22 / 58
☆22
しおりを挟む
寂しい。
そう口にしてしまえば、その思いの正体に気づくのは早かった。
俺はマーガレットに惹かれているのだろう。
グレース様と話しているマーガレットを横目に見ると、花の咲く様な笑顔が眩しくて目を細める。
「…はぁ、いっその事ヘクターとマーガレットちゃんが結婚してこの家に入ればいいのだけど…。」
「「 !? 」」
話をしていたグレース様は突然とんでもない事を言い出した。
何を言っているんだ!?
爆弾発言に驚いていると、マーガレットも驚いて目を大きく開いている。
それはそうだろう。突然そんな事を言われても困るに決まってる。結婚なんて!
マーガレットと結婚…。
そんな想像に一瞬頬が緩みそうになっているとグレース様が嬉しそうに俺とマーガレットを見た。
「…ん? …そうよ、そうだわ!マーガレットちゃん、ヘクターと婚約するのはどうかしら!」
「グレース様!」
「あ、あの…。」
「マーガレットちゃんはヘクターが相手じゃ嫌かしら…?」
グレース様は追い討ちをかける様に困惑しているマーガレットに畳み掛けるように言う。
「やっぱり平民は難しいかしらね?それなら私の養子に出来るけれど…。」
その一言で俺は所詮マーガレットも貴族なのかと、裏切られた様な気持ちになった。
けれど次の瞬間ーー。
「平民とか貴族とか関係ありません。」
そうマーガレットの口からはっきりと関係ないと告げられた。
胸の奥が熱くなる。
望んでもいいのか?
これからマーガレットと…。
俺がそう考えていると、グレース様が話を纏めようとした。
「あら!じゃあ…。」
「…すみません。不敬をお許し下さい。申し訳ありませんがお断りします。」
マーガレットのその一言で、俺は金縛りに掛かった様に動けなくなる。
そんな俺を一瞬グレース様が心配そうに見たが、それどころでは無い。
何故ーー?
何故?俺じゃ駄目なんだ?平民だから?
いや、マーガレットはそれは関係ないと言っていた。
じゃあ何故…?
まさかクラウスか!?
いや、避けられていると言っていた。じゃあ何故…。
頭の中をグルグルと嫌な考え巡っている。
俺は金縛りにあった様に身動きが取れずにいた。
「理由を聞いてもいいかしら…。これでも、マーガレットちゃんがヘクターを嫌ってない事くらいちゃんと判るのよ?」
グレース様がそう切り出すと、少し間を置いてマーガレットは睫毛を伏せて、今まで見た事もないくらい悲しい顔をした。
「…ずっとお慕いしている人がいるのです。」
「…っ!」
「あら…そう、そうなのね…。」
そしてマーガレットは、それは〝叶わない想い〟だと言って静かに涙を流した。
その姿はとても儚げで…とても綺麗だと思った。
こんなにも思われている其奴はマーガレットの気持ちを知っているのか?
マーガレットにこんなにも思われて。
其奴が羨ましいとさえ思ってしまう。
そしてマーガレットは〝まだ〟他の人を考えられないと言った。
そう、〝まだ〟だ。
それなら時間をかけてマーガレットを振り向かせればいい。
「マーガレット、逃げられると思うなよ?」
俺はマーガレットを振り向かせて見せる。
そう決意した。
◇◇◇◇◇
「クラウス。」
マーガレットがブラン家に帰った翌日、俺は任務を終えて帰るクラウスを呼び止めた。
「ヘクター。お疲れ。」
「ああ。」
「珍しいな君から話しかけるなんて。何かいい事でも?」
柔らかな笑みを浮かべて俺を見るクラウスは、返事の無い俺に首を傾げた。
「…マーガレット。」
「!!」
俺がマーガレットの名前を出すと、クラウスは驚いて笑顔を消した。
「…どうして彼女の名前を?」
「グレース様がマーガレットを保護していた。」
「…そうか。通りで学園を探しても居なかった訳だ。」
射る様な目で俺を見るクラウスにそう言うと、安心した様に目を細めた。
「クラウス、悪いな。」
「…それは何に対しての謝罪だ?」
「マーガレットは渡さない。」
「!?」
真っ直ぐクラウスを見て言い切った俺は、射殺さんばかりのクラウスの視線を受け止める。
先にマーガレットに気付いたのはクラウスだ。けれどマーガレットの側にいたい。そう思ってしまった。だからお前にもマーガレットは渡さない。
「それと…マーガレットには惚れた奴がいる。」
「惚れた奴?…誰だ其奴は。」
「さあな、俺の言いたかった事はそれだけだ。…じゃあな。」
「…っ!ヘクター!!」
踵を返して立ち去る俺にクラウスは何か言いたげだったが無視してその場を去った。
敵に塩を贈るのは不本意だか仕方ない。
クラウスの〝気まぐれ〟がマーガレットとの出会いをくれたのだ。
それには感謝しなければならない。
これで借りは無しだ。
正々堂々、マーガレットを捕まえる。
そう思いながら、マーガレットの居ないアスバン家に足を向けた。
そう口にしてしまえば、その思いの正体に気づくのは早かった。
俺はマーガレットに惹かれているのだろう。
グレース様と話しているマーガレットを横目に見ると、花の咲く様な笑顔が眩しくて目を細める。
「…はぁ、いっその事ヘクターとマーガレットちゃんが結婚してこの家に入ればいいのだけど…。」
「「 !? 」」
話をしていたグレース様は突然とんでもない事を言い出した。
何を言っているんだ!?
爆弾発言に驚いていると、マーガレットも驚いて目を大きく開いている。
それはそうだろう。突然そんな事を言われても困るに決まってる。結婚なんて!
マーガレットと結婚…。
そんな想像に一瞬頬が緩みそうになっているとグレース様が嬉しそうに俺とマーガレットを見た。
「…ん? …そうよ、そうだわ!マーガレットちゃん、ヘクターと婚約するのはどうかしら!」
「グレース様!」
「あ、あの…。」
「マーガレットちゃんはヘクターが相手じゃ嫌かしら…?」
グレース様は追い討ちをかける様に困惑しているマーガレットに畳み掛けるように言う。
「やっぱり平民は難しいかしらね?それなら私の養子に出来るけれど…。」
その一言で俺は所詮マーガレットも貴族なのかと、裏切られた様な気持ちになった。
けれど次の瞬間ーー。
「平民とか貴族とか関係ありません。」
そうマーガレットの口からはっきりと関係ないと告げられた。
胸の奥が熱くなる。
望んでもいいのか?
これからマーガレットと…。
俺がそう考えていると、グレース様が話を纏めようとした。
「あら!じゃあ…。」
「…すみません。不敬をお許し下さい。申し訳ありませんがお断りします。」
マーガレットのその一言で、俺は金縛りに掛かった様に動けなくなる。
そんな俺を一瞬グレース様が心配そうに見たが、それどころでは無い。
何故ーー?
何故?俺じゃ駄目なんだ?平民だから?
いや、マーガレットはそれは関係ないと言っていた。
じゃあ何故…?
まさかクラウスか!?
いや、避けられていると言っていた。じゃあ何故…。
頭の中をグルグルと嫌な考え巡っている。
俺は金縛りにあった様に身動きが取れずにいた。
「理由を聞いてもいいかしら…。これでも、マーガレットちゃんがヘクターを嫌ってない事くらいちゃんと判るのよ?」
グレース様がそう切り出すと、少し間を置いてマーガレットは睫毛を伏せて、今まで見た事もないくらい悲しい顔をした。
「…ずっとお慕いしている人がいるのです。」
「…っ!」
「あら…そう、そうなのね…。」
そしてマーガレットは、それは〝叶わない想い〟だと言って静かに涙を流した。
その姿はとても儚げで…とても綺麗だと思った。
こんなにも思われている其奴はマーガレットの気持ちを知っているのか?
マーガレットにこんなにも思われて。
其奴が羨ましいとさえ思ってしまう。
そしてマーガレットは〝まだ〟他の人を考えられないと言った。
そう、〝まだ〟だ。
それなら時間をかけてマーガレットを振り向かせればいい。
「マーガレット、逃げられると思うなよ?」
俺はマーガレットを振り向かせて見せる。
そう決意した。
◇◇◇◇◇
「クラウス。」
マーガレットがブラン家に帰った翌日、俺は任務を終えて帰るクラウスを呼び止めた。
「ヘクター。お疲れ。」
「ああ。」
「珍しいな君から話しかけるなんて。何かいい事でも?」
柔らかな笑みを浮かべて俺を見るクラウスは、返事の無い俺に首を傾げた。
「…マーガレット。」
「!!」
俺がマーガレットの名前を出すと、クラウスは驚いて笑顔を消した。
「…どうして彼女の名前を?」
「グレース様がマーガレットを保護していた。」
「…そうか。通りで学園を探しても居なかった訳だ。」
射る様な目で俺を見るクラウスにそう言うと、安心した様に目を細めた。
「クラウス、悪いな。」
「…それは何に対しての謝罪だ?」
「マーガレットは渡さない。」
「!?」
真っ直ぐクラウスを見て言い切った俺は、射殺さんばかりのクラウスの視線を受け止める。
先にマーガレットに気付いたのはクラウスだ。けれどマーガレットの側にいたい。そう思ってしまった。だからお前にもマーガレットは渡さない。
「それと…マーガレットには惚れた奴がいる。」
「惚れた奴?…誰だ其奴は。」
「さあな、俺の言いたかった事はそれだけだ。…じゃあな。」
「…っ!ヘクター!!」
踵を返して立ち去る俺にクラウスは何か言いたげだったが無視してその場を去った。
敵に塩を贈るのは不本意だか仕方ない。
クラウスの〝気まぐれ〟がマーガレットとの出会いをくれたのだ。
それには感謝しなければならない。
これで借りは無しだ。
正々堂々、マーガレットを捕まえる。
そう思いながら、マーガレットの居ないアスバン家に足を向けた。
11
あなたにおすすめの小説
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。
ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・
強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる