463 / 479
◇458 独特な会話ムード
しおりを挟む
雷斬は体が凍える程寒くて仕方がなかった。
ここまでの間に体を動かし過ぎてしまった。
そのせいだろうか、GAMEの中なのに動き過ぎて体が温まってしまい、動かなくなったために一気に冷え切ってしまった。
「雷斬、体が冷たいわぁ。それにフラフラしてるで?」
「そうですね。すみません」
謝ることでもないが、雷斬は性格的に謝ってしまった。
けれど天狐は叱ることはせず、優しく雷斬のことを気遣って支える。
「体が冷え切ってんで。早う温めな」
「は、はい。ううっ、インベントリになにか……」
雷斬は震える指でインベントリを開こうとする。
けれどかじかんでしまった指は、乱暴に使ったアドレナリン注射のせいで激痛が走る。
メニューバーを開くことすら億劫で、その様子を見ていた天狐は肩を支えた。
「これでも飲んで。温まんで」
「あ、ありがとうございます」
天孤は自分のインベントリの中から飲み物を取り出した。
水筒の中は温かく、中に入っていたお茶を蓋に移す。
震える指で雷斬は受け取ると、ゆっくり飲みほした。
体が寒くて仕方がなかったものの、ほんの少しだけ安寧を取り戻した。
「ふぅ、助かりました天狐さん」
「別にええわぁ。それよりこれからどないすんの?」
「そうですね。とりあえず皆さんのところに戻りましょうか」
「そうやな。急いで戻らな」
雷斬も天狐も無事に役目を終えた。雪将軍は消滅したのでこれで心配は要らない。
そこでアキラたちの下に戻ろうとするのだが、それは叶わなかった。
ズカズカと深い足音が聞こえ視線を飛ばすと、アキラたちが粉雪に煽られながらやって来た。
「雷斬、天狐さん、勝ったんですか?」
「皆さんどうしてここに……」
「迎えに来たんだ。と言うより応戦しにだが……その必要は無さそうだな」
「全然いけるで! どう終わったさかい!」
天孤はニカッと笑みを浮かべた。
勝利の余韻に浸っている証拠で、雪将軍は影も形もない。
如何やらお互いに勝利をもぎ取った様子で、ホッと一息付く。
「良かった。本当に良かった」
「ベルー、心配しすぎだってー。一番信頼してたのベルでしょー? 終わった途端に気が抜けるのは流石に無いってー」
フェルノは安堵するベルを茶化した。
するとギロッと鋭い視線がフェルノのことを刺す。
一切怯む様子の無いフェルノはベルの刺すような視線を無視し、雷斬と天狐に活躍を尋ねる。
「ねぇねぇ二人共、雪将軍はどうだったの?」
あまりにも漠然としていた。
Nightでさえ反応に困る問い掛けに当然雷斬も天狐も悩む筈だった。
けれど二人は少し悩みつつも、互いに目を配せ合う。
下手な世辞は要らないので、ここは互いに思ったことを重ね合わせた。
「「強かったですよ(強かったわぁ)」」
フェルノに並んで漠然としていた。
これで会話になるのだろうか。
Nightは呆れてしまいそうだったが、フェルノ自身には伝わったらしい。
「そっかー。強かったんだー」
フェルノは薄っぺらい相槌を入れた。
その様子を目の当たりにするNightとクロユリは少し引いてしまう。
「どうしてそれで分かり合えるんだ」
「あれではないですか? 例えば感性が似ているとか?」
「椿、天狐はまだしもその言い方だと雷斬さんに失礼ですよ」
「そうでしたね。すみません、雷斬さん」
Nightは表情を訝しめた。独特な感性に付いて行けなかったのだ。
けれど椿姫は器用に間には入って上手く中和しようとした。
けれどクロユリは必要のない訂正をし、椿姫も何故か同意する。
それだと天孤だけが可哀そうなことになる中、話題が一つ飛ぶことになった。
「それより雷斬、体震えてるー?」
「そうよね。おまけに右腕が痛々しいわよ」
フェルノは雷斬の体が震えていることを指摘した。
親友のベルは震えよりも酷く痙攣している右腕を睨んだ。
一体何があったのか。相当の無茶は見て取れる。
「そうですね。少し体が……ううっ」
「おっと! 急に動いたらあかんえ雷斬」
雷斬は天狐に今一度体を支えられる。
動いて説明しようとしたのだが、その動きだけで相当のダメージを受けていると想像ができた。
けれどそれは証だ。ここまで体を壊さないと倒せない相手だったと分かり、雪将軍の恐ろしさが伝わる。
本当に二人でなければ相手にすらならなかっただろう。
「本当にお疲れ様。雷斬、天狐さん」
「「皆さんもお疲れさまでした(お疲れやす)」」
アキラたちは互いの成果を褒め合った。
けれどこれだけ寒い中でそんな真似をするのは怠慢だ。
Nightは雷斬の前に向かうと、左腕を握った。
「それはさておきさっさと帰るぞ」
「Nightさん?」
「私の渡したアドレナリンを打ったな。痛みは一時的にしか抑えることはできない。それに低体温症にもなっている。こんなところ、ポータルを使ってさっさと帰るぞ」
Nightは雷斬の身を案じていた。
相当からだが堪えていて無理を押し殺している状況だった。
だからだろう。焦りを見せるNightだったが、雷斬は足を止める。
「待ってください、Nightさん」
「どうしてだ? 早く体を治した方がいいぞ」
「それはそうですが……」
視線を背後に飛ばす。そこには気になるものが突き刺さっている。
雷斬は遺された太刀のことを気掛かりにし、物欲しそうな顔を珍しく浮かべていた。
ここまでの間に体を動かし過ぎてしまった。
そのせいだろうか、GAMEの中なのに動き過ぎて体が温まってしまい、動かなくなったために一気に冷え切ってしまった。
「雷斬、体が冷たいわぁ。それにフラフラしてるで?」
「そうですね。すみません」
謝ることでもないが、雷斬は性格的に謝ってしまった。
けれど天狐は叱ることはせず、優しく雷斬のことを気遣って支える。
「体が冷え切ってんで。早う温めな」
「は、はい。ううっ、インベントリになにか……」
雷斬は震える指でインベントリを開こうとする。
けれどかじかんでしまった指は、乱暴に使ったアドレナリン注射のせいで激痛が走る。
メニューバーを開くことすら億劫で、その様子を見ていた天狐は肩を支えた。
「これでも飲んで。温まんで」
「あ、ありがとうございます」
天孤は自分のインベントリの中から飲み物を取り出した。
水筒の中は温かく、中に入っていたお茶を蓋に移す。
震える指で雷斬は受け取ると、ゆっくり飲みほした。
体が寒くて仕方がなかったものの、ほんの少しだけ安寧を取り戻した。
「ふぅ、助かりました天狐さん」
「別にええわぁ。それよりこれからどないすんの?」
「そうですね。とりあえず皆さんのところに戻りましょうか」
「そうやな。急いで戻らな」
雷斬も天狐も無事に役目を終えた。雪将軍は消滅したのでこれで心配は要らない。
そこでアキラたちの下に戻ろうとするのだが、それは叶わなかった。
ズカズカと深い足音が聞こえ視線を飛ばすと、アキラたちが粉雪に煽られながらやって来た。
「雷斬、天狐さん、勝ったんですか?」
「皆さんどうしてここに……」
「迎えに来たんだ。と言うより応戦しにだが……その必要は無さそうだな」
「全然いけるで! どう終わったさかい!」
天孤はニカッと笑みを浮かべた。
勝利の余韻に浸っている証拠で、雪将軍は影も形もない。
如何やらお互いに勝利をもぎ取った様子で、ホッと一息付く。
「良かった。本当に良かった」
「ベルー、心配しすぎだってー。一番信頼してたのベルでしょー? 終わった途端に気が抜けるのは流石に無いってー」
フェルノは安堵するベルを茶化した。
するとギロッと鋭い視線がフェルノのことを刺す。
一切怯む様子の無いフェルノはベルの刺すような視線を無視し、雷斬と天狐に活躍を尋ねる。
「ねぇねぇ二人共、雪将軍はどうだったの?」
あまりにも漠然としていた。
Nightでさえ反応に困る問い掛けに当然雷斬も天狐も悩む筈だった。
けれど二人は少し悩みつつも、互いに目を配せ合う。
下手な世辞は要らないので、ここは互いに思ったことを重ね合わせた。
「「強かったですよ(強かったわぁ)」」
フェルノに並んで漠然としていた。
これで会話になるのだろうか。
Nightは呆れてしまいそうだったが、フェルノ自身には伝わったらしい。
「そっかー。強かったんだー」
フェルノは薄っぺらい相槌を入れた。
その様子を目の当たりにするNightとクロユリは少し引いてしまう。
「どうしてそれで分かり合えるんだ」
「あれではないですか? 例えば感性が似ているとか?」
「椿、天狐はまだしもその言い方だと雷斬さんに失礼ですよ」
「そうでしたね。すみません、雷斬さん」
Nightは表情を訝しめた。独特な感性に付いて行けなかったのだ。
けれど椿姫は器用に間には入って上手く中和しようとした。
けれどクロユリは必要のない訂正をし、椿姫も何故か同意する。
それだと天孤だけが可哀そうなことになる中、話題が一つ飛ぶことになった。
「それより雷斬、体震えてるー?」
「そうよね。おまけに右腕が痛々しいわよ」
フェルノは雷斬の体が震えていることを指摘した。
親友のベルは震えよりも酷く痙攣している右腕を睨んだ。
一体何があったのか。相当の無茶は見て取れる。
「そうですね。少し体が……ううっ」
「おっと! 急に動いたらあかんえ雷斬」
雷斬は天狐に今一度体を支えられる。
動いて説明しようとしたのだが、その動きだけで相当のダメージを受けていると想像ができた。
けれどそれは証だ。ここまで体を壊さないと倒せない相手だったと分かり、雪将軍の恐ろしさが伝わる。
本当に二人でなければ相手にすらならなかっただろう。
「本当にお疲れ様。雷斬、天狐さん」
「「皆さんもお疲れさまでした(お疲れやす)」」
アキラたちは互いの成果を褒め合った。
けれどこれだけ寒い中でそんな真似をするのは怠慢だ。
Nightは雷斬の前に向かうと、左腕を握った。
「それはさておきさっさと帰るぞ」
「Nightさん?」
「私の渡したアドレナリンを打ったな。痛みは一時的にしか抑えることはできない。それに低体温症にもなっている。こんなところ、ポータルを使ってさっさと帰るぞ」
Nightは雷斬の身を案じていた。
相当からだが堪えていて無理を押し殺している状況だった。
だからだろう。焦りを見せるNightだったが、雷斬は足を止める。
「待ってください、Nightさん」
「どうしてだ? 早く体を治した方がいいぞ」
「それはそうですが……」
視線を背後に飛ばす。そこには気になるものが突き刺さっている。
雷斬は遺された太刀のことを気掛かりにし、物欲しそうな顔を珍しく浮かべていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
175
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる