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第441話
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一階に降りると、既に朝食がテーブルに並べられていた。
父は新聞を広げていて、俺たちをチラッと見てから、また元の場所に視線を戻す。
「おはようございます」
「……おはよう」
景の挨拶に、とりあえず返事したというような声だ。
本当にこの二人、バーなんかに行ったの?
ハテナばっかりが頭に浮かびつつも、朝ごはんを食べて居間のソファーでくつろいだ。
しばらくしてから、仕事だという父がスーツに着替えて景のところにやってきた。
「帰りも、気を付けて」
「はい、ありがとうございました」
俺には何も言わず、父は玄関に向かって行く。
靴を履いた父は俺たちを振り返り、ニコリとした。
「仲良く暮らしなさい」
柔らかく微笑まれて、ちょっとくすぐったい気持ちになった。
俺は無言で頷いて直ぐに視線を逸らす。
景は「ありがとうございます」と口の端を上げて、父に手を振っていた。
何だかんだで、あまりゆっくりは出来ない。
新幹線に乗らなくてはならないから、お昼にはここを出ないと行けない。
俺は風呂に入って、部屋で景と一緒に支度をし、また駅まで送ってくれるという母にお礼を言った。
「その前に」と景は俺に目配せをする。
「ニャム太に会いたいなぁ」
「あぁ、そうやったね、忘れとった」
きっと二階のあの部屋だ。
その部屋に行き、カーテンの布を捲ってそっと覗くと、やっぱりニャム太はそこにじっと佇んでいた。
「ニャム太。俺たちそろそろ行かんとアカンねん。最後に景とバイバイしてな?」
景がニャム太の方へ手を伸ばす。
ビクッと背筋を反応させてじっと景を睨むニャム太だったけど、柔らかく笑む景に心を許したのか、少しずつ体を出して、景の指先をスンスンと嗅ぎ始めた。
「可愛い。猫って気まぐれなんだよね。人間とはつかず離れずの関係がいいって、何かで読んだ事がある」
「そうそうー。遊んで欲しそうだから構ってあげると面倒そうな顔するくせに、放っておき過ぎるとニャーニャー鳴いて怒り出すし」
「修介と一緒だね」
ムッ、と唇を尖らせる。
景が猫じゃらしを左右に振ると、ニャム太は嬉しそうにその先っぽのふわふわを追いかけていた。
そんな時、俺のスマホにメッセージが入る。
アプリを開いて送られてきた文字を見て、目を見開き、そのまま画面を景に見せた。
「どうする? 会ってみたい?」
「うん。彼のお願い事、まだ叶えられてないからね」
お願い事? と疑問に思ったけど、景は俺の顔に唇を寄せて、深く深くキスをした。
これからも、宜しくね。
そんな景の声が聞こえてくるような気がして、嬉しくなりながら何度も角度を変えて味わった。
体を離してふと視線を移すと、ニャム太は俺たちに全く興味が無いのか、ウロウロとしてからまた窓際にぴょんと乗って、カーテンの後ろに隠れてしまっていた。
「モコにはあんなに見られてたのにね」
「ニャム太、俺たちの事呆れたんかもな」
そうかも、と二人で笑って、もう一度キスをしてから部屋を出た。
父は新聞を広げていて、俺たちをチラッと見てから、また元の場所に視線を戻す。
「おはようございます」
「……おはよう」
景の挨拶に、とりあえず返事したというような声だ。
本当にこの二人、バーなんかに行ったの?
ハテナばっかりが頭に浮かびつつも、朝ごはんを食べて居間のソファーでくつろいだ。
しばらくしてから、仕事だという父がスーツに着替えて景のところにやってきた。
「帰りも、気を付けて」
「はい、ありがとうございました」
俺には何も言わず、父は玄関に向かって行く。
靴を履いた父は俺たちを振り返り、ニコリとした。
「仲良く暮らしなさい」
柔らかく微笑まれて、ちょっとくすぐったい気持ちになった。
俺は無言で頷いて直ぐに視線を逸らす。
景は「ありがとうございます」と口の端を上げて、父に手を振っていた。
何だかんだで、あまりゆっくりは出来ない。
新幹線に乗らなくてはならないから、お昼にはここを出ないと行けない。
俺は風呂に入って、部屋で景と一緒に支度をし、また駅まで送ってくれるという母にお礼を言った。
「その前に」と景は俺に目配せをする。
「ニャム太に会いたいなぁ」
「あぁ、そうやったね、忘れとった」
きっと二階のあの部屋だ。
その部屋に行き、カーテンの布を捲ってそっと覗くと、やっぱりニャム太はそこにじっと佇んでいた。
「ニャム太。俺たちそろそろ行かんとアカンねん。最後に景とバイバイしてな?」
景がニャム太の方へ手を伸ばす。
ビクッと背筋を反応させてじっと景を睨むニャム太だったけど、柔らかく笑む景に心を許したのか、少しずつ体を出して、景の指先をスンスンと嗅ぎ始めた。
「可愛い。猫って気まぐれなんだよね。人間とはつかず離れずの関係がいいって、何かで読んだ事がある」
「そうそうー。遊んで欲しそうだから構ってあげると面倒そうな顔するくせに、放っておき過ぎるとニャーニャー鳴いて怒り出すし」
「修介と一緒だね」
ムッ、と唇を尖らせる。
景が猫じゃらしを左右に振ると、ニャム太は嬉しそうにその先っぽのふわふわを追いかけていた。
そんな時、俺のスマホにメッセージが入る。
アプリを開いて送られてきた文字を見て、目を見開き、そのまま画面を景に見せた。
「どうする? 会ってみたい?」
「うん。彼のお願い事、まだ叶えられてないからね」
お願い事? と疑問に思ったけど、景は俺の顔に唇を寄せて、深く深くキスをした。
これからも、宜しくね。
そんな景の声が聞こえてくるような気がして、嬉しくなりながら何度も角度を変えて味わった。
体を離してふと視線を移すと、ニャム太は俺たちに全く興味が無いのか、ウロウロとしてからまた窓際にぴょんと乗って、カーテンの後ろに隠れてしまっていた。
「モコにはあんなに見られてたのにね」
「ニャム太、俺たちの事呆れたんかもな」
そうかも、と二人で笑って、もう一度キスをしてから部屋を出た。
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