VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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3ー1:メダルハンターへの道

◇90 大物を釣り上げたぞ!

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 私とNightは戦っていた。
 フラッシュカープの猛攻に、耐えることしかできないので、全力で耐えていた。
 それこそ、奥歯を噛んでる。今にも砕けてしまいそうなほど痛い。
 それでも歯を食いしばらないと持っていかれてしまいそうで、持っている釣竿を放せない。

「クッ、これは……」
「大物だね。絶対に逃がしちゃダメだよね」

 メダルを飲み込んだフラッシュカープに違いない。
 橋の下はよく見えないけれど、水飛沫が上がっている。

 その下を黒い影が素通りする。
 きっと私達が抵抗しているから、暴れているんだ。

(負けないよ)

 だけど負けてあげる気は無かった。こんなに頑張っているのに諦めたくない。
 私とNightは腕が引き千切られて、今にも橋の上から落ちそう。
 ジリジリと足が滑って行くと、腰の辺りが橋の柵にぶつかった。

「痛い!」
「落ちるなよ、アキラ。私じゃお前を引き上げられない」
「ええっ、そんなこと言わないでよ! うわぁ」

 フラッシュカープは暴れ出した。
 一気に川の上流に登っていく。
 滝登りと見せかけた、川登りを披露されると、私達は力任せに負けてしまう。

「「えっ!?」」

 体が浮いた。いや、地面から足が離れていた。
 もはや橋にもたれかかる形で何とか耐えると、目を回してしまう。
 だって、真下は川。このままじゃ、確実に真っ逆さまだ。

「Night、なにか出して!」
「私をロボットみたいに言うな!」
「で、でもこのままじゃ……えいっ!」

 私は咄嗟にスキルを使った。命の危機を感じ、柵に向かって爪を立てた。
 【キメラハント】+【灰爪】。体を上手く支え、なんとか落ちずに済むと、ホッと一安心…できる訳なかった。フラッシュカープは更にグングン登っていく。

「アキラ、このままだと落とされるぞ」
「でも、逃げしちゃダメでしょ?」
「そうだな。できれば釣りあげたいが……」
「だったら頑張るしかないよ。ゆっくり体を後ろに倒して、フラッシュカープを疲れさせよう」

 こうなったら意地になっちゃう。
 ここまで頑張って、“ダメでした”にはしたくない。
 そんな思いが私を駆り立てると、フラッシュカープの動きを完全に合わせた。

「タイミングに合わせるぞ、今だ!」
「うん」

 Nightがカウントを取り、完璧なタイミングで反撃を開始。
 フラッシュカープは急に泳ぎを制限されると、ジリジリと引き戻される。
 きっと何が起きているのか分からない。でも橋の上では、大変なことになっていた。

「うっ、これ以上は下がれない」
「クソッ、持っていかれ過ぎたか」

 橋の一番後ろ、反対側にまで回り込む。
 けれど出した糸がそれだけ長いのか、全然リールが巻けない。
 むしろ体重移動が精一杯で、私もNightもピンチだった。

「仕方ない。今から電動リールを作るか」
「お、遅いよ!」
「仕方が無いだろ。電動リールを作るためのHPは残っていなかったんだ」

 この状況に、渋々スキルを使うことを決めたNight。
 だけど複雑なものだから、でき上がるまで時間が掛かる。
 【ライフ・オブ・メイク】の弱点の一つで、それまで私が耐えられるか不安だったけど、その不安は的中した。

「嫌っ!」

 Nightの支えが無くなった瞬間、体が持っていかれる。
 一気に力を解放したフラッシュカープは私のことを持っていく。
 慌てて間に入ろうとするNightも間に合わず、私は橋から……

「あっ……私、死んじゃ」
「死なないよー!」

 その瞬間、訊き馴染みのある声がした。
 空気を裂き、熱を生み出すと、釣竿を直に握る。
 今にも折ってしまうそうな程、分厚い手をしていて、鋭く伸びた爪と赤い皮膚はまるで竜のようだった。

「フェルノ!?」
「一気に釣り上げちゃうよー」
「うん。「せーのっ!」」

 私とフェルノは一気に釣り上げる。
 体を落とし、体重移動を武器にすると、釣竿をしならせる。
 今にも折れてしまいそうだけど、私もフェルノも必死になり、ただ力任せになるよりもフラッシュカープの動きに合わせ、一気にリールを回し、竿を持ち上げた。

「「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

 バシャン!

 水飛沫が上がり、一匹の鯉が現れる。
 キラキラとしたピンク入りの体。
 鱗が光り輝くと、私もフェルノも水には絶対に付けないようにして、橋の上まで釣り上げた。

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「やった、やっと釣れた……疲れた」

 私もとフェルノはフラッシュカープを釣り上げたことに喜ぶ。
 もう足がフラフラでしばらく立ち上がれそうにない。
 けれどこれで釣り上げられた。ぷっくりとお腹が大きく張ったフラッシュカープは、水の上から上げられると、コポコポ体をばたつかせている。

「ありがと、フェルノ。よく間に合ったね」
「飛んで来たからねー」

 フェルノの背中から翼が生えていた。
 バッサバッサと翼をはためかせている。
 きっとここまで時間が掛かっちゃったに違いなく、フェルノが間に合わせてくれたと悟った。

「よく分かったね、ここだって」
「ああ、まあ、虱潰しって奴?」
「マジで? それは大変だったね……いや、大変過ぎるでしょ!」

 フェルノの無尽蔵体力がバカげていた。
 私は呆れてしまうと、もう口を開けるしかない。
 「あはは」と掠れた笑い声を浮かべると、フェルノは親指を立てた。

「まあいいじゃんかー。んで、これがその魚?」
「うん。多分、この子が飲み込んで……」
「違うな」
「「えっ?」」

 Nightはここまで黙っていた。代わりに釣り上げたフラッシュカープを調べていた。
 その口から告げられる真実。まさかのスカ。
 私もフェルノも瞬きすると、Nightはフラッシュカープの口を開けた。

「確かにフラッシュカープで間違いないが、この個体じゃない。見てみろ、腹の中にはなにも入っていない」
「「ほ、本当だ」―」

 フラッシュカープの口の中にはなにも入っていなかった。
 棒を突っ込んで吐き出させようにも何も入っていないなら出て来る訳も無い。
 アキラとフェルノは青ざめると、Nightは口を動かす。

「恐らく、この腹の張りは卵だな。完全にハズレだ」
「は、ハズレ!?」
「そんなぁー」
「うーん。大きさも違うからな。一体今何処に……」

 バシャーン!

 急に川から水飛沫と音が上がった。
 しかも釣り上げたフラッシュカープとはまた違う。もっと大きな水飛沫。
 私達は橋の上から川を覗き込む。残念だけど、魚影だけが優雅に泳いでいて、全て悟った。

「これ、もう一回?」
「ああ、もう一回だな」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 私達はそれから再度釣りを再開した。
 だけどそれ以降、警戒されてしまったみたいで全然当たりは無し。
 私達の二日目は全くの成果無しで終わってしまった。魚が釣れたけど。
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