VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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3ー1:メダルハンターへの道

◇100 熱中症には気を付けて!

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「ああ、暑い……」

 私は心の声が吐露していた。
 Nightのおかげで少しは涼しくなったけれど、日が昇れば昇るほど日射量が増える。
 全身を刺すような暑さが私達の周りを取り囲み、逃げ場を完全に奪っていた。

「水分補給はこまめにしろよ。ポーションは使えないんだ、熱中症にでもなったらOUTだぞ」
「そんなこと言われなくても……」
「大量にあるよー。塩も入ってるよー」
「後、ビタミン剤もね」

 こんなこともあろうかと、準備だけは万端だった。
 最初Nightに言われた時はまさかと思ったけど、本当に使うことになるなんて。
 正直度肝を抜かされたけれど、今となっては救いの手だった。

「それにしても、なにもないね」
「そうだな。モンスターさえ寄り付かない」
「本当、死の行進だよねー」

 フェルノがそれっぽいことを言った。きっと何かのアニメに出て来たんだ。
 引用した台詞が宙をクルクル回り出す。
 今の状況、確かに当てもなく彷徨い続けて、死への行進を着実に続けているとしか思えない。

「そんな碌でもないことを言うな」
「碌でもないことになってるでしょー」
「それはそうだが……絶対になにかある筈だ」

 Nightが強情だった。自分の考えを間違っていると疑わない。
 けれど逸れには私も同意できる気がした。
 何だか胸騒ぎのような、全身を駆ける可能性を感じた。

「ふーん、まあいいけどさー」
「いいんだ」
「いいよー、全然」
「そこは否定して来るタイミングだろ。ボケもツッコミも無いのか」
「あはは、無いよー。だって私、芸人志望じゃないしー」

 完全にフェルノはへし折りに来た。
 笑って全てを誤魔化すと、ノリもツッコミもボケも天然も無い。
 って、私がおかしくなったのかな? 考えるのが辛くなってきて、なんだか思考が逃げたくなる。

(一体どんな意識に切り替えてたんだろう、私。それにしても、本当に暑い)

 直射日光が眩しい。肌を突き刺してきて、ドンドン色黒になる。
 多分、四十℃は超えていること間違いなし。
 フラフラしてしまいそうで、適当に布を覆い被っていても貫光する。

「うーん、視界に変なのが映って来た」
「ん? どうした、羞明でも起きたか?」
「しゅうめい?」
「光が目に入って、強い刺激を受けることだ。視界がボヤけたり、涙が出ることもある。最悪、病気にもなり兼ねないからな。一応注意はしろよ」

 Nightが難しい言葉を使って説明してくれた。
 けれど難しくて簡単な説明しか入って来ない。
 それを聞いた途端、なんだか怖くなってしまった。私は身震いすると、フェルノが似たようなことを言う。

「うーん、私も変だなー」
「お前もか」
「なーにか見えるんだよねー。砂漠の向こう側、こっちに向かって近付いて……」
「なんだと!?」

 私達の進行方向。反対側からも、当然誰かやって来ることはある。
 フェルノが見かけたものが、私が見たものと同じなら納得ができる。
 目を擦って視線を飛ばすと、やっぱり間違っていない。黒っぽい人影が近付いて来ている。

「アレはプレイヤーだな」
「「プレイヤー!?」」

 ここに来てのプレイヤーはマズい。
 流石に戦いになったら相当体に堪える。
 どうせなら戦いたくない。穏便解決を図りたい。そう思ったけれど、相手は一人。
 この暑さもあるから、もしかすると囲えば戦わずに済むかもと、淡い淡い期待を寄せた。

「おい、なんだか様子がおかしくないか」
「えっ、様子が?」
「左右に、特に右へ右へと揺れているぞ」

 確かに人影はドンドン真っ直ぐ歩けなくなっていた。
 フラフラとしながら左右に行ったり来たり。まるで真ん中が分かっていないみたいだ。
 
「アレは……マズいかもしれないぞ」
「「えっ?」」

 Nightがそう呟くと、突然人影は動かなくなる。
 体をよろけさせると、うつ伏せになる形で倒れ込む。
 パタンと立っていた姿が消えると、ピクリとも動かなくなってしまい、状況が深刻だと悟った。

「倒れた!?」
「えっ、ヤバくなーい」
「た、助けに行こう。早く!」

 私は急いで助けに行こうとした。なんだか体がそうさせたんだ。
 けれどNightは手を伸ばして止めようとする。
 きっと罠かもしれないと買い被っているんだろうけど、私はそんなの聞かない。今は助けることが先決だ。

「私は行くよ、二人はどうするの?」
「お前な、少しは罠を警戒して……」
「あはは、行くよ行く行く。ほら、NightもGOGO!」
「お、おい。背中を押すな。分かった、分かったから……うわぁ」

 私が急かすと、Nightを連れてフェルノも急ぐ。
 倒れたプレイヤーを助けるべく傍までダッシュ。
 砂が足下を浚い、動きを鈍らせてしまうも、靴の中に砂が入って熱い中、強引に倒れたプレイヤーに寄り掛かる。

「あの、大丈夫ですか!?」

 倒れていたプレイヤーに声を掛ける。
 うつ伏せだったので、とりあえず体を起こす。
 仰向けにすると、表情が非常に悪い。
 青紫色になっていて、全身から汗が噴き出ている。

「ううっ……」
「よかった、意識はあるみたい」
「それはそうだろ。で、症状は?」
「そんなの分からないけど、とにかく苦しそうだよ」

 倒れていたプレイヤーは少女だ。長い黒髪はポニーテールで結い、触覚部分が金色に輝いている。
 見た目だけではなく格好も特徴的で、日本の武士の様に羽織を着ている。
 腰には日本刀を携えており、足下の草鞋には砂がこびりついていた。

「こんな格好で砂漠に来たからだ。おい、大丈夫か? 返事できるなら何でもいいから声を出せ」
「Night、そんなぶっきら棒な」
「ううっ、あっ……」
「よし、声は出るな。瞼を上げるぞ……同行は開いていないか。体温は……高いな。この汗の量、まあ熱中症だろ」
「「熱中症!?」」

 一番警戒していないとダメな奴だ。
 まさか水分補給をしていなかったのかな? それとも途中で切れちゃったのかな?
 どのみちこのままじゃ大変だ。いくらゲームの中とはいえ、現実にも影響が出るかもしれない。

「Night、なんとかできない?」
「流石に見過ごせないだろ。とりあえず応急処置をするぞ」
「「Nightさん!」」

 Nightはインベントリの中からアイテムとを取り出す。
 そこまでたくさんの相手身は無い。ましてや今イベントでは使えないポーション類で一杯。
 それらを避けつつ、Nightが取り出したアイテムは、何処にでもあるようなものばかりだ。

「まずは簡単なテントを組むぞ。フェルノ、お前立てれるか?」
「えっ、テント? って、パラソルじゃん」
「今は日影が作れればなんでもいい。アキラ、お前は声を掛け続けろ。それと体温を下げるために、服を濡らせ。持って来た水、まだまだ残っているだろ」
「うん。ちょっとごめんね」

 Nightは的確なマニュアル通りの指示を出す。
 その間、Nightはアキラとフェルノに役目を与え、何やらアイテムを作る。
 ポーション類が使えない。逸れなた代用できるものを作る。

「Nightはなに作ってるの?」
「点滴だ」
「「点滴!?」」
「完璧なものじゃない。あくまでも代用品だが、これくらいしかできないからな」
「「いや、これくらいの範囲を超えているような気も……」」
「なにか言ったか?」
「「なんでも無いです」よー」

 アキラとフェルノが驚くも、Nightなら全然できそうだった。
 【ライフ・オブ・メイク】で簡単に作ったペットボトルの中に水筒の水を移し、食塩を少しだけ混ぜる。人体に影響の出ない範囲の点滴を生み出すと、何処から取り出したのか、長めのチューブを用意した。少女の腕に突き刺すと、トクントクンと点滴が体内に入る。
 果たしてこんなこと、資格も無い人が見様見真似でやっていいのかな? ダメだと分かっていながらも、止めることはできなかった。

「ここまでやったんだ。後で礼は弾んで貰うぞ」
「「Nightさーん」」
「冗談だ」

 Nightの台詞が冗談に聞こえてこない。
 無償で助けてあげる気が無いのか、それともコレを使って脅すのか。
 何だかNightっぽいと思うけど、今は必要なものを・必要なことをするだけ。とにかく分かるのは、ゲームの中でも熱中症になるから気を付けないとダメってことだった。
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