モブのモブ!? 気付いたら、大好きなアニメの世界だった!?

SORA

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エリオット主催の夜会から数日が経った今も、あれは夢だったのではないか?と思わずにいられない気持ちでいた。

『マーガレット、君が好きだよ。』

頭の中で何度もクラウスの言葉が繰り返されその度に私は身悶えて、それをアリスが遠巻きに見守っている。

そんな事を繰り返していた私は、あの時クラウスに返事をしていない事に気付いた。

私、クラウスに好きだと伝えてない…。でも…。

そう…私はまだ迷っている。
クラウスやシーラ達の訪れる幸せな未来を変えてしまうのを。

シーラは確かに私に言った。

『私とオルセンが結ばれる運命は無い。私もオルセンも他に好きな人がいるのよ。』

まさかクラウスの好きな人が私だなんて思いもしなかったけれど…。

決して叶う事の無い恋だと思っていたから。

こんなにも胸の奥が熱くなるのは、クラウスが好きだと、愛しいと焦がれているからなのだと身体中で感じる。

私はこのままクラウスに想いを告げてもいいのだろうか?
運命を変えてしまっても良いのだろうか?

『マーガレット、君が好きだよ。』

私の頭の中をあの時のクラウスの姿が過ぎると、その姿を思って胸の奥が熱くギュッ、と締め付けられる。

結局私はクラウスを諦められないのだ。

彼に答えたい。

私の中にある確かな気持ちは既に形を成していた。

けれど、それならその前にやらなければならない事がある。

そう思った私はアリスに先触れを出す様に告げた。


◇◇◇◇◇

「突然訪問してしまい申し訳ありません。」

客間に通された私は、目の前にいるグレース様に膝を折ってカーテシーした。

「いいのよ~!私も久しぶりにマーガレットちゃんに会いたかったもの!」

目を細めて微笑みながら、優しく出迎えてくれたグレース様に笑みを返す。

そう、私はアスバン邸を訪れていた。
ヘクターに会いに来たのだ。

「ありがとうございます。私もグレース様にお会いできて嬉しく思います。…それで…ヘクターは…?」

「ああ、そうだったわね!ごめんなさい、嬉しくてすっかり忘れていたわ。」

グレース様はそう言いながら、隅に待機していた従者にヘクターを呼ぶ様に告げた。

少ししてヘクターが部屋にやって来て、私を見つけると笑みを浮かべた。

「マーガレット。」

「ヘクター、突然すみません。」

「会えて嬉しい。」

そう言って私の手を取ったヘクターは、目を細めて私を見ている。
ヘクターのその瞳に胸がギュッと締め付けられる。


「ヘクター、今日は大切な話があって来ました。」

「…庭に出るか。グレース様、マーガレットを借りる。」

私がそう言うと、ヘクターは私の手を取ってグレース様に一言告げて部屋を後にする。
部屋を出る時に見えたグレース様は、穏やかな笑みを浮かべて私達を見送っていた。

ゆっくりと庭に向かう間、ヘクターは無言のままだった。
いつも以上に口数は少なかっただけれど、繋がれた手が離れる事はなかった。

庭のガゼボに着いて、ヘクターと一緒にベンチに座った私達は無言だった。

勢いで話そうと此処まで来たのはいいけれど、どうやって話していいのか判らなくなってしまった私は言葉を発する事が出来ずにいた。

そんな中、先に口を開いたのはヘクターだった。

「…この庭でマーガレットと過ごしたな。」

「うん…。あの時グレース様に助けられて、ヘクターと再会して、こんなに仲良くなれるとは思わなかった。」

そう言ってヘクターを見ると、少し困った様に眉を寄せながら微笑んむ。

あのアニメのヘクターは、こんなにも優しい笑みを浮かべる事はなかった。
ヘクターはヘクターでも、今此処に彼は紛れも無く生きているのだ。

アニメのストーリー通りにならないのは、彼らがちゃんと生きているからなのだな、とそう思うと私は胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。

「ヘクター、私は貴方に出会えて嬉しい。」

「マーガレット…。ああ、俺も貴女に会えて嬉しい。」

私はヘクターに感謝を込めてそう告げると、ヘクターも目を細めて答えてくれた。

そう、だからこそちゃんと伝えなくては…。

「ヘクター、あの…っ!」

「マーガレット、判ってる。」

「!?」

意を決して口を開いた時、それをヘクターに遮られた。
ヘクターの瞳はどこか憂いを帯びている。

「…エリオットの夜会の翌日、クラウスが来た。」

「クラウスが…。」

「ああ。マーガレットに気持ちを告げたと。」

「っ!?」

ヘクターから告げられた言葉に息を飲む私。

クラウスがヘクターの所に!?
どうして…。

困惑している私の頭をそっと手を置いて目を細める。

「クラウスなりの誠意だろう。俺もクラウスにマーガレットが好きだと打ち明けたからな。」

「ヘクター…。」

「…貴族や平民に関係なく誰にでも優しいマーガレットに興味を持った。話していく内に、放って置けなくて目が離せなくなっていた。マーガレットの方が年上なのにな。」

ヘクターは私の頭を撫でながら話を続ける。

「たまに見る笑みが儚げで、今にも消えてしまうんじゃないかと思うと、俺が側で守りたいと思った。俺がマーガレットを笑顔にしたいと。」

「ヘクター…。」

ヘクターはそう言って撫でていた手を頬に添えて微笑んだ。

こんなにも思ってくれるヘクターに、答えられない申し訳なさに胸の奥が重く痛む。

ギュッ、と胸を抑える私に、こっちを見て?と誘導する様に顔を上げると、ヘクターの視線に囚われる。

「…マーガレット、彼奴が好きか?」

ヘクターの問いかけに、私は目を逸らさずに頷いた。

「…私、クラウスが好き。」

「…そうか。」

「ヘクター…ごめんなさい…。貴方の気持ちに答える事が出来なくて…っ。」

「…泣くな。俺はお前の笑った顔が好きなんだ。クラウスに泣かされたらすぐ攫いに行くからな。」

いつの間にか頬を伝っていた涙を、ヘクターがそっと指先で拭ってくれる。

ヘクターの気持ちに答えられない私は、優しくされる資格なんてないのに…。

それでもヘクターは何処までも優しかった。


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