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◇96 VSニードル・スクオロル
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貰った地図を頼りに歩いてみた。
深い森だ。外から見た時と違って、中の様子は明らかに広い。
私は道に迷っていた。
「如何しよう、本当にわからない」
地図から顔を上げた。
自分が今何処にいるのかもわからなくなる。
霧が出ているわけでも、磁力がおかしいわけでもないのに、目印が付けられないだけでこんなに困るなんて。
「やっぱりパンくずでも落とした方がよかったかな?」
昔のアニメとかで合ったシーンだ。
でもパンくずなんて落として目印にしても、多分破壊負荷エフェクトがかかっているこの森には効かないと思う。
アキラが歩く度に背後で音がした。
自分の足跡が消えている。
「ここって実は迷いの森だよね?」
霊龍の森の名前が胡散臭くなってきた。
実はここは別の森で、ただ迷っているだけとか。
もしかしたら、この森を抜けた者にだけ踏み歩くことが許される真の霊龍の森があるなんて、そんな匂いがプンプンする。
「って、まさかね。とにかく道に迷わないようにしないと帰れなくなっちゃう」
道に迷うのだけはごめんだ。
柔らかいリアルな髪質の地毛を触る。
桜色で綺麗だった。
「うーん、せめて何かアクションがあればいいんだけど」
腕組をして考え込む。
そんな中、背後から気配を感じ取った。
フェルノと同じ、慣れた動きから来るもので、即座に振り返る。
「なんだ気のせいか」
背後には何もいない。
だけどガサガサと草木が揺れる音がする。
不安にさせる音のはずだけど、私は意識を切り替えてじっと草木の中を凝視した。
「あれは……リス?」
すると近くの気の葉っぱの影に茶色い毛の小さな小動物がいた。
体に変な穴が空いているけれど、特徴的な尻尾でリスだとわかる。
友好的なのか、それとも敵対しているのかわからない。
だけどアキラが近づいた瞬間、リスが発狂して襲い掛かって来た。
「うわぁ急に、痛った!」
頬が引き裂かれた。
血のようなエフェクトが少しだけ出た後、アキラのHPが削れる。
緑色のHPバーが若干削れていたんだ。
何があったのか、頬の感触を確かめつつリスの方を見た。すると、全身から針が出ている。
「全身から針って、ハリネズミじゃないのに」
明らかに友好的ではない。
だけどこの違和感は何だろう。倒してはいけない気がする。
アキラは何処からか来る不思議な気持ちに心を突き動かされていた。
だから……
「よくわからないけど、今回は【キメラハント】なし」
スキルを使わないことにした。
【キメラハント】と使わないから体がいつもよりも軽い。
気のせいかもしれないが、目の前のリス、ニードル・スクオロルも迷っているような動きだ。
だけどやっぱりモンスターなのか、自衛のために針を展開して突っ込んでくる。
「いきなり突進って、体格も大きくないからかわせるよ」
ヒョイっと身を逸らしてアキラは避けた。
ニードルを展開したまま今度は右から転がって飛んでくる。
「いや、ハリネズミじゃないんだから!」
軽快なツッコみを混ぜた。
体格差は圧倒的。だけどリスは色々な形で襲ってくる。
その全てをアキラは軽い身のこなしで避け続けた。
フェルノとの中学時代で反射神経と基礎体力は向上しているから楽々なんだ。
「まだ来るのかな? ……あれ」
10分以上の攻防が続いた。
汗もそんなに掻いていないアキラはリスの動きを先読みしようと視線を配ると、仰向けで倒れていた。
如何やらスタミナ切れみたいだ。
「体格差でスタミナが切れちゃったんだ。でも凄いタフネスだったよ」
避けるだけの練習と思えばなんてことない。
母親の修業のことを思い出すアキラは、しゃがみ込んでリスが起き上がるのを待った。
ニードルは展開していないから完全にリスなんだけど、白いお腹がモフモフしていて可愛かったので微笑ましく笑うんだ。
深い森だ。外から見た時と違って、中の様子は明らかに広い。
私は道に迷っていた。
「如何しよう、本当にわからない」
地図から顔を上げた。
自分が今何処にいるのかもわからなくなる。
霧が出ているわけでも、磁力がおかしいわけでもないのに、目印が付けられないだけでこんなに困るなんて。
「やっぱりパンくずでも落とした方がよかったかな?」
昔のアニメとかで合ったシーンだ。
でもパンくずなんて落として目印にしても、多分破壊負荷エフェクトがかかっているこの森には効かないと思う。
アキラが歩く度に背後で音がした。
自分の足跡が消えている。
「ここって実は迷いの森だよね?」
霊龍の森の名前が胡散臭くなってきた。
実はここは別の森で、ただ迷っているだけとか。
もしかしたら、この森を抜けた者にだけ踏み歩くことが許される真の霊龍の森があるなんて、そんな匂いがプンプンする。
「って、まさかね。とにかく道に迷わないようにしないと帰れなくなっちゃう」
道に迷うのだけはごめんだ。
柔らかいリアルな髪質の地毛を触る。
桜色で綺麗だった。
「うーん、せめて何かアクションがあればいいんだけど」
腕組をして考え込む。
そんな中、背後から気配を感じ取った。
フェルノと同じ、慣れた動きから来るもので、即座に振り返る。
「なんだ気のせいか」
背後には何もいない。
だけどガサガサと草木が揺れる音がする。
不安にさせる音のはずだけど、私は意識を切り替えてじっと草木の中を凝視した。
「あれは……リス?」
すると近くの気の葉っぱの影に茶色い毛の小さな小動物がいた。
体に変な穴が空いているけれど、特徴的な尻尾でリスだとわかる。
友好的なのか、それとも敵対しているのかわからない。
だけどアキラが近づいた瞬間、リスが発狂して襲い掛かって来た。
「うわぁ急に、痛った!」
頬が引き裂かれた。
血のようなエフェクトが少しだけ出た後、アキラのHPが削れる。
緑色のHPバーが若干削れていたんだ。
何があったのか、頬の感触を確かめつつリスの方を見た。すると、全身から針が出ている。
「全身から針って、ハリネズミじゃないのに」
明らかに友好的ではない。
だけどこの違和感は何だろう。倒してはいけない気がする。
アキラは何処からか来る不思議な気持ちに心を突き動かされていた。
だから……
「よくわからないけど、今回は【キメラハント】なし」
スキルを使わないことにした。
【キメラハント】と使わないから体がいつもよりも軽い。
気のせいかもしれないが、目の前のリス、ニードル・スクオロルも迷っているような動きだ。
だけどやっぱりモンスターなのか、自衛のために針を展開して突っ込んでくる。
「いきなり突進って、体格も大きくないからかわせるよ」
ヒョイっと身を逸らしてアキラは避けた。
ニードルを展開したまま今度は右から転がって飛んでくる。
「いや、ハリネズミじゃないんだから!」
軽快なツッコみを混ぜた。
体格差は圧倒的。だけどリスは色々な形で襲ってくる。
その全てをアキラは軽い身のこなしで避け続けた。
フェルノとの中学時代で反射神経と基礎体力は向上しているから楽々なんだ。
「まだ来るのかな? ……あれ」
10分以上の攻防が続いた。
汗もそんなに掻いていないアキラはリスの動きを先読みしようと視線を配ると、仰向けで倒れていた。
如何やらスタミナ切れみたいだ。
「体格差でスタミナが切れちゃったんだ。でも凄いタフネスだったよ」
避けるだけの練習と思えばなんてことない。
母親の修業のことを思い出すアキラは、しゃがみ込んでリスが起き上がるのを待った。
ニードルは展開していないから完全にリスなんだけど、白いお腹がモフモフしていて可愛かったので微笑ましく笑うんだ。
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