VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に！？

◇３１ VS青いゴースト２

　左からアキラが、右からNightが剣を持って走った。
　その間、青白いモンスターは、その場で動くことはなく、アキラの剣が青白いモンスターを切った。しかしダメージはない。
　その様子を見ていたアキラは目を丸くする。
　驚いていた。

「嘘でしょ！」
「こいつも意味はないか」

　Nightは余計に思考を割いた。
　すると、自分の攻撃も効かないと即座に感づき、剣を納める。

「Night、さっきこいつも意味ないって？」
「この剣には、アンデット系に聖水がなくてもダメージを与えられる。だが、聖水の浄化効果が効かないとなると、こいつも意味はないか、ってことだ」
「じゃあ如何するの？　倒せないよ」
「一旦退くしかないな」

　Nightの判断はかなり高速化していた。
　しかしアキラたちが動いた瞬間、光弾が飛んできて、アキラたちは道を塞がれる。逃げられないらしい。
　私達は逃げられない。
　観察眼を広げる二人だったが、モンスターはその場からゆっくり動いて来る。足があるから、ゴーストではないにかと思えば、攻撃はすり抜けていた。

「ど、如何しよう」
「これはマズいな。完全に逃げ道がない」

　Nightは諦めていた。いや、策を練っていた。言葉巧みにアキラを惑わし、思考を悟らせない。時には仲間すら欺く。アニメとかでもそう言うキャラはいる。
　かっこいい。アキラは意図を読んでいた。
　馬鹿ではい。足止めができないならどうするのか？　そんなの賭けてみるしかない。
　【キメラハント】を使ってみる。

「Night、ちょっと試していい？」
「何をだ」
「私のスキル。固有スキルだよ」

　わざわざ隠したりはしない。
　そんなことをしなくても、アキラは信用していたからだ。

「行くよ、【キメラハント：半液状化】！」

　スライムみたいに半液状化した。
　その姿を見たNightは、「半液状化？　キメラハント？」と口にする。
　だけどアキラは気にせずに、青白いモンスターに攻撃しに向かった。

「触れないんだったら、触らなかったらいいんだよ！」

　残念なことに物理攻撃は効かないらしい。
　そこで、アキラがとったのは、攻撃しない方法だった。つまりどういうことか、Nightは何かを察したみたいで、聖水の瓶を投げつける。

「アキラ！」
「ありがと、Night」

　聖水の瓶の中身が零れる。
　スライムみたいになっているから、ローションみたいに吸い付く。しかし、これだけじゃない。攻撃しないから、向こうは敵対してこないし、その間にアキラは距離を詰めるが、青白いモンスターにはそもそも触れることすらできなかった。

「これでも駄目なの！」
「こいつはゴースト系のモンスターンのはずだ。触れられなくても、なにか何かトリガーがあるはず。つまりこの間とは違う何か……なにか？」

　Nightは何かを察した。
　それはアキラの存在。つまりこのモンスターはアキラがいるからいるんだ。でも何故？　その理由はアキラにすらわからない。
　しかしモンスターは、何かを伝えたいのか、アキラが近づくと、ノイズ混じりに何かを口にした。

「返して」
「返して？」

　リフレインした。
　なにを返せばいいのかわからないアキラは、スライムみたいな姿を解いて、呆然としてしまった。