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◇67 海は怖い

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 次の日。
 三人は、森にはいかなかった。
 しかしそれもそのはずで、あの森に行っても、プレイヤーが多すぎて、どのみちメダルを集めることはできなかった。

「うわぁー!」
「静かな海だねー」

 アキラとフェルノは盛り上がっていた。
 目の前に広がっているのは、穏やかな海だった。
 白波も立たず、白い砂浜と深い青の海が広がっていた。とっても綺麗だった。

「ここは静かだな。ごみも落ちていない」
「まるでプライベートビーチだね!」
「ん? プライベートビーチでもごみは落ちているものだぞ。海流の流れに乗って自然にやって来るから、人為的に取り除かない限り、増え続ける」
「そう言うこと言わなくてもいいよ」
「だが訂正はしておく必要があるだろ」
「真面目だねー」

 フェルノがぬるめにツッコみを入れた。
 それにしても綺麗な海に砂浜だ。
 こんなに澄んでいるのに、他に誰もいなかった。それもそのはず、ここはギルドホームがある島……ではなく、普通に人がいない海だった。

「でも如何して人がいないのかな?」
「この海は、かなり危険だからな。見てみろ、ちょうど波が上がった辺りだ」
「それって、沖の方だよね? よく見えないよ」
「アキラはそれを使ってみたらー?」

 Nightは指を差した。
 すると、その場所から不自然な白波が立った。
 けれど何がいるのか、貰った単眼モノクルを使って、覗き込むと、変な鋭い魚が飛んだ。

「あれってなに?」
「あれはダツだな。魚ではなく、普通に考えればモンスターだ」
「ダツなのに、モンスターなの?」

 Nightに尋ねた。
 するとNightは表情を歪めた。

「いいか、絶対に光物を見せるなよ」
「如何して?」
「メダルも諦めろ。もしあれが本当にダツをモチーフにしているのなら、その習性も踏襲されていて、おかしくはない」

 確かにダツが危険なことはテレビでもやっていた。
 確かとんでもないスピードだとか。
 それから恐ろしさを教えてくれた。水中眼鏡すら貫通するらしい。

「と言うわけで、海には近づくなよ。近づくなら、向こうからにしろ」

 Nightはそう言った。
 指さした先を見ると、洞窟がある方だった。
 でも如何して? 海に入ったら、いけないんじゃないのかな。

「ねえねえNight。海に入ったらいけないんじゃないのかなー? だってさー、海は危険なんでしょー?」
「いや、危険なのは中海以上だ」
「どういうこと?」

 Nightは調べてきてくれていた。
 するとこの砂浜を中心とした海は、プレイヤーやNPCの間では、危険と一律に言われているらしいが、それは間違いで、この海は下海・中海・上海に分けられている。さっき見えたダツは中海と下海の中間地点で、行き方を変えれば、如何にでもなる。
 それがわかれば話は早い。つまり、安全な航路を選べばいいんだ。

「それにこの海に入らずとも、ギルドホームの海から入ればいいからな」
「船も持ってないもんねー」
「流石に操縦はできないからな」
「仕方ないよー。だって、そんなの運転できないしさー」

 この時代、車もバイクも自動運転。
 そもそも自家用車の必要性は皆無で、自動車学校も自動車メーカーもほとんどなくなった。
 時代の流れは怖いものだと、テレビでも評論家が言っていた。

「なんだか、凄い時代だよね。便利だけど」
「女性が総理大臣になれる時代だ。無理もない。男尊女卑は、日本からは消えた」
「そういう時代背景はさ、歴史の授業だけにしてよねー」

 フェルノが唸った。
 二人はフェルノに謝った後、海に入るのは諦めて、遠回りをした。
 そこで目指したのは、目の前の洞窟で、ごつごつとした岩場はなく、砂浜の中にどんと構えていた。
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