モブのモブ!? 気付いたら、大好きなアニメの世界だった!?

SORA

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私は今、壁際に追い詰められ、追い詰めたその人の手で逃げ道を塞がれていた。


まずい…。どうしてこの人が此処にいるの!?


ーーそれは、少し前に遡る。

◇◇◇◇◇◇◇

ストーリーが動き始めているのだろうか。

この所、ユーリやケヴィン達が慌ただしく動いている様で学園に来ない日もある。

それはクラウスとヘクターもなのだけれど、彼らは王都での活動がメインな筈で居ないのは当たり前だ。

会えないのは寂しいけれど…。
それは無事にストーリーが進んでいる証だ。

これでいいんだ。
そう思いつつ過ごしていたある日それは起きた。


時間が会う時に一緒に帰るシーラは、急なお客様の来訪で別々に帰る事になった。

「マーガレットごめんなさい!今日一緒に帰れなくて。」

「大丈夫よ。シーラ気をつけてね。」

カーク家に急いでいたシーラを見送って、私はゆっくり学園の廊下を歩いていた。

目の前に人の気配がして、距離を取っていたのだけれど、すれ違いざまに手がぶつかってしまう。

「ごめんなさいっ!」

「こちらこそ。」

謝って立ち去ると、その女性は立ち止まって私を見ていたがそれに気付く事はない。

「…見つけた。」

そう呟いた彼女の言葉が私に届く筈もなかった。


翌日、放課後一人で作業をしていると目の前に影が出来る。

シーラかな?そう思って顔を上げると見たことの無い騎士服を着た女性が立っていた。一つに纏めた長い髪がサラリと揺れる。

「こんな遅くまで作業しているの?」

「あ、はい…。」

「そ。大変ね。」

知らない人にいきなり話しかけられて驚きながらも返事を返す。

誰!?

興味無さげに作業している紙をペラペラと捲っている。返事を素っ気なく返されて戸惑う私にゆっくりと視線を合わせた。

「あまり無理しちゃ駄目よ?身体弱いんだから。」

「! 」

そう言って私を見て目を細めると、金縛りに掛かったように私の身体が動かなくなる。

この人、どうして私の事を知ってるの?…あれ?私もこの人知ってる様な気が…。

「怖がらなくても大丈夫よ。貴女に用があるのは私じゃないもの。」

「貴女は…。」

「私はビアンカ・フォード。〝とある人〟に言われて貴女を探していたのよ。」

そう言って彼女、ビアンカは私の髪をひと撫でするとニコリと笑った。
私は目を大きくしてビアンカを見つめる。

ビアンカ・フォード。

あのアニメに出て来る〝とある人物〟の側近だ。

その側近が何で此処にいるの?と言うか…今、私を探してたと言わなかった!?何で!?

私はモブのモブだから。ストーリーに何の関係もない筈。

動揺を隠せずにいる私を見定める様に見つめるビアンカの視線から逃れたくて、苦笑しなからどうにか目を逸らした。

「え…っと、フォード様?どなたかとお間違えでは無いでしょうか?」

「いえ、間違い無いわよ?マーガレット・ブラン子爵令嬢。」

「…っ!」

取り敢えず私はビアンカに人違いだ、と訴えると逃げ場を断つ様に私の名を呼んだ。

いつの間私の事を調べたのだろうか?モブのモブに一体何の問題があるのだろうか?
判らない。判らないけれど、これだけはハッキリしている。

〝あの人〟の側近のビアンカが私を探していたのかは判らないけれど逃げなきゃ…。

何故かそう感じてしまった私席を立ちこの場を立ち去ろうとした。

「何処へ行くのかな?お嬢さん?」

「!?」

全く気配が無かったのに突然後ろから声を掛けられて、声にならない悲鳴を漏らした。

「エリオット様、お連れすると申しましたのにいらしたのですか。」

私の後ろにいる人物にビアンカが呆れた様に溜息を吐きながら言うと、ゆっくりとその人物は私の目の前まで移動して来た。

「いいじゃないかどの道会うんだし。それに…。」

「…っ!?」

「早く会いたかったんだよ。クラウスやヘクターを誑かした子に…ね?」

「!?」

呆れるビアンカにそう言うと、私にゆっくりと視線を合わせて微笑んだその目は、酷く冷たく感じる。

誑かす!?何を言っているの?この人は。

私が困惑しているとスッと紳士の礼をした。

「初めましてブラン嬢。私はエリオット・カティックだ。」

「…は、初めまして。マーガレット・ブランと申します。」

慌てて淑女の礼をして顔を上げてその人を真っ直ぐに見る。

うん。間違いない…。
逃げたい。今すぐ此処から逃げたい。
何故こんな事が起きているのだろうか。

彼、エリオット・カティックはこの国の第二王子で〝影〟を率いる方。所謂裏ボスだ。

特殊能力や身体能力に優れた人達をスカウトして訓練させ、魔物の討伐や彼エリオットの周りで動く不穏な者達を倒していくのだ。

それに目を付けられたのが、ユーリ、ケヴィン、クラウス、ヘクターだったのだ。

話を戻すと、王都に居る筈のエリオットや側近のビアンカが何故目の前にいるのだろうか?と言う事だ。

「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。私はどうしても気になる事があってね?」

「…気になる…ですか?」

「そう、だって気になるじゃないか。今まで何の文句も言わずにいた奴らが、突然外に(王都から)出たいなんて不思議だろう?」

エリオットは笑顔で私に話しかけて来るが、その目は笑っていない。私は思わず後退りしてしまう。
エリオットは淡々と話しながら、後退りする私に一歩また一歩と近づいて来る。

「あの冷静沈着なクラウスが、あの貴族嫌いのヘクターが、こんな何処にでもいる様な君みたいな子に執着するなんて。まあ、普通に…いや意外に愛らしくはあるか?」

「私は何も…。」

「まあ、他にも気になる事はあるんだけどね?それより……。」

笑顔で淡々と話すエリオットは、震える足で後退りする私をゆっくり追い詰めていく。

「君はどうして私を見てそんなに怯えてるのかな?」

「…っ!?」

そうエリオットに言われた瞬間、私が図星を指されて思わず目を見開くと、エリオットはそれを見逃さなかった。

「不思議だよね?私はこう見えて人に怯えられる事は無いんだ。」

表面上はね?と笑顔で呟いた気がした。

その瞬間、私は無意識の内に彼に「貴方を知っているので。」と言ってる様なものだと気付き、血の気が引いていく。

これはヤバイ。
前世の記憶があるなんてエリオットにバレたら間違いなく利用しようとする。彼はそういう人だ。

逃げなきゃ…。

そう考えていたその時トンッと、背中にぶつかったのは後退りし過ぎて壁だった。

エリオットは目の前まで迫っていて、どうにか離れようと横から逃げ出そうとした。

けれどそれはエリオットの手で遮られて、私は完全に逃げ場を失った。

「…何で逃げるのかな?」

「い、急ぎの用事を思い出したので……。」

「嘘が下手だね?」

「…っ!!」

エリオットは壁に私を閉じ込めたまま、頭一つ分の距離まで近づいて囁く様に呟く。

「うーん。これじゃあスパイにはなれないよね?動揺してるのがバレバレだ。君の目的何かな?」

「離れて…っ。」

近すぎる距離に離れてと訴えると、片手で私の手を壁に縫い付ける様にしてエリオットは私の顔を持ち上げる。

「それとも…君が話してくれる様になるまで、体に教え込んだ方がいいかな?」

「…っ!…辞めてください…っ!!」

「そんな顔すると煽るだけだよ。」

震える声で辞めてと頼むと、一瞬エリオットが息を飲んだ。
そしてそう言いながら、私に顔を近づけて来た。

「…っ!…やっ…!」

エリオットにファーストキスを奪われてしまうの?何で…!?

(クラウス…っ!)

私はもう駄目だと思った瞬間、クラウスが頭を過り、ギュッと目を瞑った。

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