「その結婚ちょっと待つのじゃー!」ってワシは何を言っているのだろうか?

だらけたい

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10.破棄されたもの

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 というわけで、準備もあったので1日空けて再度よろず屋で集ったワシとシバルは、リムの手伝い(シバルは当然知らない)もあってあっさりと領主邸に忍び込むことに成功したのじゃが、

「ぶふっ」
「なっ!これを着ろっていったのは夕夜さんだろ!」
「いや、そうなのじゃけどな」

 ワシは再度シバルの姿を見てやはり吹き出してしまったのじゃよ。

「夕夜さん!」

 怒ってくるシバルじゃが、やはりその姿では締まらないのじゃよ。

 え?シバルがどんな姿をしておるかって?

 今のシバルはメイド服を着ているのじゃよ。

 もちろん屋敷の中に潜入するまでは普通の服をきておったのじゃが、屋敷の中を歩き回るには目立つということでメイド服に着替えてもらったのじゃよ。

「ププ。似合っているぞ」
「せめて笑わずに言ってもらえないですかね!」

 これを見て笑うなとか一種の拷問なんじゃないじゃろうか。

「ってか!なんで夕夜さんは普通の服のままなんですか!」
「ワシにはこれがあるからの」

 ワシは屋敷に入る時から被っているフード付のマントをひらひらさせたのじゃよ。

「いや、絶対に怪しまれますよ!」
「大丈夫じゃよ。このマントには認識阻害の効果が付与されておるから、こちらから話しかけたり相手に触られたりしないかぎりはワシの存在に誰も気づけぬのじゃよ」
「じゃあ俺の分も用意してくださいよ!」

 シバルのもっともな言い分に頷きつつも、

「あいにくと1つしか用意出来なかったのじゃよ」
「嘘だ!」

 嘘じゃな。

 用意しようと思えば用意出来たのじゃが、そこは迷惑をかけられているから楽しませてもらったところで罰は当たらないじゃろう、ということでワシが楽しむためにあえて用意しなかったのじゃな。

「その代わりといってはなんじゃが、そのメイド服にも認識改変が付与されておるから、知らない人から見ればお主は立派なメイドに見えるんじゃよ。だから安心せい」
「もうすでに夕夜さんに笑われてるから安心出来ないんだけど!」
「ワシはお主のことを知っているから笑ってしまうじゃけじゃ。気にするでない」
「気になるって!」
「逆に考えるのじゃよ。すでにワシに笑われてるからこそ諦めがつくというものじゃ、と」
「諦められるか!ってか、せめてメイド服ではなく執事服でも良かったでしょう!」

 もちろん執事服でもよかったのじゃが、やはりそれではワシが楽しめん。

「あいにくと、発注が間に合う服がメイド服しかなかったのじゃよ」
「そんなはずは」
「ないとはお主に言い切れんじゃろう」
「そう………ですねど………」

 ワシみたいに商会をしておったら情報などが入ってくるから違うと言い切れるのじゃが、そんな情報を知る手段のないシバルは違うとは言い切れずに言葉の勢いを無くしたのじゃ。

 ちなみにじゃが、シバルが着ているメイド服はシバルの体型データを四季から貰ってワシが作ったものじゃから発注うんぬんも嘘じゃよ。

「それに、こういった屋敷では執事よりメイドの方が多く働いておるから、数が増えてもバレにくいからメイド服なのじゃよ」
「それでも執事服の方がいいですよ!」

 と、叫んでおるシバルじゃが、

「しかし、メイド服を着ないとなると、シャルフィムのところにはコソコソ隠れながら人目をかい潜っていかないといけないのじゃが、それでもよいのか?」
「こんな服を着るよりかはそっちの方がいいに決まってるだろ!」
「確実にすぐに不審者として捕まるが、本当によいのじゃな」
「………いいに」
「ぷぷっ。今でも十分不審者じゃったの」
「夕夜さん!」

 シバルが怒るのもわかるのじゃ。

 というか怒らせるように話を進めているのじゃからの。

 しかし、そろそろ真面目にいくかの。

 ちなみに、今までシバルが叫んでもなぜ誰も人が来ないのかというと、防音結界を張る魔道具で防音結界を張っておるからじゃ。

「さて、ここで不審者と捕まれば騎士団の詰め所に連行され、数日詰め所に拘留されるかもしれん。最悪街から追放されて2度と入って来れなくなるなり、シャルフィムを助け出すことが出来なくなるかもしれないのじゃが、本当にいいんじゃの?」

 ワシの本気度を感じ取ったのか、シバルは言葉に詰まったのじゃ。

「さて、シバルの覚悟が決まったようじゃから行くとするかの」
「覚悟が決まったわけでは………」
「じゃあメイド服を脱ぐのか?」
「脱が………ない………」

 凄く嫌そうで渋々じゃが、シバルは脱がないことを選んだので、早速シャルフィムが居る部屋へ向かうために部屋を出たのじゃ。

「本当に大丈夫なんでしょうね」

 心配そうなシバルはキョロキョロとしているが、その行動が不審者っぽくて危ないのじゃよな。

「大丈夫じゃから真っすぐ前を向いて歩くのじゃよ」
「でも………」

 まだ挙動不審がおさまらないシバルじゃったが、前からメイドがやって来たことで挙動不審はおさったのじゃが固まって動かなくなってしまったのじゃ。

 なので、軽く後ろから小突いて歩かせようとするも、それでも動かないのでさらに押してやるとコケかけたのじゃ。

「大丈夫ですか?」

 立ち止まっている状態から急にコケかけたのでメイドはかなり心配そうにシバルのもとにやって来たのじゃ。

「だ、大丈夫です」
「そうですか?そんな風には見えませんでしたが?」
「大丈夫。大丈夫ですから」
「本当に大丈夫ですか?疲れているのなら無理をせずに休憩を取るのですよ?」
「はい!はい!わかりました!ありがとうございます!」

 これ以上話すとバレると思っているのか、シバルは慌てた様子で謝罪を言うと早足で歩き出したのじゃ。

 そんなシバルを不思議そうに見ておったメイドも、すぐに心配ないと思ったのじゃろう。立ち去っていったのでワシはシバルのもとへと駆け寄ったのじゃよ。

「メイドはもう立ち去ったからとりあえず止まって1度深呼吸せい」

 ワシの言葉に立ち止まって振り返ったシバルはメイドが居なくなったのを見て大きく息を吐くのじゃった。

「さっきのメイドとの会話でわかったじゃろうが、お主の正体を知らぬ者にはお主はメイドにしか見えんのじゃよ。じゃからもっと堂々と歩けばよいのじゃよ。さっきのように挙動不審な歩き方をしておってはせっかくメイドに見えてもその行動でバレるのじゃよ」
「そんなことを言われても、自分でそう見えるか確認したわけでもないし、最初に夕夜さんに笑われるしで信じられるわけがないじゃないですか」

 あ~。うん。

「そう言われるとそうじゃな」

 それについては少しからかいすぎたのがいけなかったようじゃの。

「しかし、これで理解は出来たじゃろうから、これからは堂々と歩」

《マスター。その前に報告っす》
《どうしたのじゃ?》
《角を曲がった先の廊下からイビラチャが接近中っす》
《了解じゃよ》

「どうしたんですか?」

 リムからのテレパシーを受けて黙ってしまったことで、シバルが心配そうに問いかけてきたのじゃよ。

「シバル。落ち着いて聞くのじゃよ。この先から今イビラチャが近づいてきておるのじゃよ」

 その言葉を聞いた瞬間、シバルは一気に殺気をみなぎらせて廊下の先を見つめて1歩踏み出したので、これは駄目だと思い、その腕を掴んで振り返らせると喉を掴んで壁に押し付けて石化の指輪の効果を発動し、続けて魔道具で隠蔽と防音の結界を張ったのじゃよ。

 すると20秒もせずにやって来たイビラチャを見送ってから石化の効果を解いてやったのじゃよ。

「何をするんですか!」
「それはこっちのセリフじゃよ」

 睨まれたので睨み返してやると、怯んだシバルは黙り込んだのじゃよ。

「お主、今イビラチャに何をしようとしたのじゃ?」
「1発でも殴ってやろうと」

 そう答えたのでワシがシバルの頬を殴ってやったのじゃよ。

「ワシらは今ここに何しにきたかわかっておるのか?」
「シ、シャルフィムに会いに来ています」
「そうじゃ。なのにお主はイビラチャを殴って騒ぎを起こそうとしたのじゃ。それがどういう結末につながるか分かるかの?」

 もちろん分からっておらぬシバルは首を振ったなのじゃ。

「領主邸に不法侵入した上にイビラチャを殴ったとなれば当然お主の首は飛ぶじゃろうし、最悪その原因となったシャルフィムまで連帯責任で殺される可能性が出てくるのじゃよ。お主はそれほどのことをしようとしたのじゃぞ」

 そう言ってから喉を掴んでいた手を離してやると、シバルはやろうとしていた事の大きさに今さら気づいたようで、呆然と座り込んだのじゃよ。

「一昨日も言ったが、お主には冷静さがとにかく足らぬ。とはいえ、2・3日ですぐにその冷静さが手に入るとは思わぬが、本当に考えて行動しなければ取り返しのつかぬことになる、ということを覚えていくのじゃよ」

 ワシの忠告に小さくながらも頷いたので、ワシはシバルに手を差し出したのじゃ。

「こんなところで座り込んでいい時間はないのじゃから、さっさと行くのじゃよ」
「は、はい」

 ワシに引っ張られて立ち上がったシバルとシャルフィムの部屋へ歩き出したのじゃが、さっきのようなことがあっても困るので最後通告しておこうかの。

「シバル。さっきはワシが止めたからなんともなかったが、もし次さっきのような行動を起こそうとしたらワシは止めんしその時点で依頼は破棄されたものとして対処するから肝に銘じておくのじゃな」
「え」

 驚いて立ち止まるシバルじゃが、それくらいのことをしたというのを理解してほしいのじゃよな。

「ほら、立ち止まってないでさっさと行くのじゃよ」
「あ、はい」
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