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◇261 完成率69パーセント
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いよいよクリスマスイベントまで一週間を切った。
現実の空もかなり澄み、寒くなって来た。
ログインしたアキラはスタットの街並みを見て回った。
クリスマスが近づいているので、出店の準備も盛大に始まっていると思った。
けれどアキラが見たのはあまり変わっていない景色だった。
首を捻り、「ん?」と声を出してしまった。
「あれ? 何も変わってない?」
アキラが先週見た時とほとんど変わっていなかった。
もちろん活気はあるのだが、何か足りない気がした。
何かが足りていないから脳が認識できていなかった。
「クリスマスツリー?」
「そうだねー。クリスマスツリー、先週から飾り付けもなーんにも変わってない」
確かに飾り付けは何も変化していなかった。
近づいてみるとよく分かるが、まだまだ飾れそうなスペースが空いていた。
「うわぁ、アキラ見てよコレ!」
「如何したの?」
フェルノに言われたので、クリスマスツリーの隣に設置された看板を見た。
木でできた手作り看板で、文字がデジタルで刻まれていた。
『完成率:69%』
何の完成率が六九パーセントなのか。
アキラとフェルノは一瞬分からないふりをした。
しかしすぐに察した。
このクリスマスツリーの完成具合が中途半端なようだ。
「クリスマスツリーが完成してないね。ちょっと寂しい」
「そうだねー。っていうか、上の星無くない?」
「確かに! もしかしてこれもクエストなのかな?」
パンフレットを開いてみると、何の記載もなかった。
けれどクリスマスツリーのてっぺんに飾るための星は何処から入手すればいいのか分からない。
気が付くと、周りでも似たようなことを話していた。
パンフレットを見ながらクリスマスツリーに歪めた表情を浮かべていた。
「もしかしてこれ、シークレットクエストなんじゃね?」
「マジかよ。そんなの見つからねえよ」
男が二人シークレットクエストの可能性を示唆した。
それから反対側では魔法使いのコスプレをした少女が二人で話していた。
「コレって完成しないとダメなのかしら?」
「そうっぽくない?」
アキラたちもそんな気がした。
今回の運営はかなりプレイヤーを試している様子で、一体何にを手付けたら良いのか分からなかった。
「如何するアキラ?」
「如何するって言われても上の星は分からないから……適当に飾りでも探しに行こっか」
アキラはフェルノに提案した。
パンフレットを見ると、貝殻を集めれば飾り付けになるようだ。
アキラとフェルノは揃って海に行ってみることにした。
ちょうど前に夏に行った海が近かった。
「そうだ。みんなで探したら早いかも……えーっと、ちょうど雷斬たちがログインしてるね。誘ってみよっか」
アキラは早速メッセージを送り集合を呼び掛けた。
こうして四人で貝殻を集めに向かった。
急に呼び出された雷斬とベルが先に集合していた。
雷斬はいつも通り平常な様子だが、ベルは少しだけ怒った。
「急に呼び出して何?」
「ごめんね。でももう少しでクリスマスになっちゃうから……ねっ?」
アキラは手を合わせて可愛らしく謝った。
いつもは見せない表情に「あっ……あざとくしなくてもいいのに」と微妙な表情を浮かべた。
「構いませんよ。ちょうどログインしたばかりでしたので」
「立て込んでなくてよかったよね。にしてもさ、Night最近ログインしてなくない?」
「そうかも。何かあったのかな?」
柴刈りに行って以来、Nightに会っていなかった。
メッセージを送っても少しレスポンスが遅かった。
いつものNightらしくないので、アキラも気になっていた。
「でも気にしても仕方ないね」
「おっ、得意のパターンキタァ!」
フェルノはアキラが意識を切り替えたのでテンションを上げた。
意識の切り替えで気分を上げると、みんなをまとめて海岸に向かった。
砂浜で貝殻を探すだけの簡単なクエストだった。
「……とか思ってたんだけど」
「全然落ちてないね」
砂浜にやって来ると貝殻が全然落ちていなかった。
如何して落ちていないのか、アキラは首を捻った。
「少しは落ちて入りみたいだけど、この辺の貝殻はもう取られた後みたいね」
「場所を変えますか?」
雷斬が提案した。
しかしせっかく来たのに探さないで帰るのは完全に無駄足になってしまうと思ったので、アキラは少しだけ粘ることにした。
「ちょっとだけ探してみようよ。もしかしてらまだ誰も見つけていない貝殻が見つかるかもしれないよ」
「あはは、冬の海に入ってみるとか?」
「それだけは絶対にごめんよ。わざわざ濡れるために来たわけじゃないでしょ?」
ベルはフェルノの冗談に真っ向から食らいついた。
しかしフェルノはフェルノで本気だったようだ。
「ちょっと潜るだけなのに」
「風邪引いちゃうでしょ? リアルでもこっちでも体調の変化は敏感なんだから。多少はリアルの自分にも影響が出るのよ」
悪い思い込みでリアルで風邪を引いても困るのだ。
フェルノはベルに説得されて海に潜るのは止めたが、貝殻集めには協力的に接してくれた。
アキラたちは貝殻を集めることにした。
本当に地味な作業だった。
現実の空もかなり澄み、寒くなって来た。
ログインしたアキラはスタットの街並みを見て回った。
クリスマスが近づいているので、出店の準備も盛大に始まっていると思った。
けれどアキラが見たのはあまり変わっていない景色だった。
首を捻り、「ん?」と声を出してしまった。
「あれ? 何も変わってない?」
アキラが先週見た時とほとんど変わっていなかった。
もちろん活気はあるのだが、何か足りない気がした。
何かが足りていないから脳が認識できていなかった。
「クリスマスツリー?」
「そうだねー。クリスマスツリー、先週から飾り付けもなーんにも変わってない」
確かに飾り付けは何も変化していなかった。
近づいてみるとよく分かるが、まだまだ飾れそうなスペースが空いていた。
「うわぁ、アキラ見てよコレ!」
「如何したの?」
フェルノに言われたので、クリスマスツリーの隣に設置された看板を見た。
木でできた手作り看板で、文字がデジタルで刻まれていた。
『完成率:69%』
何の完成率が六九パーセントなのか。
アキラとフェルノは一瞬分からないふりをした。
しかしすぐに察した。
このクリスマスツリーの完成具合が中途半端なようだ。
「クリスマスツリーが完成してないね。ちょっと寂しい」
「そうだねー。っていうか、上の星無くない?」
「確かに! もしかしてこれもクエストなのかな?」
パンフレットを開いてみると、何の記載もなかった。
けれどクリスマスツリーのてっぺんに飾るための星は何処から入手すればいいのか分からない。
気が付くと、周りでも似たようなことを話していた。
パンフレットを見ながらクリスマスツリーに歪めた表情を浮かべていた。
「もしかしてこれ、シークレットクエストなんじゃね?」
「マジかよ。そんなの見つからねえよ」
男が二人シークレットクエストの可能性を示唆した。
それから反対側では魔法使いのコスプレをした少女が二人で話していた。
「コレって完成しないとダメなのかしら?」
「そうっぽくない?」
アキラたちもそんな気がした。
今回の運営はかなりプレイヤーを試している様子で、一体何にを手付けたら良いのか分からなかった。
「如何するアキラ?」
「如何するって言われても上の星は分からないから……適当に飾りでも探しに行こっか」
アキラはフェルノに提案した。
パンフレットを見ると、貝殻を集めれば飾り付けになるようだ。
アキラとフェルノは揃って海に行ってみることにした。
ちょうど前に夏に行った海が近かった。
「そうだ。みんなで探したら早いかも……えーっと、ちょうど雷斬たちがログインしてるね。誘ってみよっか」
アキラは早速メッセージを送り集合を呼び掛けた。
こうして四人で貝殻を集めに向かった。
急に呼び出された雷斬とベルが先に集合していた。
雷斬はいつも通り平常な様子だが、ベルは少しだけ怒った。
「急に呼び出して何?」
「ごめんね。でももう少しでクリスマスになっちゃうから……ねっ?」
アキラは手を合わせて可愛らしく謝った。
いつもは見せない表情に「あっ……あざとくしなくてもいいのに」と微妙な表情を浮かべた。
「構いませんよ。ちょうどログインしたばかりでしたので」
「立て込んでなくてよかったよね。にしてもさ、Night最近ログインしてなくない?」
「そうかも。何かあったのかな?」
柴刈りに行って以来、Nightに会っていなかった。
メッセージを送っても少しレスポンスが遅かった。
いつものNightらしくないので、アキラも気になっていた。
「でも気にしても仕方ないね」
「おっ、得意のパターンキタァ!」
フェルノはアキラが意識を切り替えたのでテンションを上げた。
意識の切り替えで気分を上げると、みんなをまとめて海岸に向かった。
砂浜で貝殻を探すだけの簡単なクエストだった。
「……とか思ってたんだけど」
「全然落ちてないね」
砂浜にやって来ると貝殻が全然落ちていなかった。
如何して落ちていないのか、アキラは首を捻った。
「少しは落ちて入りみたいだけど、この辺の貝殻はもう取られた後みたいね」
「場所を変えますか?」
雷斬が提案した。
しかしせっかく来たのに探さないで帰るのは完全に無駄足になってしまうと思ったので、アキラは少しだけ粘ることにした。
「ちょっとだけ探してみようよ。もしかしてらまだ誰も見つけていない貝殻が見つかるかもしれないよ」
「あはは、冬の海に入ってみるとか?」
「それだけは絶対にごめんよ。わざわざ濡れるために来たわけじゃないでしょ?」
ベルはフェルノの冗談に真っ向から食らいついた。
しかしフェルノはフェルノで本気だったようだ。
「ちょっと潜るだけなのに」
「風邪引いちゃうでしょ? リアルでもこっちでも体調の変化は敏感なんだから。多少はリアルの自分にも影響が出るのよ」
悪い思い込みでリアルで風邪を引いても困るのだ。
フェルノはベルに説得されて海に潜るのは止めたが、貝殻集めには協力的に接してくれた。
アキラたちは貝殻を集めることにした。
本当に地味な作業だった。
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