81 / 90
◇第7章◇優しくて大好きなひと
81 かつての記憶
しおりを挟む
ふと目を開けると、ベッド脇にいた律に頭を撫でられていた。
あ、と同時に声を出して見つめ合う。
律の手は優しく僕の前髪を梳いた。
「律、いま、僕の頭撫でてた?」
「はい、撫でていましたよ」
「……今度は嘘吐かないんだ?」
「もうその必要は無くなりましたから」
くすりと笑って、律は僕の頬にキスを落とす。
「……少し、無理をさせてしまいましたか」
「えっ?! あ……大丈夫だけど」
「後でのど飴をあげますね。声が掠れてるみたいだから」
「……別に、いいです」
恥ずかしがっていると、律は笑って部屋を出ていった。
確かに、散々喘がされたから喉はカラカラだ。
僕はイッたのに律は関係ないとばかりに突き上げるものだから、正直、最後の方はあまりの快楽に訳が分からなくなって意識を飛ばしかけたし。
僕は布団を捲って自分の体を見下ろす。
律のパジャマを身につけていた。
後処理をされていたことに全く気付かないくらいに熟睡していたらしい。
というか、ぐしょぐしょだった体を綺麗にぬぐい、下着やパジャマを丁寧に僕に着させている律を想像すると、エッチ以上に恥ずかしいものがある。まるで介護のようだ。
半身を起き上がらせると、体の奥に鈍痛が走る。その痛みが何を意味するのか一瞬で思い出されて、やっぱり羞恥に駆られた。
戻ってきた律は、白いアルバムを手にしていた。
「きみに見せたいものがあるんです」
僕の隣に潜り込んできた律の髪から、いつもよりも強く柑橘系の香りがした。風呂に入ったのだろう。
お互いの体の半分がピッタリとくっつく程に密着されて、本当に恋人同士になったのだなと感慨深くなる。
「何?」
「まず、これなんですけど」
アルバムを捲られて目に飛び込んできたのは、海の写真だった。
これは前に見たことがある。僕がこっそり部屋に忍び込んで、たまたま手に取ったアルバムだ。
波や砂浜のいろんな表情が写っている。
「これ?」
「はい。これ、千紘と一緒に行った海なんです」
「え……」
もう1度じっくり見てみるが、5年前に訪れた海だとは分からなかった。
何か目印になるような建物や岩などが写っているのならまだしも、波の形や砂浜だけでそうだと判別できるものではない。
律はあの時の思いを吐露していった。
「千紘にこれを見られた時、気付かれたかと焦りました。俺がいつまでも過去を引きずって先に進めていないのだと知られたくなくて、咄嗟に取り上げたのですが」
「どうして海に写真を撮りに行こうって思ったの?」
「きみと並んで海を見ていたあの時の俺は、どんな気持ちだったんだろうって答えを探すような気持ちで」
「答えは見つかった?」
「いいえ。ただただ、きみにまた会いたいという気持ちばかりが先走って、どうだったのか思い出せないんです。いろんな角度から景色を見てみましたけど、ダメでした」
けど、と、律の長い指がパラパラとページを捲る。
最後のページに挟まっていた写真を僕に見せた。
「これを撮った時の自分のことはよく覚えています。ほんとうは弱いくせに強がるところとか、寂しくてたまらないくせに全然平気だと笑ってしまうような天の邪鬼なあなたの顔が、可愛くて、愛おしいなと思いました」
探せばどこかにデータはあるかもしれない、と言われていた写真。
そこには今よりもあどけなさが残る顔立ちの、高校1年生の僕がいた。
潮風に吹かれて黒髪がふわりと揺れ、戸惑いと怯えを綯い交ぜにしたような強がりの笑みを貼り付けた僕。
その横顔は、思っていたほど変な顔では無かった。
あ、と同時に声を出して見つめ合う。
律の手は優しく僕の前髪を梳いた。
「律、いま、僕の頭撫でてた?」
「はい、撫でていましたよ」
「……今度は嘘吐かないんだ?」
「もうその必要は無くなりましたから」
くすりと笑って、律は僕の頬にキスを落とす。
「……少し、無理をさせてしまいましたか」
「えっ?! あ……大丈夫だけど」
「後でのど飴をあげますね。声が掠れてるみたいだから」
「……別に、いいです」
恥ずかしがっていると、律は笑って部屋を出ていった。
確かに、散々喘がされたから喉はカラカラだ。
僕はイッたのに律は関係ないとばかりに突き上げるものだから、正直、最後の方はあまりの快楽に訳が分からなくなって意識を飛ばしかけたし。
僕は布団を捲って自分の体を見下ろす。
律のパジャマを身につけていた。
後処理をされていたことに全く気付かないくらいに熟睡していたらしい。
というか、ぐしょぐしょだった体を綺麗にぬぐい、下着やパジャマを丁寧に僕に着させている律を想像すると、エッチ以上に恥ずかしいものがある。まるで介護のようだ。
半身を起き上がらせると、体の奥に鈍痛が走る。その痛みが何を意味するのか一瞬で思い出されて、やっぱり羞恥に駆られた。
戻ってきた律は、白いアルバムを手にしていた。
「きみに見せたいものがあるんです」
僕の隣に潜り込んできた律の髪から、いつもよりも強く柑橘系の香りがした。風呂に入ったのだろう。
お互いの体の半分がピッタリとくっつく程に密着されて、本当に恋人同士になったのだなと感慨深くなる。
「何?」
「まず、これなんですけど」
アルバムを捲られて目に飛び込んできたのは、海の写真だった。
これは前に見たことがある。僕がこっそり部屋に忍び込んで、たまたま手に取ったアルバムだ。
波や砂浜のいろんな表情が写っている。
「これ?」
「はい。これ、千紘と一緒に行った海なんです」
「え……」
もう1度じっくり見てみるが、5年前に訪れた海だとは分からなかった。
何か目印になるような建物や岩などが写っているのならまだしも、波の形や砂浜だけでそうだと判別できるものではない。
律はあの時の思いを吐露していった。
「千紘にこれを見られた時、気付かれたかと焦りました。俺がいつまでも過去を引きずって先に進めていないのだと知られたくなくて、咄嗟に取り上げたのですが」
「どうして海に写真を撮りに行こうって思ったの?」
「きみと並んで海を見ていたあの時の俺は、どんな気持ちだったんだろうって答えを探すような気持ちで」
「答えは見つかった?」
「いいえ。ただただ、きみにまた会いたいという気持ちばかりが先走って、どうだったのか思い出せないんです。いろんな角度から景色を見てみましたけど、ダメでした」
けど、と、律の長い指がパラパラとページを捲る。
最後のページに挟まっていた写真を僕に見せた。
「これを撮った時の自分のことはよく覚えています。ほんとうは弱いくせに強がるところとか、寂しくてたまらないくせに全然平気だと笑ってしまうような天の邪鬼なあなたの顔が、可愛くて、愛おしいなと思いました」
探せばどこかにデータはあるかもしれない、と言われていた写真。
そこには今よりもあどけなさが残る顔立ちの、高校1年生の僕がいた。
潮風に吹かれて黒髪がふわりと揺れ、戸惑いと怯えを綯い交ぜにしたような強がりの笑みを貼り付けた僕。
その横顔は、思っていたほど変な顔では無かった。
0
あなたにおすすめの小説
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
透けるほどうすい/溶けるほどあつい
鴻上縞
BL
日々何をするでもなく適当に生きていた真柴久志が知人の紹介で入った会社で真柴の教育係になった堂前哲は、仕事は出来るが口調は荒く乱暴で無愛想な取っ付きづらい男だった。しかし歓迎会の席で明かされた哲の驚くべき過去は、真柴の若い好奇心を掻き立てた。
歓迎会の後、真柴は好奇心を抑えきれず、酔に任せて哲に手を出してしまう。
一夜明けて酔いが覚め、気まずさを抱え一応謝罪をしたものの、哲の態度が負けず嫌いな真柴に火を付けて────。
足場鳶職人達の、身体から始まる軽薄で微かに純情な恋物語。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる