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同郷者でした。
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深緑色のマントの男はゆっくりと近づいて来た。
(シナリオに…こんな人出てきた?)
私が母様の腕をぎゅっ、と握ると、母様が優しく頭を撫でた。
母様を見ると、目を細めてくれる。
「やあ、久しぶりだねぇ!ソティ、リリー、元気かい?セバスは変わらないねえ。」
そう言いながら父様の側まで来ると握手した。
「アチェロ!久しぶりだな!!」
「アチェロ様、せめて玄関からお入り下さい。」
父様と握手を交わす、深緑色のマント男事、アチェロさんはセバスチャンに言われて、頭をかいた。
「悪いねえセバス。お前さんの魔力を辿ってきたら、ここに着いちまってねえ。」
「相変わらずですね、アチェロ。セーラが驚いてしまったわ。」
母様がそう言うと、アチェロさんが私を見た。
前髪が長くて、目がよく見えないが視線を感じる。
「とりあえずセバス、お茶を頼むよ。アチェロ、座って話そう。ある意味いい時に来た。」
「ああ~、さっきチラッと聞こえたあれかい。」
(どこから聞こえたんだろう。セバスが防音していたはずなのに…。)
父様に諭され皆が座ると、アチェロさんは私をジッ、と見ている。
「アチェロ、ジロジロ見過ぎだよ。セーラが怖がる。」
「ああ、悪いねえ!チビ姫さん、初めまして。オイラはアチェロ。チビ姫さんの父さんと母さんの古い友達だよ。」
「…はじめまして。へるつぉーくけじじょ、せーらです。」
私が椅子から降りて挨拶すると、口先が上がっているのが見えた。
喜んでいるみたいだな…。
目が見えないから、表情が読めない。
「セーラの為に魔法を教えに来てくれたのよ。今日から、この家で一緒に生活してもらいますからね。」
「セーラに何かしたら…。」
母様が私の頭を撫でて言うと、父様がアチェロさんをギロリ、と視線を向けた。
「オイラはチビ姫さんには興味はないよ~。…違う興味ならあるけどねえ。」
「アチェロ…。」
アチェロさんはチャラけた様に言って、その目だけは私を射抜いていた。
「…チビ姫さん、君は転生者かい?」
「!!」
私が驚いて目を大きくしていると、アチェロさんの纏っている空気が和らいでいた。
「驚かせてごめんよ?君の父さんと母さんから聞いてないかい?」
「?」
「セーラ、彼が僕達の古くからの友達で、さっき話した異世界の人だよ。」
「!!」
(…この人が。)
父様に言われて思わずジッ、と見つめている私に、アチェロは長い前髪の隙間から、優しく目を細めて私を見ていた。
「…チビ姫さんが言いたくないのは、大事な人達がそれを知って不幸に巻き込まれると思ってかい?」
「!?」
「ははっ!チビ姫さん、思ってる事が顔に出すぎだよ~!」
アチェロさんに言われて驚く私の頭を、クシャリ、と撫でた。
思わず頬を両手で覆うと、アチェロさんは後ろにいる父様を見た。
「…大丈夫さ。既にオイラもソティやリリーに話してる。今更チビ姫さんが話しても変わらないよ。」
「はい…。」
「それに…『強制力』が起きてるなら既に始まってる。それに抗う己の強さを身につければいいんだ!」
「あちぇろさん…。」
「考えてもみろ?なんで俺は飛ばされた!?なんで記憶がそのままだ!?」
「アチェロ、落ち着け。」
「定めを変えないなら、初めから俺達の記憶なんて消していればよかったんだっ!!」
アチェロさんは私を見ている様で、違う何処かを見て泣き叫んでいる様に見えた。
(この人は…いきなりこの世界に飛ばされて来たんだ…。たった一人で…。)
気がつくと私はアチェロさんを抱きしめていた。
「…。」
「…! チビ姫さん…っ!?」
「セーラ!?」
どうしていいか分からずに、アチェロさんの手は宙を彷徨う。
父様は、慌てて近づいて来た。
「…ありがとう…ございます…。」
「…っつ…!!」
(貴方が無事にこの世界で生きてこれて…よかった…。)
「…あちぇろさんにあえて…よかった…。」
「…っう…!…ゔぅっ…っつ…!!」
ぎゅっ、と抱きしめてアチェロさんに感謝を伝えると、アチェロさんは私を抱きしめて泣き崩れた。
どれ程の辛い事があったんだろう。
何も無い。誰も知らない。
孤独な世界でたった一人で生きて来たアチェロさん。
父様達に愛されて生まれ変わった私には想像すら出来ないけど、アチェロさんが望むなら一緒に故郷の話をしよう。
あの懐かしい私達の地球(故郷)の話をーー。
(シナリオに…こんな人出てきた?)
私が母様の腕をぎゅっ、と握ると、母様が優しく頭を撫でた。
母様を見ると、目を細めてくれる。
「やあ、久しぶりだねぇ!ソティ、リリー、元気かい?セバスは変わらないねえ。」
そう言いながら父様の側まで来ると握手した。
「アチェロ!久しぶりだな!!」
「アチェロ様、せめて玄関からお入り下さい。」
父様と握手を交わす、深緑色のマント男事、アチェロさんはセバスチャンに言われて、頭をかいた。
「悪いねえセバス。お前さんの魔力を辿ってきたら、ここに着いちまってねえ。」
「相変わらずですね、アチェロ。セーラが驚いてしまったわ。」
母様がそう言うと、アチェロさんが私を見た。
前髪が長くて、目がよく見えないが視線を感じる。
「とりあえずセバス、お茶を頼むよ。アチェロ、座って話そう。ある意味いい時に来た。」
「ああ~、さっきチラッと聞こえたあれかい。」
(どこから聞こえたんだろう。セバスが防音していたはずなのに…。)
父様に諭され皆が座ると、アチェロさんは私をジッ、と見ている。
「アチェロ、ジロジロ見過ぎだよ。セーラが怖がる。」
「ああ、悪いねえ!チビ姫さん、初めまして。オイラはアチェロ。チビ姫さんの父さんと母さんの古い友達だよ。」
「…はじめまして。へるつぉーくけじじょ、せーらです。」
私が椅子から降りて挨拶すると、口先が上がっているのが見えた。
喜んでいるみたいだな…。
目が見えないから、表情が読めない。
「セーラの為に魔法を教えに来てくれたのよ。今日から、この家で一緒に生活してもらいますからね。」
「セーラに何かしたら…。」
母様が私の頭を撫でて言うと、父様がアチェロさんをギロリ、と視線を向けた。
「オイラはチビ姫さんには興味はないよ~。…違う興味ならあるけどねえ。」
「アチェロ…。」
アチェロさんはチャラけた様に言って、その目だけは私を射抜いていた。
「…チビ姫さん、君は転生者かい?」
「!!」
私が驚いて目を大きくしていると、アチェロさんの纏っている空気が和らいでいた。
「驚かせてごめんよ?君の父さんと母さんから聞いてないかい?」
「?」
「セーラ、彼が僕達の古くからの友達で、さっき話した異世界の人だよ。」
「!!」
(…この人が。)
父様に言われて思わずジッ、と見つめている私に、アチェロは長い前髪の隙間から、優しく目を細めて私を見ていた。
「…チビ姫さんが言いたくないのは、大事な人達がそれを知って不幸に巻き込まれると思ってかい?」
「!?」
「ははっ!チビ姫さん、思ってる事が顔に出すぎだよ~!」
アチェロさんに言われて驚く私の頭を、クシャリ、と撫でた。
思わず頬を両手で覆うと、アチェロさんは後ろにいる父様を見た。
「…大丈夫さ。既にオイラもソティやリリーに話してる。今更チビ姫さんが話しても変わらないよ。」
「はい…。」
「それに…『強制力』が起きてるなら既に始まってる。それに抗う己の強さを身につければいいんだ!」
「あちぇろさん…。」
「考えてもみろ?なんで俺は飛ばされた!?なんで記憶がそのままだ!?」
「アチェロ、落ち着け。」
「定めを変えないなら、初めから俺達の記憶なんて消していればよかったんだっ!!」
アチェロさんは私を見ている様で、違う何処かを見て泣き叫んでいる様に見えた。
(この人は…いきなりこの世界に飛ばされて来たんだ…。たった一人で…。)
気がつくと私はアチェロさんを抱きしめていた。
「…。」
「…! チビ姫さん…っ!?」
「セーラ!?」
どうしていいか分からずに、アチェロさんの手は宙を彷徨う。
父様は、慌てて近づいて来た。
「…ありがとう…ございます…。」
「…っつ…!!」
(貴方が無事にこの世界で生きてこれて…よかった…。)
「…あちぇろさんにあえて…よかった…。」
「…っう…!…ゔぅっ…っつ…!!」
ぎゅっ、と抱きしめてアチェロさんに感謝を伝えると、アチェロさんは私を抱きしめて泣き崩れた。
どれ程の辛い事があったんだろう。
何も無い。誰も知らない。
孤独な世界でたった一人で生きて来たアチェロさん。
父様達に愛されて生まれ変わった私には想像すら出来ないけど、アチェロさんが望むなら一緒に故郷の話をしよう。
あの懐かしい私達の地球(故郷)の話をーー。
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