VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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2ー3:ユニゾンハートは止まらない

◇70 初めてのPvP

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「それじゃあ、ルールはどうするんだ?」
「ルール?」
「お前、PvPのルールを知らないんだろ。お前に有利なルールで受けてやる」

 そんなこと言われても、私にはPvPが何なのかもわからない。
 有利なルールって言われても、なにが有利なのかもさっぱりだ。
 首を捻ってしまい、腕を組んでいると、急に聞き馴染みのある声が聞こえた。

「なにやってるんだ、アキラ!」
「そうだよ、アキラ。なーに、面白いことしてるのー?」

 私はすぐさま振り返った。
 そこに居たのは、インベントリに入りきらなかった荷物を抱えたNightと、キラキラとした瞳を向けるフェルノ。
 いつの間に集まっていたのかな?
 私はこんな面倒な状況に巻き込まれているので、きっと後で怒られると思った。

「それが、その……PvPを受けちゃって」
「PvPだと!? バカか、お前! そんなもの、すぐ取り消せ」
「いや、その……受けちゃって。今、ルールを決めてる所なんだけど」
「ルールだと? ちゃんと、自分に有利になるルールを設定したんだろうな? まさか、スタンダードじゃないよね? よな?」

 スタンダードも何も分からない。
 私はポカンとしてしまう中、リボルグさんは急かした。

「早くしてくれるか? 俺達も時間は無いぞ」
「それじゃあ、スタンダードでやります」
「「「スタンダード、だ~!?」」」

 Nightもリボルグさんも、周りの人達も声を荒げた。
 唯一、この空気に乗れていないのは、初心者の私とフェルノだけ。
 一体何がおかしいのかな? 困惑していると、リボルグさんは笑い出す。

「はっ、はははははっ! お前、面白いな。いいぜ、スタンダード・ルールで受けてやる。レベル・ステータスの差は存在しない。アイテムの使用は無し。どちらかのHP・MPが〇になった方が負けだ。もちろん、降参も有りだぜ?」
「降参はしないです」
「ふん、痛みの実数値は半分に設定してやる。それじゃあ、カウントダウンスタートだ」

 パチンとリボルグさんは指を鳴らした。
 すると頭上に60のカウントがスタートする。
 更に私とリボルグさんを取り囲むように、巨大な円形のバリアー・フィールドが発生し、完全に閉じ込められてしまった。

「な、なにこのバリア?」
「これがねぇと、危ないんだよ。運営の配慮だ、これで思う存分やり合えるだろ?」
「は、はい! それじゃあ、頑張ります」
「ふん、勝手にやってろ」

 60のカウントダウンが一つずつ減って行く。
 私は刻々とカウントが進むのを待っていると、緊張感が伝わる。
 なにせ初めてのPvPだ。モンスターとは勝手が違うと思い、全身が固まる。

「アキラ、緊張するなよ」
「Night……」

 私はNightに声を掛けられた。
 緊張している私を解そうとしてくれた。

「そうそう、アキラは強いんだからさー。気軽にやってみよー」
「気軽に。うん!」

 何だか少し体が解れる。
 緊張していたものが解けると、体が軽くなった気がした。
 ホッと胸を撫で下ろし、全身から立ち込めるエネルギーを受け、私は勇気を貰った。

「アキラ様」
「この声、モノクロちゃん?」

 私は周囲を見回した。
 けれどモノクロちゃんの姿は見当たらない。
 もしかして、たくさん観客がいるから、モノクロちゃんの姿が見えないのかも。
 そう思って、耳だけ澄ましていると、モノクロちゃんの声がする。

「アキラ様、頑張ってください」
「うん、ありがとう。できるだけ、頑張ってみるね」

 期待されているみたいだけど、私は期待して欲しくなかった。
 だって、私は一方的に勝てるとは思っていない。
 もちろん、勝ちたいとは思っている。
 だからこそ、このカウントが、全身を痙攣させる。

「五、四、三、二……一」
「行くぞ」

 カウントが0になると、アナウンスが鳴った。
開始の宣言がされると、いきなりリボルグさんは動き出す。
 一瞬で距離を詰めると、鋭い爪が私の視界を捉える。

「死んどけ」
「危ないっ!」

 私は体を反らして、何とか攻撃を回避した。
 するとリボルグさんは驚いた様子だ。
 この一発で仕留めに来たらしく、一撃を躱されたことで、かなり動揺していた。

「マジかよ。俺の攻撃を……」
「危なかった。強いですね、リボルグさん」
「ふん、お前も……なっ!」

 リボルグさんは右腕を下に降ろす。
 グルンと回しながら爪を尖らせると、私の服を爪で引っ掛ける。

「きゃっ!」

 当然私は悲鳴を上げた。
 けれどリボルグさんの攻撃は慣性を利用している。
 このままじゃ引き裂かれて、肌が露出する。
 そんなの恥ずかしい……私はなんとか抵抗する。

「止めてください!」
「な、なんだ。うわぁ!?」

 私はリボルグさんに服を引き裂かれる前に、一歩踏み込む。
 パンチに全体重を乗せると、リボルグさんの頬を殴る。
 ドスン! と痛烈な一発が入った……と思ったけど、リボルグさんは、顔を逸らしている。

「受け流さなかったら、ヤバかったな」
「私も危なかったです」

 とりあえず服の裾はパンツに入れた。
 これで恥ずかしいことにはならない。いや、もっと恥ずかしいのかな?
 私はとりあえず、肌が露出しないで済むと、リボルグさんを迎え撃つ。

「リボルグさん、本気で行きますね」
「ああ、来いよ。俺も本気でやってやる」
「分かりました。行きます、【キメラハント】!」

 私は先に動くことにした。
 先制を許してしまった以上、スキル戦では負けない。
 【キメラハント】で武装すると、力強く前に踏み出す。

「な、なんだ? それがお前の固有スキルか」
「はい。喰らってください、【甲蟲】!」

 【甲蟲】を使って腕を武装。
 籠手を纏うことで、パンチを叩き込みに行く。
 さっきよりも当たれば確実に痛い。
 私は鋭い目で訴えると、リボルグさんはニヤッと笑う。

「よく分かんねぇスキルだけどな、俺には通用しないぜ」
「えっ?」

 私が拳を振り抜いた瞬間、リボルグさんは目の前から見える。
 私は目を見開いてしまうが、周囲を見回す前に、蟀谷付近に拳が飛ぶ。

「痛い!」

 私は倒れ込んでしまいそうになる。
 左手を付き、蟀谷を押さえる。
 今のはなに? 私が瞬きをすると、目の前に変な人が居た。

「大したもんだぜ、今ので潰れねぇのはよ」
「もしかして、リボルグさん?」

 私は目を丸くする。
 なにせ目の前に居るのがリボルグさんなんて信じられない。
 そこに居たのは、全身が茶色い毛に覆われた狼男。
 鋭い爪を突き立てると、私のことを威圧して来て、ゴクリと喉を鳴らした。
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