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◇第3章◇優しくて明るいひと
29 黒焦げ
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鼻歌でも歌い出しそうな気分で律の部屋にお邪魔した。
玄関で靴を脱いでいると、リビングのドアの前からチーが僕をじっと見つめていたので、目をそらす。
敵じゃなくて味方ですよーと念じると、それが通じたのか、逃げずにその場に佇んでいた。
チーの横を通り過ぎ、律からもらった袋の中身を冷蔵庫へ仕舞っていく。
「律は待っててね、僕が美味しいご飯を作ってあげるから! 炊飯器借りるねー」
「……はい。では俺は、残りの仕事を片付けていますので」
観念したように、律は軽くため息を吐いてからノートパソコンを開いて仕事を始めた。
僕のせいで仕事を家に持ち込ませて悪いけど、やっぱり律は優しい。
僕は意気揚々と腕まくりをして、早速準備に取り掛かった。
「なんかごめん」
僕はまず1番に謝って料理の乗った皿を律の前に出した。
律は難しい顔をして考え込む。
「これは……ハンバーグですか?」
「オムライス」
「へぇ、オム……オムライス?」
律は恐る恐る、その黒い物体の端っこをスプーンで削る。
中から焦げたケチャップライスが出てきたのを見て「あぁ、ホントですね」と逆に関心したように頷いた。
僕の手料理振る舞い作戦は失敗に終わった。
なんということだろう。
そういえば僕は特段料理が得意なわけでもないことを忘れていた。
勉強に精を出していた頃は母親の料理の手伝いなんてしたことが無かったし、一人暮らしを始めてからも自炊といえば市販のルーを入れてできる簡単な煮込み料理ばかりだ。
オムライスくらいなら作れると見込んでいたが甘かったようだ。
出来上がった黒焦げの塊に苦笑するしかなかった。
「あなたは普段、こんなにまっ黒いオムライスを食べてるんですか」
「初めて作ったんだよ。火加減が難しくて……ごめん! カレーかシチューならちゃんと作れるから待ってて!」
「いいえ、いいですよ。少しアレンジすればいけるでしょう」
律は立ち上がり、キッチンで作業を始めた。
フライパンでバターを熱し、そこに小麦粉を振り入れてじゅうじゅう音をさせ、牛乳を少しずつ追加して木べらでかき混ぜる。
あっという間にホワイトソースを作り、僕と律の黒焦げのオムライスにそれを回し入れた。
ピザ用のチーズものせれば、即席ドリアの出来上がり。
「いただきます」
2人で手を合わせてソースを絡めながらオムライスを口にする。
ホワイトソースによって焦げが緩和されて美味しい。
律も黙々とそれを口に運んであっという間に皿を空にした。
「ごちそうさま。もう、無理して作らなくてもいいですからね」
苦笑されてしまい、僕はむむ、と唇を尖らせる。
こんなはずじゃ無かったのに。
「昨日助けてもらったから、何かお礼にと思ったんだけど」
「そんなのいいですから。俺のことは気にかけないで」
せめて洗い物はと、僕は泡のついたスポンジで皿をこすって後片付けをしていく。
その様子を、猫のチーがまた柱の影からじっと伺っていた。
洗い物を終えてキッチンを出ると、床の上を弾丸のようにビュンと移動して姿を消したけど、しばらく経てばまた近づいてきて、僕をまん丸なグリーン色の目で見つめてくる。
「チーがずっと僕を見てる」
「珍しい。臆病だからなかなか姿を見せないのに。千紘を信頼し始めたのかもしれませんね」
出会ってわずか2回目で僕に心を開き始めているなんて嬉しい。
散歩中の犬に吠えられたりして動物に好かれるタイプでは無いと思っていたけど、チーは僕に何か感じるものがあるのだろうか。
チーは今度は律をじっと見つめたあとに瞬きをする。
そうするのは飼い主への親愛の情の表れだと聞いたことがある。
玄関で靴を脱いでいると、リビングのドアの前からチーが僕をじっと見つめていたので、目をそらす。
敵じゃなくて味方ですよーと念じると、それが通じたのか、逃げずにその場に佇んでいた。
チーの横を通り過ぎ、律からもらった袋の中身を冷蔵庫へ仕舞っていく。
「律は待っててね、僕が美味しいご飯を作ってあげるから! 炊飯器借りるねー」
「……はい。では俺は、残りの仕事を片付けていますので」
観念したように、律は軽くため息を吐いてからノートパソコンを開いて仕事を始めた。
僕のせいで仕事を家に持ち込ませて悪いけど、やっぱり律は優しい。
僕は意気揚々と腕まくりをして、早速準備に取り掛かった。
「なんかごめん」
僕はまず1番に謝って料理の乗った皿を律の前に出した。
律は難しい顔をして考え込む。
「これは……ハンバーグですか?」
「オムライス」
「へぇ、オム……オムライス?」
律は恐る恐る、その黒い物体の端っこをスプーンで削る。
中から焦げたケチャップライスが出てきたのを見て「あぁ、ホントですね」と逆に関心したように頷いた。
僕の手料理振る舞い作戦は失敗に終わった。
なんということだろう。
そういえば僕は特段料理が得意なわけでもないことを忘れていた。
勉強に精を出していた頃は母親の料理の手伝いなんてしたことが無かったし、一人暮らしを始めてからも自炊といえば市販のルーを入れてできる簡単な煮込み料理ばかりだ。
オムライスくらいなら作れると見込んでいたが甘かったようだ。
出来上がった黒焦げの塊に苦笑するしかなかった。
「あなたは普段、こんなにまっ黒いオムライスを食べてるんですか」
「初めて作ったんだよ。火加減が難しくて……ごめん! カレーかシチューならちゃんと作れるから待ってて!」
「いいえ、いいですよ。少しアレンジすればいけるでしょう」
律は立ち上がり、キッチンで作業を始めた。
フライパンでバターを熱し、そこに小麦粉を振り入れてじゅうじゅう音をさせ、牛乳を少しずつ追加して木べらでかき混ぜる。
あっという間にホワイトソースを作り、僕と律の黒焦げのオムライスにそれを回し入れた。
ピザ用のチーズものせれば、即席ドリアの出来上がり。
「いただきます」
2人で手を合わせてソースを絡めながらオムライスを口にする。
ホワイトソースによって焦げが緩和されて美味しい。
律も黙々とそれを口に運んであっという間に皿を空にした。
「ごちそうさま。もう、無理して作らなくてもいいですからね」
苦笑されてしまい、僕はむむ、と唇を尖らせる。
こんなはずじゃ無かったのに。
「昨日助けてもらったから、何かお礼にと思ったんだけど」
「そんなのいいですから。俺のことは気にかけないで」
せめて洗い物はと、僕は泡のついたスポンジで皿をこすって後片付けをしていく。
その様子を、猫のチーがまた柱の影からじっと伺っていた。
洗い物を終えてキッチンを出ると、床の上を弾丸のようにビュンと移動して姿を消したけど、しばらく経てばまた近づいてきて、僕をまん丸なグリーン色の目で見つめてくる。
「チーがずっと僕を見てる」
「珍しい。臆病だからなかなか姿を見せないのに。千紘を信頼し始めたのかもしれませんね」
出会ってわずか2回目で僕に心を開き始めているなんて嬉しい。
散歩中の犬に吠えられたりして動物に好かれるタイプでは無いと思っていたけど、チーは僕に何か感じるものがあるのだろうか。
チーは今度は律をじっと見つめたあとに瞬きをする。
そうするのは飼い主への親愛の情の表れだと聞いたことがある。
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