VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

文字の大きさ
42 / 199
2ー1:烈火に燃えた竜

◇42 全中三連覇ってヤバくない?

しおりを挟む
 フェルノがジャイアント・トードを倒した。
 そんな勇ましい姿を、傾斜の上から私とNightは確認する。

「あっ、よかった~」
「なんとか倒したな」

 私とNightは胸を撫で下ろした。
 だって、フェルノってば、ヒヤヒヤする戦いっぷりだったから。
 一瞬でも気を抜いたら多分やられてた。
 フェルノの並外れた反応速度だから何とかなったけど、あれがもし、一秒でも遅れてたら、フェルノは強制ログアウトだった。

「それにしてもあの姿。遠くて良く見えないが……」
「カッコよかったね」
「そうだな。一般的にドラゴンにはカッコいい印象がある。とは言え、加竜烈火か……“加竜”だけに“ドラゴン”か。なるほどな」

 今の、冗談で言ったんだよね?
 Nightがギャグなんて言わないもんね。
 私は驚いちゃったけど、Nightが一番らしくないのか、耳の先まで真っ赤になっている。
 きっと恥ずかしいんだ。私は分かってあげよう。うん、分かってあげた方がいい。

「Night、頑張ったね。偉い偉い」
「子供扱いするな。死にたいのか?」
「Nightはそんなことしないでしょ? ……うおっ!」

 Nightはいきなり拳銃を突き付けて来た。
 引き金に指を掛けていて、いつでも撃てるようにしている。

「もしかして本気?」
「どう捉えても構わない。だが、これだけは覚えておけ。私を子供扱いするな」

 Nightは威圧してきた。
 だけど私は動じない。
 代わりにフェルノを迎えに行くことを提案する。

「それよりNight、フェルノの所に行こうよ」
「話を逸らすな! だがまあ、その方がいいな」

 そう言うと、Nightも分かってくれる。
 拳銃をホルスターに戻すと、傾斜を滑り、フェルノの下へと向かう。
 その後を私も傾斜を滑り降りて付いて行く。
 だけど私は気付いてた。Nightは拳銃にストッパーを掛けていたこと。
 最初から撃つ気なんて無かったこと。それが余計に可愛くて、私は揶揄いたかった。



「ふぅ。あー、楽しいなー。もっと暴れたいよー」

 私達がフェルノの下へ駆け寄ると、フェルノはまだまだ暴れ足りなかった。
 腕をブンブン振り回すと、鋭い爪を剥き出しにする。
 宙に絵でも描くみたいで、ちょっと危ないけど、動物の赤ちゃんみたいで可愛かった。

「フェルノ、お疲れ様」
「あー、アキラにNight。お疲れー」
「そうだな。無事に倒したみたいでなによりだ」

 フェルノの近くにはジャイアント・トードが転がっている。
 白目を剥いて息絶えていて、今粒子になりかけている。
 消滅も時間の問題。本当に一人で倒しちゃうなんて、カッコよすぎだ。

「ありがとー。でもまだまだ暴れ足りないよー」
「あはは、部活で散々走ったり素振りしたでしょ?」
「それとこれとは全然違うよー」

 フェルノの体力は本当に無尽蔵。
 テニス部のそんなにキツくない部活終わりでも、無敵に元気いっぱい。
 私は呆れて笑っちゃったけど、フェルノからしてみれば、まだまだ足りなかった。

「少しは落ち着け」
「えー、せっかくのCU初日なんだからさ、少しは大目に見てよー」
「はっ。ところでNight、お前はあの加竜烈火だよな?」
「ん? そうだよ、私、加竜烈火。イェーイ!」
「そういうのは要らない。ってことは、あの全中三連覇のか?」
「ん? 全中三連覇……ああ、テニス!」

 フェルノはすっかり忘れていた。
 一瞬記憶の中から拾い上げる時間が発生。
 だけど何とか思いだすと、華々しい結果を披露した。

「凄いよねー。うちの中学、軟式テニスの総体で、まさかの三連覇しちゃうんだもんねー」
「その立役者が、お前、加竜烈火だとしてもか?」
「そっかなー? 私は目の前に来たボールを返して、最後まで相手とラリーを続けて、楽しく楽しく遊んでただけだよー?」
「あ、遊んでたか。そうか、だからお前は強いのか」
「ん? どゆこと?」

 フェルノはポカンとしていた。
 だけど、私もNightも気が付いてる。
 フェルノの強さ。それは自分を鼓舞するパッションセンスだ。
 本人がなんで気が付いていないのかは分からないけど、なにはともあれ、全中三連覇は凄い。

「あーあ、もっと強いモンスターいないかなー」

 フェルノは本当につまらなそうだった。
 まだまだ暴れ足りないだけじゃない。何処か、システム的な要因に囚われている気がする。

「ねぇ、Night。どうしてフェルノのテンションが高いの?」
「ん? いつもこうなんじゃないのか?」
「まぁ、確かに一回ボルテージが上がったらこうなることもあるけど……なんだか荒々しいよ?」
「そうだな。恐らくは“竜の力”が原因だろう。フェルノ、お前の種族はなんだ?」

 Nightはフェルノに訊ねる。
 するとポカンとしていたフェルノの顔付きが変わる。
 今にも吠えそうなポーズを取ると、フェルノは答えた。

「私の種族は、<ファイアドレイク>だよ! カッコいいドラゴン。凄いでしょー」
「ああ、凄いな。とはいえ<ファイアドレイク>か。想像通りだな」
「えっ、想像通りってどういうこと?」

 私には全然分からなかった。
 だけどNightだけが勝手に理解している。
 これ、訊いた方がいいよね? 私はNightに訊ね返す。

「Night、<ファイアドレイク>って?」
「炎を吸う竜と書いて、別名吸炎竜と呼ばれる、ドラゴン系のクリーチャーだ」
「凄い! なんか、カッコいいね」
「でしょでしょー。やっぱり竜ってカッコいいよね?」
「そうだな。とは言え、お前があの激レア種族を引き当てたのか、世の中意味が分からないな」
「ん? 私、これしか出なかったけど」
「もっと偶然だな。本当に意味が分からない」

 Nightは頭を抱えてしまった。
 如何してそんな顔をするんだろう。もしかして悔しいのかな?
 私はフォローしようと思って、Nightに言葉を掛けた。

「Nightの種族もカッコいいよ。<ヴァンパイア>でしょ?」
「そういうお前は……」
「私? 私は<ヒューマン>だけど?」
「「はっ!?」」

 な、なに? なにが起こっているの?
 急に詰め寄られた挙句、凄い険しい顔をされた。
 私、なにかやっちゃったかな?
 慌てて弁解すると、私はNightとフェルノに訊ねた。

「ど、どうしたの、二人共?」
「アキラってさ、昔から主人公キャラ好きだよねー」
「う、うん。嫌いじゃないけど?」
「だからと言って、このゲームで一番つまらないとされるハズレキャラ、<ヒューマン>を選ぶなんてな。はぁ、やっぱり変わり者だ」
「そうそう、アキラが一番変だよねー」

 なんで私が一番の変わり者認定されるんだろう。
 私は唇を尖らせると、不服な気持ちになってしまう。
 それでもここは冷静に意識を切り替える。
 そうすると、心を穏やかにさせた。

「二人共、ちょっと酷いよ?」
「「そうか」なー?」
「うん、怒っては無いけど、怒っちゃうかもしれないからね? 私、好きでこの種族選んだからね」
「好き好んで選ぶなんてな。やっぱり変わり者だ」
「そうそう、変わり者変わり者」

 何度も何度も煽られた。
 もうそれでいいや。
 私のテンションが若干下がると、全身が気怠くなる。
 だけどとりあえずジャイアント・トード戦は上手く行った。それだけは伝わると、私達はスタットへと戻るのだった。

「はぁ、なんで<ヒューマン>選んだらダメなんだろ?」

 私は帰り道もブツブツ唱えていた。
 その陰のオーラはNightやフェルノにも伝わる。
 だけど理由を教えてくれない。きっと私が傷付くからだ。
 とは言えもう傷付いている。これ以上深くなる筈ないと、私は分かっていたのに、全然教えてくれない。今更なと思いつつも、私は二人の優しさを受けて、敢えて訊かないことにしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...