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後半、エリオット目線になります。
ーーーーーーー

私とクラウスをいち早く見つけたエリオットが声をかけて来た。笑顔の筈のその顔は何処か強張っている様にも見える。 
何にせよ今エリオットに声をかけられた事に、私は内心ホッとしていた。

「やあ、よく来たね。」

「エリオット様!」

「エリオット様。お招き頂きありがとうございます。」

「やあクラウス。ブラン嬢、今宵は一段と美しいな。」

「ありがとうございます。」

そう言ってエリオットは私の手を取ると口付けた。王子様なだけにその仕草は洗礼されている。
クラウスが同じ事をすると素敵だけど、ドキドキし過ぎて心臓に悪いのだ。

そんな事を思っていた私は、クラウスの不機嫌な表情に気付くことはなかった。

「それで?ブラン嬢は確かカーク嬢と来る予定じゃなかったのかな?」

エリオットは微笑んで私に話しかけて来たのだけれど、何故だろう…凄く逃げ出したくなる。エリオットの目が笑っていないのだ。

「そうだったのですが、クラウスさ……クラウスが迎えに来て下さいましたの。」

「へえ…クラウス…ね。」

「…っ!」

クラウスに〝様〟を付けようとした瞬間、横にいたクラウスの方から鋭い視線を感じて慌てて言い直すと、今度はエリオットが凍てつく様な目で私に微笑みかけている。

何で!?

二人の間に只ならぬものを感じ、この場から逃げ出したい私がその方法を探していると、ビアンカがやって来てエリオットに耳打ちする。どうしたんだろう?

そんな二人の会話は聞こえないが、クラウスも只事ではないと感じ取ったらしく、先程の険悪な雰囲気から一転真剣な表情になっている。

「ブラン嬢、すまないがクラウスを少し借りる。」

「あ、はい。」

「…すまないな。行くぞクラウス。」

エリオットは申し訳なさそうに眉を下げて謝ると、ビアンカと共に踵を返して歩いて行った。

「マーガレットすまない。出来るだけ早く戻るから、最初のダンスは俺と踊ってくれるか?」

「は、はい…。」

嘆願するような眼差しで見つめてダンスを、と告げたクラウスに返事をすると、去り際にギュッと手を握られた。

まるで、離れたくないーーと言わんばかりに。

「…クラウス?」

「マーガレット、カーク嬢を探して一緒に居てくれ。その方が安心だから。」

「はい。」

「…行って来る。」

クラウスは離れる際に一人置いて行く私を気遣ってくれる。確かに私もシーラといた方が安心だ。しっかり頷いて返事をする私に安堵の笑みを浮かべたクラウスはエリオットの後を追って行く。

「行ってらっしゃい…っ!」

歩いて行くクラウスに後ろから声を掛けると、驚いた様に目を大きくして後破顔した。


◇◇◇◇◇
エリオットside
◇◇◇◇◇

クラウスがブランに好意を持っているのは初めから知っていたが、何故か面白くないと感じていた。

「エリオット様?如何されましたか?」

「いや何でもないよ。」

何とも言えない感情に胸の奥がモヤモヤとしていると、そんな様子を見たビアンカが声をかけてきた。

「そうですか。私はクラウスに嫉妬してるのかと思いましたが。」

「なっ!?」

淡々と告げるビアンカの言葉に驚いて、歩いていた足が止まる。

私が? クラウスに嫉妬!?

愕然とする私にビアンカは違うんですか?と言わんばかりに首を傾げる。

「んんっ!そんな訳ないだろう。それより報告を。」

「そうでしたね。」

ビアンカに言われた言葉への動揺を悟られない様冷静に振る舞いながら、私は先程の報告を受ける。

ビアンカがマーガレット嬢達と話している時に持って来たのは、王太子つまり私の兄上に王位を継がす為側に、いると都合の悪い私の命を狙った者達が今日この夜会で行動を起こすという報告だった。

私は王位を継ぐのは兄上だと思っているし、それを助けて行くのが私の役目だと思っている。

私が居て邪魔だと思う者は、兄上を利用しようとする奴らばかりだ。そんな奴らは兄上が王位を継ぐ前に余計な者は排除すべきだ。

「すでにヘクターとユーリ、ケヴィンは向かっています。」

「そうか。呉々も会場にいる者達に気付かれるなよ。…折角の夜会なのだからな。」

「はい、そうですね。…どうかしましたか?」

歩きながら話を続けていた私に、ビアンカが気遣う様に声をかけて来た。

「…いや、久しぶりに公の場に出ただろうブラン嬢に悪い事をしたと思っただけだ。」

「…そうですね。早く片付けて会場へ戻りましょう。」

「そうだな。」

会場に一人残るであろうマーガレット嬢を思いそう呟くと、いつも表情を崩さないビアンカが優しく微笑んだのには気付かず、私とビアンカはターゲットの元へ向かった。



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