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◇377 「はい、負けました」
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アキラはCUにログインすると、ソウラたちのお店へと向かっていた。
モチツキンに挑んだは良いものの、全く勝てなかった。
敗北記録を伝えに行くのは、少し悲しい。
しかしながら、せっかく情報を聞いたのに、何も言わないのは良くない気がした。
「すみませーん」
Deep Skyのメンバー、ソウラとけみーが居た。
ソウラはカウンターでグラスを拭いていた。
けみーはグラスに注がれた飲み物を口に運んでいた。
「あれ、アキラ?」
「来たんだね」
ソウラは気が付くとビックリしていた。
対してけみーは肘をカウンターに置きながら、アキラのことを見つめた。
何だか良い雰囲気だと思う。
「あの、こんにちは。えっと、今日は二人なんですか?」
アキラは見て判ることを呟いた。
するとソウラはけみーの分まで説明してくれる。
「そうね。今日はピーコもマンティモ授業だから」
「ピーコさん、いつもいませんね」
「ピーコはアレで忙しいからね。大学でも作品作り、授業に提出するものだけじゃなくて、実際に家具のオーダーメイドやDIYにも携わっているから、なかなかログインできないんだよ」
「そ、そう何だ。新情報です」
アキラはけみーに追加で教えて貰った情報を胸に仕舞う。
大学生でそんなことまで。カッコいいと称賛する。
「それで、今日は何をしに来たのかな?」
「……分かってますよね。けみーさん」
「まあね。その浮かばれない顔。如何やら大敗を喫したらしい」
「あはは、そうです」
アキラは笑って答える。
別に笑い話にもならないのだが、けみーは見透かすように、「だろうね」と答える。
「モチツキン、とっても強かったです」
「そうだね。僕もマンティもまるで歯が立たなかったよ」
モチツキンと戦ったからこそ分かる。
臼も杵も強靭で、中に侵入して、餅を捏ねる何て馬鹿な真似、繰り返しでは無理なのだ。
流石はモチツキンと言うべきか。もはやバグレベルで、アキラたちでさえ、四回が限度だった。
「それで、何回できたんだい?」
「四回です。ちなみにけみーさんたちは何回できたんですか?」
アキラはけみーに質問する。
すると思ってもみない回答が出た。
「僕たちは五十回は言ったよ。でもそれ以上行くと、流石の僕のASでもマンティのスキルでも防ぎきれなかったね」
「五十回ですか? そんなにできるんだ……あれ?」
「如何したんだい?」
アキラはふと思い出した。
モチツキンの餅を捏ねると、その回数に応じて頭上のカウントが減って行く。
しかしアキラが見た時、カウントは減っている様子がない。
もちろんけみーたちの後なので、減っていないとおかしい。だけど実際目にしたのはMAX数値だった。
「ちなみにけみーさんたちが見た時にカウントって……」
「99だったよ。そこから49まで減らすのが大変だったね」
「やっぱり……戻っているんだ」
アキラは絶句してしまった。
まさかモチツキンを倒すためのカウントがそんなにシビアだったなんて。
信じたくない事実を受け止めざるを得なくなると、頭を抑えるアキラ。来年再挑戦しようにも、これでは絶対に勝てないと悟る。
「けみーさんたちは如何やってそんなにカウントを減らしたんですか?」
「スキルだよ。僕たちのスキルはスピード戦には向いているからね」
アキラはけみーの分かりやすい説明を聞き、納得してしまった。
モチツキンが強敵すぎて、スピード戦云々の話ではなくなる。
「勝てますかね?」
「如何かな。少なくとも、二人では難しかったよ」
「こっちも三人じゃ厳しかったです」
「「うーん」」
二人して悩んでしまった。
するとソウラが口を交える。
グラスを吹き終わると、新しく水滴の付いていないグラスに、ジュースを注いでアキラの前に出す。
「はい、少し休憩しましょう」
「ありがとうございます」
如何やらサービスで出してくれたようで、アキラはありがたく貰う。
ここまでずっと立っていたのだが、空いていた椅子に座ると、グレープジュースをストローを使って飲む。
もちろん隠語じゃないから、アルコールは含まれていない。
「それで如何するんだい?」
「如何するって?」
「再挑戦、しないのかな?」
ここまでの話をして、けみーはアキラに尋ねた。
流石に今年は遠慮したい。友達と話し合った結果、無理だとなったので、アキラもそうすることにした。
「逆にけみーさんたちは再挑戦するんですか? ほら、ソウラさんたちも居るから」
「私は行かないわよ」
「そうだね。僕たちも今年はもう良いかな。正直、誰かが攻略できるとは思えないからね」
けみーの態度もやはり否定的だった。
正直、けみーたち以上のスピード戦を得意とするパーティーをアキラは知らない。
「ちなみに有力なパーティーとかって?」
「もちろんいるよ。いずれ相手取ることになるかもしれないね」
「い、嫌ですね」
「そうならないように気を付けるんだよ。まあ、運営側がそれらしいイベントを用意してきたら別だけどね」
けみーの言葉には深みがあり、何となく有りそうで仕方なかった。
モチツキンに挑んだは良いものの、全く勝てなかった。
敗北記録を伝えに行くのは、少し悲しい。
しかしながら、せっかく情報を聞いたのに、何も言わないのは良くない気がした。
「すみませーん」
Deep Skyのメンバー、ソウラとけみーが居た。
ソウラはカウンターでグラスを拭いていた。
けみーはグラスに注がれた飲み物を口に運んでいた。
「あれ、アキラ?」
「来たんだね」
ソウラは気が付くとビックリしていた。
対してけみーは肘をカウンターに置きながら、アキラのことを見つめた。
何だか良い雰囲気だと思う。
「あの、こんにちは。えっと、今日は二人なんですか?」
アキラは見て判ることを呟いた。
するとソウラはけみーの分まで説明してくれる。
「そうね。今日はピーコもマンティモ授業だから」
「ピーコさん、いつもいませんね」
「ピーコはアレで忙しいからね。大学でも作品作り、授業に提出するものだけじゃなくて、実際に家具のオーダーメイドやDIYにも携わっているから、なかなかログインできないんだよ」
「そ、そう何だ。新情報です」
アキラはけみーに追加で教えて貰った情報を胸に仕舞う。
大学生でそんなことまで。カッコいいと称賛する。
「それで、今日は何をしに来たのかな?」
「……分かってますよね。けみーさん」
「まあね。その浮かばれない顔。如何やら大敗を喫したらしい」
「あはは、そうです」
アキラは笑って答える。
別に笑い話にもならないのだが、けみーは見透かすように、「だろうね」と答える。
「モチツキン、とっても強かったです」
「そうだね。僕もマンティもまるで歯が立たなかったよ」
モチツキンと戦ったからこそ分かる。
臼も杵も強靭で、中に侵入して、餅を捏ねる何て馬鹿な真似、繰り返しでは無理なのだ。
流石はモチツキンと言うべきか。もはやバグレベルで、アキラたちでさえ、四回が限度だった。
「それで、何回できたんだい?」
「四回です。ちなみにけみーさんたちは何回できたんですか?」
アキラはけみーに質問する。
すると思ってもみない回答が出た。
「僕たちは五十回は言ったよ。でもそれ以上行くと、流石の僕のASでもマンティのスキルでも防ぎきれなかったね」
「五十回ですか? そんなにできるんだ……あれ?」
「如何したんだい?」
アキラはふと思い出した。
モチツキンの餅を捏ねると、その回数に応じて頭上のカウントが減って行く。
しかしアキラが見た時、カウントは減っている様子がない。
もちろんけみーたちの後なので、減っていないとおかしい。だけど実際目にしたのはMAX数値だった。
「ちなみにけみーさんたちが見た時にカウントって……」
「99だったよ。そこから49まで減らすのが大変だったね」
「やっぱり……戻っているんだ」
アキラは絶句してしまった。
まさかモチツキンを倒すためのカウントがそんなにシビアだったなんて。
信じたくない事実を受け止めざるを得なくなると、頭を抑えるアキラ。来年再挑戦しようにも、これでは絶対に勝てないと悟る。
「けみーさんたちは如何やってそんなにカウントを減らしたんですか?」
「スキルだよ。僕たちのスキルはスピード戦には向いているからね」
アキラはけみーの分かりやすい説明を聞き、納得してしまった。
モチツキンが強敵すぎて、スピード戦云々の話ではなくなる。
「勝てますかね?」
「如何かな。少なくとも、二人では難しかったよ」
「こっちも三人じゃ厳しかったです」
「「うーん」」
二人して悩んでしまった。
するとソウラが口を交える。
グラスを吹き終わると、新しく水滴の付いていないグラスに、ジュースを注いでアキラの前に出す。
「はい、少し休憩しましょう」
「ありがとうございます」
如何やらサービスで出してくれたようで、アキラはありがたく貰う。
ここまでずっと立っていたのだが、空いていた椅子に座ると、グレープジュースをストローを使って飲む。
もちろん隠語じゃないから、アルコールは含まれていない。
「それで如何するんだい?」
「如何するって?」
「再挑戦、しないのかな?」
ここまでの話をして、けみーはアキラに尋ねた。
流石に今年は遠慮したい。友達と話し合った結果、無理だとなったので、アキラもそうすることにした。
「逆にけみーさんたちは再挑戦するんですか? ほら、ソウラさんたちも居るから」
「私は行かないわよ」
「そうだね。僕たちも今年はもう良いかな。正直、誰かが攻略できるとは思えないからね」
けみーの態度もやはり否定的だった。
正直、けみーたち以上のスピード戦を得意とするパーティーをアキラは知らない。
「ちなみに有力なパーティーとかって?」
「もちろんいるよ。いずれ相手取ることになるかもしれないね」
「い、嫌ですね」
「そうならないように気を付けるんだよ。まあ、運営側がそれらしいイベントを用意してきたら別だけどね」
けみーの言葉には深みがあり、何となく有りそうで仕方なかった。
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