?」

 私はNightの話を片耳で聞いていた。
 そのまま流してしまうと、短剣を見つめたまま。
 何だろう。心のモヤモヤが切り落とされた。

「ん? どうした、アキラ」
「なにかあったのー?」

 私は固まってしまった。
 受け取った真っ黒な短剣を未だに見つめている。
 「あはは、気に入ったのー?」とフェルノが呟く。

「もしかして、それじゃあ嫌だったの?」
「そうですね。同じものとは言っても、好みが……」

 ベルと雷斬が別の方向ベクトルから訊ねた。
 もちろんそんなんじゃない。
 ただ私は、黒い短剣を手にして思った。

「なんか、これでいいって感じがするね」
「「「はっ?」」」

 誰にも伝わっていなかった。だけどそれでよかった。
 これは私の気持ちの問題だ。
 結果が如何あれ、頑張った、楽しかった、結果は出た。最高になった。
 そう思えるだけで私は嬉しくて、何よりこの短剣が証明だよ。

「Nightが模倣コピーした、短剣か。うん、これで充分だよ」
「なんだ? 含みが混ざっているな」
「気にしないで。私、もう大丈夫だよ!」

 一人で納得してしまう。みんなを置いてけぼりだ。
 だけどこの短剣を手にしただけで、頑張った甲斐がある。
 だって、友達が作ってくれたんだ。それで何だか心が温かくなる……よね?
 少なくとも私はそうで、笑みを浮かべていた。

「よしっ、次も頑張るぞ!」

 私は一人で吠えていた。
 自分の中で意識を切り替える。
 考えを変えれば世界はどんな形でも明るく見える。
 そんな自分の得意分野で捻じ伏せると、暗い感情何てなんだったのかな?
 それくらいに思えてしまうと、私達の夏休みの結果を噛み締めた。
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