VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

文字の大きさ
82 / 199
3ー1:メダルハンターへの道

◇82 新イベントの準備

しおりを挟む
 カタカタカタカタ!

 キーボードを打ち込む音が響く。
 今私のいるのは社長室です。
 当然私以外は誰も居ないので、孤立した空間になっていました。

「ふぅ……暇ですね」

 とは言え、私を慕ってついて来てくれた部下は大変優秀です。
 他会社でも通用するような一線級の腕を持っています。
 そのおかげか、私の仕事はほどんどなく、少々暇を持て余しました。

「皆さん速いですからね。私の仕事は……はい」

 感心していると、突然腕時計型VRドライブが鳴り出した。
 誰かからの連絡だと瞬時に判断し、私は音声で応答します。
 すると最近声を聞いていなかった、副社長の声が聞こえました。

「社長~!」
「お疲れさまです、耶摩さん」

 通話に出たのはやはり副社長でした。
 名前は倉山耶摩くらやまやまさん。まだ二十代ですが、私を一に慕う優秀な女性です。

「どうしましたか、耶摩さん?」
「社長、とりあえず外交は済みましたけど……」
「お疲れさまです」
「お疲れさまじゃないですよ。どうして私なんですか!」

 耶摩さんは如何やら怒っているようです。
 と言いますか、自分では適任ではないと思い込んでいるみたいです。

「耶摩さん、貴女の実力は高いです。それに貴女にも人を惹き付ける魅力が備わっているではないですか」
「そんなこと無いですよ。社長のカリスマ性の前には全然……それに私は、社長にお願いされただけで……」
「とは言え、選ばれたのは貴女自身なんですから。頑張ってください、総理大臣・・・・

 私は少しだけ揶揄ってしまいました。
 すると耶摩さんの疲労感絶大な発狂が、私の鼓膜を突き破りそうになります。
 感情的にもなれ、それでいて利己的にもなれる。状況を一変させる話術を持ち、愛されるようなキャラ。それらが合いまったからこそ、耶摩さんは総理大臣になったんです。
 私は誇りに思うと、少し嬉しくなる一方で、期待も大きく膨らみました。

「ところで、耶摩さんの愚痴はこれで終わりですか?」
「ぐ、愚痴じゃないですよ。本当に伝えたかったのは、新しい企画案です」
「企画案? うちはノルマ義務はありませんが?」
「そうじゃないですよ。この間、少し時間があったのでCUにログインして見たところ、金銭面で苦労しているプレイヤーが多くいたので、新しくイベントを考えてみました。時間が無かったので、簡潔なものになりますが、企画書を送りますね」

 耶摩さんは仕事も早いのです。
 すぐに企画書がVRドライブを通して送られると、私も時間効率優先で、企画書を一気読みました。

 掛った時間は物の一分。
 全ての情報を脳内処理すると、企画書を閉じます。

「ど、どうでしょうか?」
「いいですね、耶摩さん。もう少し、内容を詰め次第、実行してみましょうか」
「そ、即答ですか!?」
「ええ。なにか問題はありましたか?」

 私は素晴らしい企画書にこれ以上の言葉は不要でした。
 しかし当の本人は意外に思ったらしい。
 そのせいか、少しだけ間を置くと、覇気のある声を出しました。

「ありがとうございます。お願いします!」
「こちらこそありがとうございます。それと耶摩さん」
「は、はい?」
「あまり無理をしないように。心身共に休めてくださいね。貴女も、私の大切な友人なのですから」
「……は、はい! 失礼します」

 耶摩さんとの通話が切れてしまいました。
 何か粗相をしてしまったのでしょうか?
 耶摩さんの態度の急激な変化に驚きつつ、改めて企画書を読み直しました。

「この企画書、新イベントですか。これは面白くなりそうですね。早速、告知をしておきましょうか」

 私の頭の中では既に想定が組まれていた。
 故に、まだ企画段階で合っても、公式HPに載せる価値がある。
 そう思った私は好奇心を刺激されると、新しい可能性に、胸を昂らせました。



 カタカタカタカタ!

 キーを打ち込む音が広い部屋に響いた。
 真っ暗闇にした部屋で、私は一人、パソコンのディスプレイと向き合う。

「なにか無いだろうか?」

 二つのキーボードと四つのディスプレイ。
 それらを四つに分割した思考で巧みに使いこなしてみせた。

「とりあえず受注されていたものは、これで終わりだな」

 左手で使うキーボードとディスプレイには、無数のコードが表示されている。
 三日ほど前に依頼はあった仕事で、企業のプリグラムを、より強固にしたのだ。
 AIが進歩している時代であっても、そのせいで様々な問題も出る。
 例えば、本来動く筈のプログラムが、バグや不可によって勝手に改竄されることがあるのだ。

 それを直すのも私の仕事。何よりも早い。
 そのおかげか、そのせいか、引き受けたくもない依頼がたくさん入って来る。
 本当に面倒に私は思っていた。

「はぁ、とは言え問題はこっちだな」

 仕事の方は適当にやっても何とかなる。
 けれど右手で使うキーボートとディスプレイに表示される、検索エンジンの中では、溜息を付く。
 欲しい情報がネットの広大な海を探しても、なかなか見つからないのだ。

「とは言え、分かっていたことだな。ギルドホーム用の資金を集めるのは、長い時間と労力を掛けるもので……」

 ギルドホームの購入は長い道のりだ。
 私は分かっていたのだが、できる限り最短距離を進みたい。

 しかしその手筈がなかなか整わない。
 奥歯を噛み締めていると、不意に私は公式HPを訪れていた。

「初心に帰るか」

 公式HPの情報は確実だ。
 とは言え、公式が情報を唐突に漏らすなんて真似はしない。
 そう思い避けていたのだが、一応覗いてはおく。

「どうせいい情報は……新着?」

 早速クリックすると、“新着”と点滅していた。
 一体何が新着なのか。恐らくは、修正が入っただけだろう。
 私は軽く流すも、一応先を覗いておく。

「一体何が新着で……はっ?」

 私は目を丸くする。
 ポカンとし、一瞬意識が切り離される。
 それもその筈、またとない機会チャンスが舞い込んだのだ。

「これは一体……あまりにも都合が良すぎる」

 何かの陰謀さえ感じてしまう。
 もしかすると、VRドライブを通して、情報を常に抜かれている?

 いや、その可能性は大いにあるが、別に気には留めない。
 何故なら最初の段階で、規約にサインをしているからだ。

 とは言え、ここまでタイミングが完璧だと、少し不気味に感じる。
 私は腕を組んで考え込むが、やはり魅力的な言葉に惹かれた。


〔新着:新イベント開催のお知らせ!〕


「新イベントか……なにか打開策に繋がればいいが」

 私は未だソースが不明な中、とりあえずこのイベントのことを頭の片隅に留める。
 もちろん信用しきったりはしない。
 けれど公式運営がやることだ。なにか光が見えればいいと、私はほくそ笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

処理中です...