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測定結果は。
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魔力測定後、姉様と兄様に連れられて父様の執務室に向かっていた。
姉様と兄様が父様には話すべきだと判断したからだ。
父様の執務室に着くとノックをする前に扉が開いた。
(ノックの前に開いた!?)
「おや、ルーチェ様、ルークス様如何なさいましたか?」
「セバス、セーラの事で話があると父様に伝えてくれ。」
中から父様専属の執事セバスチャンが出てくると、兄様はそう言って私を見ると、その視線を追ってセバスチャンも私に気付き目を細めた。
「セーラ様までお越しとは…。すぐ取次ぎます。…奥様もお呼びした方が良さそうですね。」
「お願いします。」
セバスチャンは只事ではなさそうだと気付いたのか、そう言って部屋に戻ると数秒後、父様が直ぐに出て来た。
「セーラ!私の所に来るなんて!ルーチェ、ルークスもどうしたんだい?」
私を抱き上げて頬ずりしながら言う父様に、二人は顔を見合わせた。
普段この場所に私達子供が行く事はないだけに不思議そうに見ている。
「父様、セバスに母様を呼ぶ様お願いしました。」
「話はそれからで。とりあえず落ちつける場所に移動しませんか?」
「…最近は落ちたと思ったけど、…二人ともまた何かしたのかい?」
(…また?)
頬ずりを止めて、困った顔をしながら父様は二人を見ている。
(私の中で、二人は完璧な兄様と姉様なんだけど…。実は違うのかな?)
父様の腕の中でそんな事を考えていると、いつの間にか談話室に来ていた。
中には既に母様と、人数分のお茶を用意しているセバスチャンがいた。
(セバスチャン…すごい…。)
私の視線に気づいたセバスチャンが、一瞬だけ目を細めた。
「!(おおっ!カッコいい!!)」
出来る執事の鏡の様なセバスチャンに感動している私を父様は座らせてくれた。両隣は姉様と兄様だ。
皆が座るとお茶を口にしていた母様がふぅ…、と一息着いて私達を見た。
「…それで?今度は何をしたのかしら?」
可憐に微笑んでいるはずの母様から、黒いモノを感じるのは私だけではないはず。
(兄様!姉様!なにしたの~!?)
「何もしてません!」
兄様は慌てて母様に言うと、あら、と母様は黒いモノを引っ込めた。
「じゃあ、皆を呼び出したのはどうしてなのかな?」
「お茶を飲みたかった訳ではないでしょう?」
父様と母様に言われて、二人は顔を見合わせると水晶を取り出す。
「先日セーラの前で魔法を使ったら、興味を持ったんです。」
「私達みたいな事にならない様に、基礎を教えるために魔力適性をしました。」
「…。」
「…でも、これは見てもらった方がいいと思います。」
二人に黙って魔力測定をした事を諭すかどうか複雑そうな二人を他所に、淡々と説明する姉様と兄様。
姉様は二人に見て欲しいと私の前に水晶を置いた。
「セーラ、さっきと同じ様に手を置いて?」
「…はい。」
「大丈夫だよ。」
姉様に言われて手を恐る恐る近づけると、兄様が隣で優しく諭してくれる。
水晶に手を置くと、先程と同じく光始めた。
「「……。」」
皆、無言だった。
どれくらいの沈黙が流れただろう。
「はぁ…。まさかセーラが全属性とは…。」
「…しかも聖属性まで。ルーチェ、ルークス、直ぐに知らせてくれてありがとう。」
脱力した様子の父様と母様に、二人は頷く。
兄様と姉様の話曰く、聖属性を持つ人はこの世界に数人しかいないらしく、神と崇められ聖堂に連れて行かれるとか。
「どうしたものか…。」
「どうもなりません。僕達がセーラを守る事に変わりはありませんから。」
「…何処にも行かせませんわ。」
私の手を二人はぎゅっ、と握ってくれた。
そんな二人の頭を優しく父様と母様は撫でる。
「…セバス。」
「….承知しました。お任せ下さい。」
セバスチャンはそう言って、部屋から出て行った。
「…。」
「大丈夫だよ。私達もセバスも皆、セーラを必ず守るからね。」
不安が顔に出ていたのか、父様が私の頬をそっと大きな手で包み込む。
「セーラ、魔法は少し待ってくれるかい?落ち着いたら、ルーチェとルークスから教わるといい。」
「はい…。」
「セーラ、楽しみが少し伸びただけよ。直ぐに落ち着来ますからね。」
父様と母様は私に優しく諭してくれた。
(こんなに優しい家族に囲まれて、大事にされて幸せだな、私…。)
私は幸せ過ぎてすっかり忘れていた。
これが、あのゲームの世界だった事を。
(ちゃんと思い出して対策しなきゃいけないな…。)
◇◇◇◇◇◇
自室で一人、黙々とひたすらペンを動かしている私。
覚えている限りを書き写していた。
そう、忘れていたのだ。
ヒロインが全属性を持っていた事を。
前世の記憶がこの世界に生まれてから、消えてきている?
何かしらの影響がないと忘れてしまうなんてない。
私は記憶力はいい方だったから。
「…よし。」
一息着いて、書き出した紙を見つめる。
私は紙に覚えている限りを“日本語”で書いた。
見られた時でも大丈夫な様に。念には念を入れておく。
まず、覚えていた事。
・ ヒロイン4歳の時、義弟が出来る。
(一人目の攻略キャラね…。)
・ 王子との出会い。
(確か、偶然出会ったんだ。)
・15歳でエトワール学園に入学する。
・16歳で攻略キャラの残り五人と出会う。
(こんなものかなぁ?色々忘れてしまってるけど…。)
取り敢えず、18歳までに恋愛要素がなければきっと乗り越えられる。
聖女問題は、父様が動いてくれてるし…。
きっと大丈夫。
それなら私が出来る事は、知識集めと味方作り。
後は、やっぱり魔法使いでしょ!
(ああ、早く魔法が使いたい!)
まだ見ぬ魔法の世界に胸躍らせていると、
誰かが私の部屋に入って来た。
姉様と兄様が父様には話すべきだと判断したからだ。
父様の執務室に着くとノックをする前に扉が開いた。
(ノックの前に開いた!?)
「おや、ルーチェ様、ルークス様如何なさいましたか?」
「セバス、セーラの事で話があると父様に伝えてくれ。」
中から父様専属の執事セバスチャンが出てくると、兄様はそう言って私を見ると、その視線を追ってセバスチャンも私に気付き目を細めた。
「セーラ様までお越しとは…。すぐ取次ぎます。…奥様もお呼びした方が良さそうですね。」
「お願いします。」
セバスチャンは只事ではなさそうだと気付いたのか、そう言って部屋に戻ると数秒後、父様が直ぐに出て来た。
「セーラ!私の所に来るなんて!ルーチェ、ルークスもどうしたんだい?」
私を抱き上げて頬ずりしながら言う父様に、二人は顔を見合わせた。
普段この場所に私達子供が行く事はないだけに不思議そうに見ている。
「父様、セバスに母様を呼ぶ様お願いしました。」
「話はそれからで。とりあえず落ちつける場所に移動しませんか?」
「…最近は落ちたと思ったけど、…二人ともまた何かしたのかい?」
(…また?)
頬ずりを止めて、困った顔をしながら父様は二人を見ている。
(私の中で、二人は完璧な兄様と姉様なんだけど…。実は違うのかな?)
父様の腕の中でそんな事を考えていると、いつの間にか談話室に来ていた。
中には既に母様と、人数分のお茶を用意しているセバスチャンがいた。
(セバスチャン…すごい…。)
私の視線に気づいたセバスチャンが、一瞬だけ目を細めた。
「!(おおっ!カッコいい!!)」
出来る執事の鏡の様なセバスチャンに感動している私を父様は座らせてくれた。両隣は姉様と兄様だ。
皆が座るとお茶を口にしていた母様がふぅ…、と一息着いて私達を見た。
「…それで?今度は何をしたのかしら?」
可憐に微笑んでいるはずの母様から、黒いモノを感じるのは私だけではないはず。
(兄様!姉様!なにしたの~!?)
「何もしてません!」
兄様は慌てて母様に言うと、あら、と母様は黒いモノを引っ込めた。
「じゃあ、皆を呼び出したのはどうしてなのかな?」
「お茶を飲みたかった訳ではないでしょう?」
父様と母様に言われて、二人は顔を見合わせると水晶を取り出す。
「先日セーラの前で魔法を使ったら、興味を持ったんです。」
「私達みたいな事にならない様に、基礎を教えるために魔力適性をしました。」
「…。」
「…でも、これは見てもらった方がいいと思います。」
二人に黙って魔力測定をした事を諭すかどうか複雑そうな二人を他所に、淡々と説明する姉様と兄様。
姉様は二人に見て欲しいと私の前に水晶を置いた。
「セーラ、さっきと同じ様に手を置いて?」
「…はい。」
「大丈夫だよ。」
姉様に言われて手を恐る恐る近づけると、兄様が隣で優しく諭してくれる。
水晶に手を置くと、先程と同じく光始めた。
「「……。」」
皆、無言だった。
どれくらいの沈黙が流れただろう。
「はぁ…。まさかセーラが全属性とは…。」
「…しかも聖属性まで。ルーチェ、ルークス、直ぐに知らせてくれてありがとう。」
脱力した様子の父様と母様に、二人は頷く。
兄様と姉様の話曰く、聖属性を持つ人はこの世界に数人しかいないらしく、神と崇められ聖堂に連れて行かれるとか。
「どうしたものか…。」
「どうもなりません。僕達がセーラを守る事に変わりはありませんから。」
「…何処にも行かせませんわ。」
私の手を二人はぎゅっ、と握ってくれた。
そんな二人の頭を優しく父様と母様は撫でる。
「…セバス。」
「….承知しました。お任せ下さい。」
セバスチャンはそう言って、部屋から出て行った。
「…。」
「大丈夫だよ。私達もセバスも皆、セーラを必ず守るからね。」
不安が顔に出ていたのか、父様が私の頬をそっと大きな手で包み込む。
「セーラ、魔法は少し待ってくれるかい?落ち着いたら、ルーチェとルークスから教わるといい。」
「はい…。」
「セーラ、楽しみが少し伸びただけよ。直ぐに落ち着来ますからね。」
父様と母様は私に優しく諭してくれた。
(こんなに優しい家族に囲まれて、大事にされて幸せだな、私…。)
私は幸せ過ぎてすっかり忘れていた。
これが、あのゲームの世界だった事を。
(ちゃんと思い出して対策しなきゃいけないな…。)
◇◇◇◇◇◇
自室で一人、黙々とひたすらペンを動かしている私。
覚えている限りを書き写していた。
そう、忘れていたのだ。
ヒロインが全属性を持っていた事を。
前世の記憶がこの世界に生まれてから、消えてきている?
何かしらの影響がないと忘れてしまうなんてない。
私は記憶力はいい方だったから。
「…よし。」
一息着いて、書き出した紙を見つめる。
私は紙に覚えている限りを“日本語”で書いた。
見られた時でも大丈夫な様に。念には念を入れておく。
まず、覚えていた事。
・ ヒロイン4歳の時、義弟が出来る。
(一人目の攻略キャラね…。)
・ 王子との出会い。
(確か、偶然出会ったんだ。)
・15歳でエトワール学園に入学する。
・16歳で攻略キャラの残り五人と出会う。
(こんなものかなぁ?色々忘れてしまってるけど…。)
取り敢えず、18歳までに恋愛要素がなければきっと乗り越えられる。
聖女問題は、父様が動いてくれてるし…。
きっと大丈夫。
それなら私が出来る事は、知識集めと味方作り。
後は、やっぱり魔法使いでしょ!
(ああ、早く魔法が使いたい!)
まだ見ぬ魔法の世界に胸躍らせていると、
誰かが私の部屋に入って来た。
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