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◇327 珊瑚ってこの界隈だと凄い有名人?
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烈火と蒼伊が戻ってくるまでまた暇になった。
ボーッと行き交う人たちを見ていると、遠くの方からガラガラと何かを回す音とカランカラーンと甲高い手持ちのベルが鳴る音が聞こえる。
オープン初日だからかもしれないけれど、イベントをやっている匂いがする。
「イベントって何をしているのかな? そう言えば、今日限定のキットが売ってるって話だったけど……烈火はちゃんと買えたのかな?」
明輝は首を捻る。
すると人混みの中から何か出て来る様子で、前後で隙間が生まれた。
大きな紙袋を持っている上に、何故か明輝の方に歩いて来るので不思議に思うも、顔を見てみると烈火だった。
「あっ、烈火だ。おーい、こっちこっち」
烈火に手を振って呼び寄せた。
キョロキョロ辺りを見回して明輝の姿を見つけると、烈火は明輝の下に駆け寄る。
「明輝お持たせ! 待った?」
「ううん。それより凄い量だね」
「えへへ。凄いでしょ……ほら、見てよ。新作キットに限定キット。ちゃんと買えたよー!」
「良かったね。それじゃあ無事に欲しいものは買えたんだ。えーっと、大きさ違うよ?」
明輝は紙袋の中を覗き込む。
何故か箱の大きさが全然違っていて不思議に思うものの、その分値段も割高でパーツ数も違うようだ。
「当たり前だよ。クオリティとパーツ数が全然だよー」
「大きさも違うってこと?」
「そうそう。こっちは百四十四分の一で、こっちは百分の一。こっちはそもそもキットが違うけど、加工が若干異なってるから見栄えも大きく変わるんだー。面白いよねー」
「そ、そう何だ。でもちょっと分かるかも」
烈火は明輝の反応の差に驚きを隠せない。
お店に入るまではつまらなそうにしていたのに、今は何故か楽しそう。
何かあったのかなと思い明輝に尋ねると、明輝も烈火にさっきまでのことを説明した。
「えっとね、珊瑚に教えて貰ったんだ」
「珊瑚? それって誰?」
「宮下珊瑚って子なんだけど、コーラルって名前でプロモデラーとか言ってたよ?」
「はっ!?」
烈火が口をあんぐり開けた。
瞬きをする暇もなく固まってしまうので、明輝は何かおかしなことでも言っちゃったのかなと首を捻る。
すると烈火は自分が固まっていたことに気が付き、「ちょ、ちょっと待ってよー。明輝、その珊瑚ってどんな感じの子だった? 私達と同い年くらい?」と尋ねる。
「うん。私たちと一つか二つしか変わらないと思うよ」
「見た目は?」
「見た目? えっとね、ピンクと水色のツインテールで、白いリボンで結んでたよ」
「その見た目って……嘘っ、本人だよ!?」
何故か烈火は興奮……というよりも驚いていた。
明輝には全くと言っていいほど訳が分からず、「如何したの?」と繰り返し聞くことしかできない。
「私、何か変なことでも言ったかな?」
「変なことは言ってないけど、明輝それこの界隈だと凄い人だよ」
「す、凄い人って?」
「宮下珊瑚って名前は本名だとしても、コーラルでプロモデラーは有名なんだよー。去年のプラモデル世界大会で準優勝、一昨年に至っては優勝の実力者だよ?」
「そ、そうなの?」
そもそもそんな大会があったことが初耳だった。
明輝は驚いてしまいたどたどしい返事しかできないけれど、烈火の驚きは炎の猛きを思わせて留まることを知らない。
「本当、明輝って運良いよね」
「幸運のパラメータだけは高いから」
「運も実力の内って言うから良いんだよー。ってそれよりさ、明輝も何か買うんでしょ? 流石にここまで来たら限定デカールとか……興味ないよね」
「買うよ」
烈火は驚いていた。まさか明輝がプラモデルに興味を抱くなんて想像もしていなかった。
珊瑚に勧められたのもあるけれど、一人で組むんじゃなくてみんなで組むところに惹かれた。
「烈火と蒼伊も手伝ってくれる?」
「もっちろん。明輝は道具とか全然持って無さそうだし、蒼伊に借りに行こうよ」
「うん。でも何が良いかな?」
「好きなのでいいんじゃない?」
まあそうだとは思った回答が返る。
明輝は烈火と一緒にプラモデルのコーナーに向かうとたくさんのキットが並んでいた。
目が回りそうな白箱の数々に圧倒されつつも、さっき気に入った主人公機を手に取る。
「おっ、サンライズ・ウィング!? 結構王道だけど、そっちなんだ」
「珊瑚と同じことを言うんだね」
「だってライバル機の方が人気高いんだよ? ……あっ、明輝は主人公を全うに応援するタイプだっけ」
「むっ……何だか悪く言われているみたいに聞こえるけど」
「いやいや、主人公よりもその周りが好きな人は多いから。あくまでも個人の意見だけどねー」
自分で言っておいて自分で逃げ道を用意した。
万が一の時は最短距離で逃げ出せるように準備する烈火を見て、「別に良いでしょ?と食い気味にならない寸前で言葉を交わし、明輝も長蛇の列の中に飛び込むのだった。
ボーッと行き交う人たちを見ていると、遠くの方からガラガラと何かを回す音とカランカラーンと甲高い手持ちのベルが鳴る音が聞こえる。
オープン初日だからかもしれないけれど、イベントをやっている匂いがする。
「イベントって何をしているのかな? そう言えば、今日限定のキットが売ってるって話だったけど……烈火はちゃんと買えたのかな?」
明輝は首を捻る。
すると人混みの中から何か出て来る様子で、前後で隙間が生まれた。
大きな紙袋を持っている上に、何故か明輝の方に歩いて来るので不思議に思うも、顔を見てみると烈火だった。
「あっ、烈火だ。おーい、こっちこっち」
烈火に手を振って呼び寄せた。
キョロキョロ辺りを見回して明輝の姿を見つけると、烈火は明輝の下に駆け寄る。
「明輝お持たせ! 待った?」
「ううん。それより凄い量だね」
「えへへ。凄いでしょ……ほら、見てよ。新作キットに限定キット。ちゃんと買えたよー!」
「良かったね。それじゃあ無事に欲しいものは買えたんだ。えーっと、大きさ違うよ?」
明輝は紙袋の中を覗き込む。
何故か箱の大きさが全然違っていて不思議に思うものの、その分値段も割高でパーツ数も違うようだ。
「当たり前だよ。クオリティとパーツ数が全然だよー」
「大きさも違うってこと?」
「そうそう。こっちは百四十四分の一で、こっちは百分の一。こっちはそもそもキットが違うけど、加工が若干異なってるから見栄えも大きく変わるんだー。面白いよねー」
「そ、そう何だ。でもちょっと分かるかも」
烈火は明輝の反応の差に驚きを隠せない。
お店に入るまではつまらなそうにしていたのに、今は何故か楽しそう。
何かあったのかなと思い明輝に尋ねると、明輝も烈火にさっきまでのことを説明した。
「えっとね、珊瑚に教えて貰ったんだ」
「珊瑚? それって誰?」
「宮下珊瑚って子なんだけど、コーラルって名前でプロモデラーとか言ってたよ?」
「はっ!?」
烈火が口をあんぐり開けた。
瞬きをする暇もなく固まってしまうので、明輝は何かおかしなことでも言っちゃったのかなと首を捻る。
すると烈火は自分が固まっていたことに気が付き、「ちょ、ちょっと待ってよー。明輝、その珊瑚ってどんな感じの子だった? 私達と同い年くらい?」と尋ねる。
「うん。私たちと一つか二つしか変わらないと思うよ」
「見た目は?」
「見た目? えっとね、ピンクと水色のツインテールで、白いリボンで結んでたよ」
「その見た目って……嘘っ、本人だよ!?」
何故か烈火は興奮……というよりも驚いていた。
明輝には全くと言っていいほど訳が分からず、「如何したの?」と繰り返し聞くことしかできない。
「私、何か変なことでも言ったかな?」
「変なことは言ってないけど、明輝それこの界隈だと凄い人だよ」
「す、凄い人って?」
「宮下珊瑚って名前は本名だとしても、コーラルでプロモデラーは有名なんだよー。去年のプラモデル世界大会で準優勝、一昨年に至っては優勝の実力者だよ?」
「そ、そうなの?」
そもそもそんな大会があったことが初耳だった。
明輝は驚いてしまいたどたどしい返事しかできないけれど、烈火の驚きは炎の猛きを思わせて留まることを知らない。
「本当、明輝って運良いよね」
「幸運のパラメータだけは高いから」
「運も実力の内って言うから良いんだよー。ってそれよりさ、明輝も何か買うんでしょ? 流石にここまで来たら限定デカールとか……興味ないよね」
「買うよ」
烈火は驚いていた。まさか明輝がプラモデルに興味を抱くなんて想像もしていなかった。
珊瑚に勧められたのもあるけれど、一人で組むんじゃなくてみんなで組むところに惹かれた。
「烈火と蒼伊も手伝ってくれる?」
「もっちろん。明輝は道具とか全然持って無さそうだし、蒼伊に借りに行こうよ」
「うん。でも何が良いかな?」
「好きなのでいいんじゃない?」
まあそうだとは思った回答が返る。
明輝は烈火と一緒にプラモデルのコーナーに向かうとたくさんのキットが並んでいた。
目が回りそうな白箱の数々に圧倒されつつも、さっき気に入った主人公機を手に取る。
「おっ、サンライズ・ウィング!? 結構王道だけど、そっちなんだ」
「珊瑚と同じことを言うんだね」
「だってライバル機の方が人気高いんだよ? ……あっ、明輝は主人公を全うに応援するタイプだっけ」
「むっ……何だか悪く言われているみたいに聞こえるけど」
「いやいや、主人公よりもその周りが好きな人は多いから。あくまでも個人の意見だけどねー」
自分で言っておいて自分で逃げ道を用意した。
万が一の時は最短距離で逃げ出せるように準備する烈火を見て、「別に良いでしょ?と食い気味にならない寸前で言葉を交わし、明輝も長蛇の列の中に飛び込むのだった。
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