VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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2ー2:継ぎ接ぎの始動

◇51 必要事項を書くだけなんだ

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 散々な目に遭ったけれど、ミーNaさんの活躍もあり、無事に収束した。
 それと同時に、ギルド会館の中にあったガヤガヤが無くなる。
 これもミーNaさんのおかげで、空気が締まって見えた。

「次の方、どうぞ」

 私達の番だ。
 色々あったけど、十分くらい待ったら、私達の番になった。
 受付窓口の前に立つと、そこにはミーNaさんが居る。
 完全にさっきの人と別人で、なんと切り出せばいいのか分からなかった。

「あっ、先程の方ですね。ギルドの登録でよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「それではこちらの用紙に必要事項の記入の上、再度提出してください」

 そう言うと、ミーNaさんはトレイの上に、紙を置いていた。
 これがギルド登録用の用紙らしい。
 私達は受け取ると、ミーNaさんに手振りで指示される。

「あちらに設置された記載台に、ペンが用意されていますので、お使いください」
「ありがとうございます」
「それと、先程は大変でしたね。ご無事で何よりでした」
「あ、あはは。はい」

 私は痛い所を突かれた。頭を掻きながら、フェルノと一緒に並んでいた。
 だけどNightに肘を入れられる。
 「余計なことを言うな」とでも言いた気で、私はゴクリと喉を鳴らすと、記載台へと向かった。

「はぁ、散々だったな」
「そうだね。でも、ミーNaさん強かったね」
「うんうん。並みのプレイヤーよりも強いんじゃない?」
「そういうAIを搭載されているんだろ。下手に機嫌を損ねさせるなよ」
「「うん」」

 それはそれで痛いくらい伝わった。
 流石に今の私じゃ、ミーNaさんには勝てない。
 戦う気なんて最初から無いけど、ギルド登録を取り消されたら溜まったものじゃない。
 私は気を引き締め胸を撫でると、記載台に立ち、置いてあったペンを取る。

「うわぁ、このペン変な形してる。羽ペンって奴?」
「昔の人が使ってた奴だ。結構凝ってるねー」
「世界観守ってて偉いよね」
「おい、それ私への皮肉だな」
「「そんなことないよ」-」

 記載台に立ち、そこに置いてあるのは羽ペン。
 私は初めて見たから少し興奮する。
 なによりも世界観を守っていて、私はついついNightをボヤいていた。

「チッ、まあいい。とっとと記入するぞ」
「そうだね。また並ぶの大変だもんねー」
「うん。えっと、インクは……あれ、インクが無い? うわぁ!?」

 私が代表して羽ペンを手にした。
 だけどインクが何処にも無くて、キョロキョロする。
 すると突然用意された用紙の記入欄が浮かび上がり、更に羽ペンの先に光が灯った。

「おお、最新式だな」
「どういうこと?」

 困惑した私だった。だけどNightは見事にあっさりしている。
 理解が追い付かない私だけど、とりあえず記入欄の部分に、羽ペンの先を持っていく。
 するとインクも無しに文字が掛けそうで、ましてや直接書き込まなくても、宙に書くだけで良さそうだ。

「な、なにこれ?」
「どうやらコレは、空中に書いた文字を、自動的に起こしてくれる道具らしい」
「へぇー、ゲームだねー」
「そうだな。現実でも使われ始めているらしいが、流石はエルエスタ・コーポレーションだ」

 Nightもフェルノも感心するだけ感心している。
 そんな二人とは一線を画すのは私。
 普通に凄すぎる技術に、改めて驚愕した。

「ファンタジーっていうより、SF?」
「ほら、アキラ。まずは名前名前!」
「そんなに押さないでよ……名前?」

 フェルノに急かされる私。
 ギュッギュッと抱きつかれて、これじゃあ文字も書けない。
 そんな中、ふと言われた言葉。私は陽市に視線を戻すと、確かにまずは“ギルド名”と書かれていた。

「そんなの考えて無いよ」

 私は何にも考えて無かった。と言うか、今初めて知った。
 Nightとフェルノも考えていなかったらしい。顔にそう書いてある。
 ポカンとする私。間延びした時間が流れると、とりあえず口を開く。

「二人共、どうしよう?」
「どうしようと言われても困るぞ」
「うーん、ギルド名でしょ? なにかいい名前無いかな?」

 如何しようかな。
 私は困ってしまうも、とりあえず、三人で考えることにした。

「うーん、とりあえず他の項目から埋める?」
「それがいいだろうな」
「他の項目って……“ギルドマスター”と“サブギルドマスター”の項目に諸々の事項……誰がやる?」

 とりあえず、一旦名前は保留にした。
 だって誰も良い名前が思い付いてない。
 こういう書類って、一回提出したら、なかなか変更できない。
 そんな気がしてしまい、私達は別の項目から埋めることにした。

「それじゃあ誰がギルドマスターをやるの?」
「「アキラだろ」アキラでしょ?」

 なんでだろう、即答されてしまった。
 私は一瞬目を見開いて固まるけど、当然反対だ。
 だって私にはギルドマスターなんて向かない。
 これって、もっとリーダーシップがある人がやった方がいいに決まってる。

「えっ、なんで私なの。絶対向いてないよ」
「えー、面白いじゃんかー」
「面白いとかじゃなくて、フェルノがやってよ」
「私がそう言うキャラじゃないよーだ。ガンガン暴れてバトりたいのー」

 フェルノはシャドーボクシングを始めた。
 シュッシュッと拳を突き出すと、空気が震える。
 当たりそうで危ないから止めてもらうも、それならもっと適任を用意する。

「Nightは? Nightなら、上手くまとめてくれるでしょ?」
「私はやる気は無いぞ」
「どうして。Nightなら絶対できるよ」
「お前な、人のことを買い被り過ぎだ。人間はなんでもできる訳じゃない。私にリーダーシップの気配が少しでもあると思うか?」
「それは、その……」
「言葉通りだな」

 私は止まってしまった。確かにNightはリーダーって感じじゃない。
 むしろ、指揮官とか軍師とか、そっちの方がポイ。
 だとすれば一体誰がギルドマスターをするのか。
 もはや消去法だけど、私は嫌だ。やりたくないし、上手くできない。

「そんな目で見ないでよ。私にもできないよ!」
「えー、アキラが言いだしたんでしょー」
「そうだぞ。お前が切り出したんだ。お前がやれ」
「それはそうだけど……私じゃ上手くできないよ」

 普通に落ち込んでしまって空気を悪くする。
 重い空気が頭から圧し掛かる。
 そんな私にNightは肩に手を置きつつ、言葉を掛ける。

「大丈夫だ。お前ならできる。むしろお前にはリーダーの素質がある」
「リーダーの素質?」
「ああ、そうだ。お前は変り者だが、それ故に変り者を引き込む才能がある。思い立ったが吉日と言う言葉通り、お前は私の毛嫌いする態度さえ押し退けて、こうしてパーティーを汲ませた。それができたのは、お前自身、押しが強いからだ。故に、これだけ変り者が集ったことになる。理解ができるな」
「理解はできるけど……」

 あんまり理解したくなかった。
 だって、それじゃあ私が一番変り者みたいに聞こえる。
 ムッと心の奥底、お腹を黒くして腹を立てるも、言葉にも態度にも出さないように気を遣う。

 すると頭の中で意識がクリアになった。
 Nightの言葉がスムーズに入って来ると、客観的に見えていた自分が映し出される。

(私がリーダーに向いている。って、そんなことないんだろうけど……)

 完全に煽てられているだけ。きっとそうに違いない。
 なのにどうしてだろう。やってもいい気がした。
 きっとこのメンバーだからだ。私は友達の前でいい格好がしたかったんだ。

「それじゃあ、Nightがサブギルドマスターやってくれる?」
「はっ、私がやるのか!?」
「うん。Nightが推薦したんだから、私にもその権利があるでしょ? フェルノは良い?」
「もちのろんだよ。それってサイコーじゃん」

 私は煽てられた分だけ乗ってみることにした。
 こんなの珍しい。だけどちょっと意地悪もする。
 推薦して来たNightも巻き込むと、面倒な顔をされたけど、私もフェルノも大賛成だ。

「それじゃあ書いちゃうね」
「いいよいいよー。あっ、Night押さえておくから」
「おい、フェルノ止めろ。おい、私の名前を書くな!」
「えっと、ギルドマスターはアキラで、サブギルドマスターはNightっと」
「おい!」

 全力で抵抗するNightは、フェルノの前に無力。
 筋力も体力も無く、簡単に抑え込まれてしまうと、その隙に私が用紙に書いた。
 スラスラと書き記し、私は満足する中、こんな出鱈目で、凸凹で、継ぎ接ぎだらけのメンバーに、なんだか笑っちゃいそうだった。
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