VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

文字の大きさ
22 / 199
1ー2:幽幻の居城の冒険

◇22 オッドアイの吸血鬼さん

しおりを挟む
 何処まで連れて行かれるのかな。
 もう腕が限界。痛みも無くなるくらい引っ張られていて、私は足だけを高速で動かす。
 とにかく走らされ、墓地の合間を抜けて行くと、私の目の前に月明かりが射す。

「うわぁ、綺麗な月……誰かいる?」

 ふと月に視線を奪われる。
 だけど私の視線はすぐに別のものに移った。
 と言うのも、お墓の上に人影があったのだ。

「放せ」
「うわぁおっと!?」

 私の腕から急に力が抜けた。
 黒い何かが剥がれ落ちると、私は自由の身になる。
 だけど代わりに慣性の法則って言うのかな? 上手く止まれず、私は転んでしまいそうだった。

「痛たたたぁ……ああ、腕が、麻痺してる?」
「当り前だ。あれだけ長時間腕をワイヤーで絞め付けられれば、例えアバターとは言え、腕の感覚が無くなる。血管が締め付けられているのと同じだからな」
「あはは、そうだよね。えーっと、助けてくれたんだよね、ありがとうございます」

 私が右の手がまだ繋がっていることを確認すると、ホッと一安心する。
 なるほど、そこまでリアルなんだ。と思わせてくれると、私はあまりのリアル思考に関心と同時に恐怖さえ感じる。
 だけどそんなことは一旦後回しだ。
 私はどんな形であれ助けてくれた人に感謝を伝える。

「……このやり方でありがとうなのか?」
「うん。だって助けてくれたんでしょ?」
「……だとしてもだ。一歩間違えればお前の腕は……」
「そうだとしても、そうならないと思ったから助けてくれたんだよね。だからありがとうございます、えっと、ありがとうなんだよ」

 私を助けてくれたのは、如何やら同い年くらいの見た目をした少女だった。
 だけどぶっきら棒で厳しい口調、私がいくら感謝を伝えても受け入れてくれない。
 むしろ引いている印象で、「なんだ、こいつ?」と言いたそうだった。

「変わり者だな」
「えっ、そうなのかな? でも、私、なんでも普通だよ?」
「そんなことは聞いていない。とにかくだ。助けたのは私の気まぐれ。それ以上でもそれ以下でも無いから、感謝する必要は無い」

 少女はそう言うと、足下に置いてある四角い何かを蹴った。
 四角い何かはファンタジー色の強いこのゲームには似合わない物。
 取っ手のようなものが付いている機械で、私の興味が引き寄せられた。

「ねぇ、それなに?」
「次はこれか。……やっぱり着眼点が変わり者だな」
「ええっ、これで変わり者判定なの? なんだか嫌だな」

 とは言え、私もなんだか変だった。
 と言うのも口調はいつにも増して軽い。
 饒舌とまでは行かないが、何故か安心感があって、心にゆとりが生まれていた。

「これはウインチだ。ワイヤーを自動で巻き取ってくれる便利な機械だ」
「き、機械?」
「ああ。私が作った」
「作ったの!? す、凄いんだね……ファンタジーは!?」
「驚くのはそこなのか。やはり変わり者だな」

 少女はウインチを蹴ると、手にしていた黒い何かがワイヤーだとはっきりと分かる。
 加えて、私の腕を絞め付けていたのがワイヤーだったと理解できた。
 まさか冗談じゃなかったなんて。もしそれが首にでも巻き付いていたらと想像すれば、ゾッと身の毛がよだってしまった。

「えっ、ちょっと待ってよ!?」
「今度はなんだ。騒がしい奴だな」
「ご、ごめんなさい」
「謝るな。それで、今度はなんだ?」
「どうしてワイヤーを私の腕に巻き付けられたの? ここまで二十メートルくらいあるんだよ。おまけに死角になってるから見えないよね?」

 私は振り返るとゾンビの群れに追われてはいなかった。
 だけどここまでの距離を思えば二十メートルはあると思う。
 おまけに死角になっているから私の姿なんて見えなかった筈。むしろ声が聞こえただけで奇跡だと思う。

「ああ、そんなことか……」
「そんなこと? そんなことじゃないよ。だって、ゾンビに追われてたんだよ」
「シャンベリーではゾンビが出る。それが普通だ。それでゾンビが出るのはシャンベリーに直接行ける通路だけ。それ以外ではゾンビは出て来ない」
「ほ、本当だね。この辺り、ゾンビがいない」

 今更だけど、私と少女が居るのは墓地の中。
 だけどこの辺りではゾンビが居ない。
 一人たりとも姿が見えず、私は首を捻ってしまうが、これでようやく謎が解けた。

「それともう一つの疑問だが、それに対しては私の種族が関係しているな」
「えっ?」
「私の選んだ種族は夜間に適している。ただそれだけだ」

 そんな種族があるんだ。私は全然知識が無いから知らない。
 ポカンとした顔でいると、少女は「こいつマジか」と言いたげだ。
 完全に私のことを見下した態度で、腕を組んだままウインチを蹴る。

「もういいか。話が終わったらとっとと……」
「そうだよ、一番重要なこと聞いてなかった。と言うか話して無かった」
「今度はなんだ?」

 少女は一瞬だけ私の方を見た。
 陰になっていて、顔が見えない。
 それでも私は素性の知れない少女ににこやかな笑みを浮かべた。

「私の名前、アキラっていうんだ。貴女の名前は?」
「……はっ?」
「まだ自己紹介して無かったよね。だから今更だけど」
「……はっ、ははは、本当に今更だな……はぁ、私の名前はNightだ」
「ないと?」

 “ないと”ってどの“ないと”だろう。
 ひらがなかな? かたかなかな? それとも騎士とかそっちの意味かな?
 そう思ったのも束の間。少女は月明かりをバックに、私のことを見下ろした。

「夜という意味のNightだ。覚えておけ」
「……う、うん。覚えた……と言うより、覚えちゃった……」

 私の眼に映り込んだもの。それは少女の顔だった。
 整った顔立ち。真白に浮かぶその肌と髪。
 それだけじゃない。何よりも輝く赤と青の二つの目、マント越しに背中から生えた二枚の羽、おまけに長い得物が顔を出している。。まさしくその姿はオッドアイの瞳を持った吸血鬼だった。

 だからだろうか、嫌だからだからでしかない。
 私は驚いてしまい、目を丸くすると脳に直接刻まれた。
 こんなの忘れようがない。胸の騒めきを解き放つような感覚に、なんだか運命じみたものを、私は乙女チックに感じてしまった。だけどこれは恋とかそんな漠然としたものじゃない。これが私がここに来た理由なんだと思わせてくれるには充分で、呆けていた口が笑みに変わっていた。

「ねぇNight」
「なんだ?」
「突然なんだけどさ、私と友達になってよ」
「はっ!?」

 私はあまりにもバカなことを言った。
 そのせいだと思うけど、Nightは口をポカンと開けてしまう。
 冷静さは完全に欠け、むしろ「えっ、な、なに?」と言いたげに焦っていた。

 そんなNightには悪いけど、私はそう決めていた。
 理由はさっぱり分からない。
 だけど心を内側から突き動かす高揚感はきっとこの瞬間を待っていたとばかりに、最高潮に達していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...