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◇386 雪の草原で雑魚狩り

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 アキラたちは草原にやって来た。
 いつものことながら、スタット周辺にある草原だ。
 ここにはスライムを始め、低レベルのモンスターが多く生息している。
 見ればチラホラと他のプレイヤーの姿もあり、装備を見て目的も大体察しが付いた。

「懐かしいね」
「そうだな。あの頃の装備はもう私たちには縁遠いだろうな」

 かなり軽装のプレイヤーの姿があった。
 頑張ってスライムや時々襲って来るカエル系のモンスターと戦っていた。
 懐かしいと思い、邪魔にならないように大回りしていると、今度は別のプレイヤーたち。
 しかし先程見た軽装の装備品ではなく、かなりレベルが高いのか、重装備やレア装備を着込んでいた。

「うわぁ、もしかして高速の板を追っているのかな?」
「だろうな」

 高速の板は期間限定の依頼だ。
 しかし依頼の件数は一つではない。
 複数用意されているのか、それとも一つの共通の依頼に対して、複数人で対処しろと言うことなのか。
 アキラたちは分からないのだが、とりあえず頭上を見上げてみた。

「居ないね」

 真上には居なかった。
 それもそのはずで、超高速で移動しているとしても、ノイズが走るような音が聴こえるはずだ。けれど音は何も聴こえないので、モンスターが居ないのは確定だった。

「もう少し先に行ってみようか?」
「そうだな。ここに居たら他のプレイヤーと競合することになる」

 アキラたちはもう少し先まで行ってみることにした。
 草原の奥の方まで行ってみると、プレイヤーの数は少なくなる。
 辺りを見回してみると、アキラたち以外にプレイヤーは居なかった。

「ここまで来たら私たちだけだね」
「そうだな。とは言え、モンスターは……」
「スライム、カエル、後は馬?」

 フェルノは一つ一つ確認する。
 ありきたりなスライム系から巨大なカエル、珍しい大きな馬。
 たくさんのモンスターたちを見つけるも、目当ての高速の板は見つからない。

「全然居ないなー」
「そうだね。高速の板は何処に居るのかな?」
「おそらくは空だろうな。依頼によると高速の板は空から来る。とは言えいくら見上げてもその姿は確認できないのだが……」

 Nightはジッと空を見つめた。今の所特に怪しい影はない。
 もしかしたら時間が関係しているのかもしれない。
 そう思ったので、少しの間出現するのを待つことにした。
 しかしここはモンスターたちの生息地ど真ん中だ。
 いくらスライムやカエルのモンスターしかいないとはいえ、草原の序盤に比べるとレベルは高い。もしかするとモンスターに襲われてしまうかもしれないので、身を固めて寄り添い合う。

「モンスターに襲われないように気を付けないといけないわね。こんなところでダメージなんて受けたくないからね」
「そうだな。とは言え万が一に備えてポーションは用意してあるが……」
「それは飲みたくないわよ。マズいもの」
「そうですね。あまり美味しくはありませんが」
「仕方ないだろ。……牛乳を入れれば少しはマイルドになるが、効果は落ちるぞ?」
「飲みやすさと引き換えなんて、結構一長一短だね」

 とは言えマズくて飲めないよりかは全然マシだ。
 そう思ってアキラたちは談笑を続けていると、次第にモンスターが寄ってきていることに気が付く。
 もしかしたら何か気に障るようなことをしてしまったのだろうか。
 そう思って視線を向け、モンスターたちの視線がアキラたちにあることを目視する。

「あれ? これってもしかして、私たちのこと……」
「狙っているねー」
「如何するのよ? 普通に倒しちゃうの?」
「Night、如何したら良いと思う?」

 アキラはNightに尋ねた。
 すると考えるまでもない反応を示す。

「如何したらも何も無いだろ」
「倒すってことだね?」
「当たり前だ」
「それじゃあ、みんなやろっか!」
「待ってましたぁ!」

 フェルノは【吸炎竜化】で武装する。
 炎を纏った拳で敵を撃つべく、先に襲って来たカエル系モンスターに向かって突撃する。

「そりゃぁ!」

 炎を灯した竜の爪が襲って来たカエル系モンスター、ジャイアントフロッグに突き刺さる。
 粘液でベトベトの体だが、竜の炎には流石に敵わず、粘液が蒸発させられて乾燥してしまった。

「おっし!」

 手応えを感じたフェルノはそのまま隣にいたスライムを二匹蹴り飛ばす。
 白い雪の草原にベチャッとなったスライムが転がる。
 圧倒的なパワー差を目の当たりにし、いくらレベルが高くても敵無しだった。

「強すぎるねフェルノ」
「そうだな。だが私たちも負けてられないぞ」

 十字架剣を構え、ジャイアントフロッグの脳天に突き立てる。
 一瞬のうちに勝敗が決し、アキラはドン引きする。
 かと言ってアキラも何もしてない訳じゃない。スライムたちを軽く捻ると、そのあまりの強さの違いにスライムたちは逃げていく。
 無血開城を目論むスライムたちを見届けた。

「じゃあね」

 アキラは手を振ってスライムたちを見届ける。
 無駄な争いをしなくて良かったとホッとすると、周りに居たモンスターたちはほとんど倒されていた。
 これもフェルノの圧倒的な戦闘センスのおかげと、雷斬やベルの頑張りでもあった。
 知らぬ間に、まさにいかづち疾風はやてだ。フェルノの影に隠れ、モンスターたちを殲滅している。
 しかしその姿をアキラとNightは気が付いていた。可憐に舞う二人はまるで踊りを披露するみたいでカッコよかった。
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