私がヒロイン!?〜いえ、丁重にお断りします!

SORA

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ピンチです。

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私、セーラ。
只今、絶賛勉強中です。

「…ゔ~。くれあ~!」

「セーラ様、ダラしないですよ!」

テーブルの上に、ぐたっ、と両手を伸ばす私に、一刀するクレアが眉を寄せている。

「…あまいものがたべたい。」

「イーチの実お持ちしますか?」

「…やだ。」

「セーラ様…。…!」

テーブルから顔を上げない私を、困った顔をして見ているクレア。
ちなみにイーチの実はイチゴに似た果物だった。

ふと、私の上が暗くなって顔を上げると母様がいた。

「クレアを困らせてはいけませんよ。」

「かあさま!」

「あらあら。甘えたさんですね。」

滅多に来ない突然の訪問者に、嬉しさが増してその腕の中に飛び込んだ。

誰ですか?
中身は大人なんて言うのは。私はまだ子供です。

「どうしたの?お勉強、嫌になってしまったかしら。」

母様が私の頭を優しく撫でると、頭を横に振った。

「…あまいものがたべたい、です。」

「甘い物…。」

唸る私に、母様は少しだけ目を大きくした。それに私は気づかなかった。
勉強し過ぎで、脳が糖分を欲していた。

「…クッキーとか、ケーキ…とか…?」

「!!」

母様がポツリ、と漏らしたその響きに私は驚いて顔を上げると、母様が何とも言えない様な顔をしていた。

「あるんですか!?」

「いいえ。今は…ないわ。」

「…そうですか。」

私は諦めて、クレアが持ってきてくれたイーチの実を少しずつ食べた。
隣で考え込んでいた母様は頑張ってね、と頭を撫でると部屋を出て行った。

(どうしたんだろう…?)

不思議に思いながらも、イーチの実を口の中で堪能していた。

(ああ、お菓子が食べたい…。)


その日の夜、部屋で魔力を流す練習をしている私の部屋に、父様と母様、そしてセバスチャンがやってきた。

「旦那様、奥様。どうなさったのですか?」

「とうさま?かあさま?」

ベットメイクをしてくれていた、クレアが慌てて駆け寄る。

「クレア、今日はもう大丈夫ですから下がりなさい。」

セバスチャンに言われて、クレアが何か言いたそうにしていたけど、一礼して部屋を出た。

「どうしたんですか?」

「セーラ、おいで。」

首を傾げる私を優しく手招きする父様。

【風よ、我が声に応えよ。】

部屋に防音の魔法を施すセバスチャンにいよいよ訳が分からない。

「驚かせてしまったかな?ごめんね、セーラ。クレアには少し聞かれたくない事だったからね。」

父様は私を膝に乗せると、優しく撫でてくれる。

「甘い物でも食べながら話したいわね。紅茶に合うのは何がいいかしらね?セバス。」

「…ケーキなどがご用意出来ればよろしいのですが、夕食後ですので。」

「くっきーとか、ちょこはどうですか?」

母様が紅茶を入れるセバスチャンに訪ねると、用意してもらえるのかと聞き慣れた食べ物の名前に私の胸は高鳴る。

(甘い物が食べられるかもっ!)

父様と母様は顔を見合わせて頷きセバスチャンは後ろに控えた。

「…?」

「すまない、セーラ。クッキーもチョコも今は用意出来ないんだ。」

「そうですか…。」

父様が眉を下げて謝ってくれたけど、久しぶりに食べられるかもしれないと思っていた私は目に見えてガッカリしていただろう。

(ん…?久しぶり?)

甘い物を食べたのはいつだった?
この世界に生まれ変わって、ケーキやクッキーなんて見た事あっただろうか?

いやこの家でなくても、見た事ない。
この世界の食べ物は、素材の味そのままか、塩味がメインだ。

甘い物なんて、果物をそのまま食べるくらいなはず…。

(じゃあ、何で父様と母様は知ってるの…?)

恐る恐る私を抱く父様を見上げると、目を細めて私を見ていた。

◇◇◇◇◇


私、セーラ。
だだ今絶賛パニックです。

こんな事態を誰が予想したでしょう。シナリオになんか無かった!

父様と母様それにセバスチャンまでが、この世界に存在する筈のないケーキやチョコ、クッキーなんて物の存在を知ってるのか。

「セーラ、驚かせてごめんね。」

混乱していた私の頭を撫でながら父様は謝った。

「…とうさま?」

「ねぇ、セーラ。…セーラは生まれ変わりって信じる?」

「え…?」

母様の唐突な質問に、驚きを隠しきれなかった。

「私とリリーには、昔一緒に旅をしていた友がいたんだ。」

「彼はとても変わっていてね?此処ではない所から来たらしいの。」

「!!」

「その人は、地球と言う国から来たんだそうだよ。」

「!!?」

(転生者が他にもいたの!?しかも、自分から暴露した!?)

父様と母様の話に驚きを隠せずにいた。
そんな様子を見た二人は顔を見合わせて頷くと、母様はそっと私の頬に手を当てた。

「セーラにもわかるのね…?」

「…かあさま。」

私は口を噤んでしまった。

母様も父様もきっと信じて助けてくれる。
けれど、もし父様や母様に知ってしまった為にラノベの様な『強制力』が動いてしまったら?

私だけならいい。

でも、大好きな人達を巻き込んでいいのだろうか?
そのせいで、大好きな人達は不幸になったりしないだろうか?

悶々と悩み話す事を躊躇している私の頭に、父様の手がふわり、と乗る。

「セーラ、大丈夫だよ。言いたくないなら無理に話さなくていいんだ。」

「とうさま…。」

「私達は、何があってもセーラの味方だからね。」

「そうよ。セーラは私達の大切な宝物なんですからね。」

「かあさま…。」

目を細めて私を優しく見つめる父様と母様に、私の視界が歪む。
瞬きをすると、大きな雫が一つ落ちた。

「…とうさま、かあさま。いまはごめんなさい…。いいたいけど、いえません…っ。」

「セーラ…。」

「…いいのよ。泣かないで…?」

涙が止まらない私を、宥めながら母様が背中を摩ってくれる。

「…わたしがおしえて、みんなになにがあるか…わからない…から…。」

「?」

そう言うと、二人は顔を見合わせる。

「セーラ、それは…。」

「「!!」」

父様がそう言いかけた瞬間。


バンッー!!


突然、窓が開いて突風が吹き込んできた。

「!?」

(なに…?)

窓の方で風が渦巻いている。

父様が私を守る様に前に出ると、母様は私を抱きしめた。
セバスチャンも父様と前に出る。

「ーそれは、『強制力』の事だねぇ?」

「! お前は…!!」

そう言いながら渦の中から出て来たのは、深緑色のマントを纏った無精髭の男の人だった。

父様とセバスチャンは警戒を解いた。
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