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◇106 謎の石板
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モンスターの姿を見つけ、ここがバグだらけの島なのではないかと憶測が立った中、アキラたちはもう少しだけ森の奥地に踏み込む。
小川をゴールにするにはまだまだ探索が足りない。そんな気がした。
そこでレベル差のことも考えて、周りに警戒しながら進んでいくと少し開けた場所に出た。
「うわぁ、ここ広いね」
アキラは突然森の中に開けた空間が現れたので、声を上げた。
雷斬も刀の鞘に指を掛けていたが軽く離す。
ベルも視線と弓を下ろしていた。
「ここ、変わっているわね。こんなに何もない森なのにぽっかりと開いているなんて」
「確かに不思議ですが。私はこの静けさも気になります」
「確かに何にも聞こえないね」
雷斬の言う通りだった。
この場所は他とは一線を画すような空気を感じる。
そのことに気が付いたのは、さっきまで少なくとも虫の鳴く声が聞こえていたはずなのにここに来ると一切の雑音が響かなくなる。
不思議と空気が均一化していて、リアルでもゲームでもない気がした。
「ねぇ、あれ見てよ」
「どうしたの、ベル?」
ベルが指差した方に視線を移動した。
すると明らかに人の手が加えられたような石板が地面に置かれている。
不自然なほどその場に溶け込めておらず、まるで誰かに見つけてもらうようにしていたような配置だ。
アキラ達は恐る恐る近づくと、石板を覗き込んだ。
「何って書いてあるのかな?」
「読めませんね。日本語でも英語でもないような気がします」
「昔の言葉でも古いヒエログリフ的なものでもない気がするわ。数字のようなら列は読めるけど、これって彫ってあるのかしらね?」
ベルが軽く石板をなぞった。
どうやら砂が入り込んでいるみたいで、ところどころが読めなくなっている。
そこでインベントリの中から小さな箒を取り出すと、軽く砂を払い落してみた。
これで少しは読めるかと思ったけれど、全くダメだった。
「うーん、読めないね」
「モールス信号のようでもないです。これは誰かが意図してここに記したものなのでしょうか?」
「当たり前よ。でないと、こんな人為的なものが置かれるはずがないわ」
雷斬とベルは言い合いになった。
確かに意味がわからない。ここまでの急展開もそうだが、この石板には何か意味があるのではないだろうか。
アキラは腕組をしながらそう考えこむ。
しかし文字が読めない上に、触っても……
(あれ?)
アキラは思考が停止した。
急に体が軽くなったと思えば、文字をなぞればなぞるほど頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
言葉の意味はわからない。だけど不可解に思うのが体の異変だった。
「どうしたのアキラ?」
ベルが声を掛けた。
しかしアキラには届いていない。何か言っているのは聞こえていたが、話しが入ってこなかった。
指先は丁寧に文字をなぞりながら、その意識はどこか遠くに飛んでいく。
不完全な意識の中で、アキラは雷斬でもベルでもない声が聞こえてきた。
「やっと見つけましたね。意外と早かったです」
「えっ?」
アキラは無意識の中で声の便りを聞いた。
頭の中がノイズ混じりにぐちゃぐちゃになっていて、考えるのも億劫になる。
しかし声はアキラの体調に気が付くと、すぐに波長を合わせた。
「まだ完全ではないのですね。でも少しは話せるようで安心しました」
声の主はアキラにだけ語り掛ける。
もちろんアキラにしか聞こえていない。
ここでアキラに掛けられた伏線のスキルが火を噴く。
「スキル【ユニゾンハート】を使ってください。使うのは、【ファーストコール】で大丈夫です」
どうしてアキラのスキルを知っているのか。
この時、考えることはできずノイズを消すことだけに意識を巡らせて、自然と体が無意識に使っていた。
「【ユニゾンハート】:【ファーストコール】!」
小川をゴールにするにはまだまだ探索が足りない。そんな気がした。
そこでレベル差のことも考えて、周りに警戒しながら進んでいくと少し開けた場所に出た。
「うわぁ、ここ広いね」
アキラは突然森の中に開けた空間が現れたので、声を上げた。
雷斬も刀の鞘に指を掛けていたが軽く離す。
ベルも視線と弓を下ろしていた。
「ここ、変わっているわね。こんなに何もない森なのにぽっかりと開いているなんて」
「確かに不思議ですが。私はこの静けさも気になります」
「確かに何にも聞こえないね」
雷斬の言う通りだった。
この場所は他とは一線を画すような空気を感じる。
そのことに気が付いたのは、さっきまで少なくとも虫の鳴く声が聞こえていたはずなのにここに来ると一切の雑音が響かなくなる。
不思議と空気が均一化していて、リアルでもゲームでもない気がした。
「ねぇ、あれ見てよ」
「どうしたの、ベル?」
ベルが指差した方に視線を移動した。
すると明らかに人の手が加えられたような石板が地面に置かれている。
不自然なほどその場に溶け込めておらず、まるで誰かに見つけてもらうようにしていたような配置だ。
アキラ達は恐る恐る近づくと、石板を覗き込んだ。
「何って書いてあるのかな?」
「読めませんね。日本語でも英語でもないような気がします」
「昔の言葉でも古いヒエログリフ的なものでもない気がするわ。数字のようなら列は読めるけど、これって彫ってあるのかしらね?」
ベルが軽く石板をなぞった。
どうやら砂が入り込んでいるみたいで、ところどころが読めなくなっている。
そこでインベントリの中から小さな箒を取り出すと、軽く砂を払い落してみた。
これで少しは読めるかと思ったけれど、全くダメだった。
「うーん、読めないね」
「モールス信号のようでもないです。これは誰かが意図してここに記したものなのでしょうか?」
「当たり前よ。でないと、こんな人為的なものが置かれるはずがないわ」
雷斬とベルは言い合いになった。
確かに意味がわからない。ここまでの急展開もそうだが、この石板には何か意味があるのではないだろうか。
アキラは腕組をしながらそう考えこむ。
しかし文字が読めない上に、触っても……
(あれ?)
アキラは思考が停止した。
急に体が軽くなったと思えば、文字をなぞればなぞるほど頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。
言葉の意味はわからない。だけど不可解に思うのが体の異変だった。
「どうしたのアキラ?」
ベルが声を掛けた。
しかしアキラには届いていない。何か言っているのは聞こえていたが、話しが入ってこなかった。
指先は丁寧に文字をなぞりながら、その意識はどこか遠くに飛んでいく。
不完全な意識の中で、アキラは雷斬でもベルでもない声が聞こえてきた。
「やっと見つけましたね。意外と早かったです」
「えっ?」
アキラは無意識の中で声の便りを聞いた。
頭の中がノイズ混じりにぐちゃぐちゃになっていて、考えるのも億劫になる。
しかし声はアキラの体調に気が付くと、すぐに波長を合わせた。
「まだ完全ではないのですね。でも少しは話せるようで安心しました」
声の主はアキラにだけ語り掛ける。
もちろんアキラにしか聞こえていない。
ここでアキラに掛けられた伏線のスキルが火を噴く。
「スキル【ユニゾンハート】を使ってください。使うのは、【ファーストコール】で大丈夫です」
どうしてアキラのスキルを知っているのか。
この時、考えることはできずノイズを消すことだけに意識を巡らせて、自然と体が無意識に使っていた。
「【ユニゾンハート】:【ファーストコール】!」
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