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会場に戻った私の腕を見たシーラは心配しながら物凄く怒っていた。
別室に連れて行かれて、シーラが呼んできたホリーが治癒の力であっという間に治してしまった。
その横ではシーラが凄い形相でクラウスを責めていた。クラウスはそれを黙って聞いている。
「シーラ、辞めて?私が一人でいたのが悪いのだから。クラウスもごめんなさい。」
「マーガレット、いやカーク嬢は正しい。俺はエスコートを任せてくれと頼んだ。君から離れるべきではなかった。」
私がシーラとクラウスの間に入ると、クラウスは真摯にシーラの怒りを受け止めようとしていた。
「でも、エリオット様からの…。」
「理由はどうであれ、君を一人にしたのは俺だ。ちゃんとカーク嬢の元まで連れて行くべきだったんだ。すまなかった。」
「クラウス…。」
真っ直ぐに非を認めるクラウスの誠実さに胸を打たれる。
そんな私とクラウスのやり取りを見ていたシーラが、ワザとらしく大きく溜息を吐いた。
「今回はマーガレットが無事なのに免じて許すわ。オルセン次は無いわよ?」
「…ああ、すまない。」
「ふんっ!貴方の為じゃ無いわ。マーガレットは久しぶりの夜会なのよ!今度こそしっかりエスコートしなさい!」
「シーラ…。」
シーラはクラウスにそう告げると私の方へ向き直った。近づいて顔を耳元へ近づけると、
「ふふ、マーガレット楽しんで!」
「!…ありがとう。」
シーラはそう呟いて、ケヴィン達のいる方へと立ち去って行った。
シーラの立ち去った方を見ていた私の前に手が差し出される。
その手を取って辿って顔を上げると、少し眉を下げたクラウスが私を見つめていた。
ゆったりとした音楽が流れて来て、周りで次々とダンスを踊り出した。
「マーガレット、俺と踊って頂けますか?」
「…はい。」
私の腰に添えられた手がそっとクラウスの方へ引き寄せて、もう片方の手を包み込む様に…けれど、離さないと言わんばかりに私の体をしっかりとホールドする。
うわっ…!ち、近いっ!!
当たり前だけど、今更だけど、体を密着させるのだと気付いた私は体が強張った。
「…大丈夫。俺だけを見て?」
「…っ!」
クラウスが耳元に甘さを含んだ低い声で囁くとゾクリと、私の体が熱を持つ。
余計に緊張するのだけど!?
私を見つめたクラウスの目が熱を含む様に私を見つめて、私は息をするのを忘れた。
見つめられて私の心臓はドキドキし過ぎてどうにかなりそうなのに、余裕そうなクラウスに悔しくてムッとしながら睨むと、クラウスは目を大きくして破顔した。
クラウスが目を細めると、踊ろう?とでも言うように腰に回した手を自らの元に引き寄せて、ゆっくりと滑り出す様にステップを踏む。
音楽に合わせた流れる様な動きに段々楽しくなって、いつの間にか体の力もいい感じに抜けて自然と笑みが溢れる。
「良かった。」
「クラウス?」
「やっと君の笑顔を見る事が出来た。」
「!」
眩しい物を見る様にクラウスの瞳はその中にある熱まで移ってしまうのではないかと思うくらいに、真っ直ぐ私を射抜いた。
どのくらい見つめ合っていただろうか、いつの間にか音楽も終わり皆雑談していた。
「マーガレット、少し休憩しようか。」
「…そうですね。」
曲が終わるのも判らなくなるくらいに見つめ合っていたのかと思うと、急に恥ずかしさがこみ上げて来て下を向く私を、クラウスは私の腰に手を添えたまま、会場の外へ連れ出した。
連れて来られた場所は、王宮の中にある薔薇園だった。
「…綺麗。」
私が景色に見惚れていると、近くのベンチにクラウスはハンカチを敷いて私を座らせた。
「寒くはないか?」
「ええ風が心地よいです。」
さっきまで火照っていたので、風が心地よく体を冷やしていく。
風に乗って薔薇の香りが私とクラウスを包んで、心を落ち着かせてくれた。
「マーガレット、今日は本当にすまなかった。」
「いえ、お仕事ですもの。気にしないで下さい。」
「気にするに決まってる。マーガレット、君と過ごすのを楽しみにしていたんだ。」
「!」
驚く私を真っ直ぐに見たクラウスは、私の手をそっと握った。
握られた手がピクリと反応する。
クラウスが私と夜会に行くのを楽しみにしていた?
私が驚いていると、クラウスは目を細めて小さく笑った。
「招待状が届いた日に、カーク嬢に無理を言って頼み込んだんだ。君をエスコートさせて欲しいと。」
「そんな前から…。」
そう言ってクラウスは私の考えを呼んだかの様に答えてくれた。
「誰にも譲りたくなかった。」
「…っ!」
そう言ってクラウスは握っていた手をゆっくり持ち上げて、手の甲に口付けした。
「…マーガレット、君に思う人がいるのは知っている。」
「!?」
「けれど誰にも譲れない。譲りたくないんだ。」
「クラウス…。」
私を見つめるクラウスの熱を含む瞳に囚われて動けなくなる。
クラウスには思う人がいるんじゃなかったの?
シーラが言っていた事を思い出して、惑って視線を逸らそうとするとこっちを見て、とクラウスの手が頬に添えられて目をそらす事も出来ない。
「マーガレット、俺は君が好きだよ。」
「…っ!?」
「君が誰を好きでも、諦めるつもりはないから…覚悟して。」
クラウスはそう告げると、唇ギリギリに近い頬に口付けした。
ゆっくりと唇を離す直前に、チュッ…と耳に甘い音を残した。
「~~っ!?」
生々しい口付けの音に、思考が完全に停止していた私は覚醒して、顔から火が出るのでは?と思うくらい熱を持った。
「…今はこれで我慢するよ。」
クラウスは耳元でそう囁きながら微笑んで見せた。
完全に混乱して言葉を発する事が出来なかった私は、微笑んでいるクラウスを真っ赤な顔で見つめ返すので精一杯だった。
ちょっと待ってほしい。クラウスが私を好き?
神様、どうなってるんですか!?
混乱状態の私がクラウスに返事をしていないのに気付くのは、家について冷静になってからだった。
別室に連れて行かれて、シーラが呼んできたホリーが治癒の力であっという間に治してしまった。
その横ではシーラが凄い形相でクラウスを責めていた。クラウスはそれを黙って聞いている。
「シーラ、辞めて?私が一人でいたのが悪いのだから。クラウスもごめんなさい。」
「マーガレット、いやカーク嬢は正しい。俺はエスコートを任せてくれと頼んだ。君から離れるべきではなかった。」
私がシーラとクラウスの間に入ると、クラウスは真摯にシーラの怒りを受け止めようとしていた。
「でも、エリオット様からの…。」
「理由はどうであれ、君を一人にしたのは俺だ。ちゃんとカーク嬢の元まで連れて行くべきだったんだ。すまなかった。」
「クラウス…。」
真っ直ぐに非を認めるクラウスの誠実さに胸を打たれる。
そんな私とクラウスのやり取りを見ていたシーラが、ワザとらしく大きく溜息を吐いた。
「今回はマーガレットが無事なのに免じて許すわ。オルセン次は無いわよ?」
「…ああ、すまない。」
「ふんっ!貴方の為じゃ無いわ。マーガレットは久しぶりの夜会なのよ!今度こそしっかりエスコートしなさい!」
「シーラ…。」
シーラはクラウスにそう告げると私の方へ向き直った。近づいて顔を耳元へ近づけると、
「ふふ、マーガレット楽しんで!」
「!…ありがとう。」
シーラはそう呟いて、ケヴィン達のいる方へと立ち去って行った。
シーラの立ち去った方を見ていた私の前に手が差し出される。
その手を取って辿って顔を上げると、少し眉を下げたクラウスが私を見つめていた。
ゆったりとした音楽が流れて来て、周りで次々とダンスを踊り出した。
「マーガレット、俺と踊って頂けますか?」
「…はい。」
私の腰に添えられた手がそっとクラウスの方へ引き寄せて、もう片方の手を包み込む様に…けれど、離さないと言わんばかりに私の体をしっかりとホールドする。
うわっ…!ち、近いっ!!
当たり前だけど、今更だけど、体を密着させるのだと気付いた私は体が強張った。
「…大丈夫。俺だけを見て?」
「…っ!」
クラウスが耳元に甘さを含んだ低い声で囁くとゾクリと、私の体が熱を持つ。
余計に緊張するのだけど!?
私を見つめたクラウスの目が熱を含む様に私を見つめて、私は息をするのを忘れた。
見つめられて私の心臓はドキドキし過ぎてどうにかなりそうなのに、余裕そうなクラウスに悔しくてムッとしながら睨むと、クラウスは目を大きくして破顔した。
クラウスが目を細めると、踊ろう?とでも言うように腰に回した手を自らの元に引き寄せて、ゆっくりと滑り出す様にステップを踏む。
音楽に合わせた流れる様な動きに段々楽しくなって、いつの間にか体の力もいい感じに抜けて自然と笑みが溢れる。
「良かった。」
「クラウス?」
「やっと君の笑顔を見る事が出来た。」
「!」
眩しい物を見る様にクラウスの瞳はその中にある熱まで移ってしまうのではないかと思うくらいに、真っ直ぐ私を射抜いた。
どのくらい見つめ合っていただろうか、いつの間にか音楽も終わり皆雑談していた。
「マーガレット、少し休憩しようか。」
「…そうですね。」
曲が終わるのも判らなくなるくらいに見つめ合っていたのかと思うと、急に恥ずかしさがこみ上げて来て下を向く私を、クラウスは私の腰に手を添えたまま、会場の外へ連れ出した。
連れて来られた場所は、王宮の中にある薔薇園だった。
「…綺麗。」
私が景色に見惚れていると、近くのベンチにクラウスはハンカチを敷いて私を座らせた。
「寒くはないか?」
「ええ風が心地よいです。」
さっきまで火照っていたので、風が心地よく体を冷やしていく。
風に乗って薔薇の香りが私とクラウスを包んで、心を落ち着かせてくれた。
「マーガレット、今日は本当にすまなかった。」
「いえ、お仕事ですもの。気にしないで下さい。」
「気にするに決まってる。マーガレット、君と過ごすのを楽しみにしていたんだ。」
「!」
驚く私を真っ直ぐに見たクラウスは、私の手をそっと握った。
握られた手がピクリと反応する。
クラウスが私と夜会に行くのを楽しみにしていた?
私が驚いていると、クラウスは目を細めて小さく笑った。
「招待状が届いた日に、カーク嬢に無理を言って頼み込んだんだ。君をエスコートさせて欲しいと。」
「そんな前から…。」
そう言ってクラウスは私の考えを呼んだかの様に答えてくれた。
「誰にも譲りたくなかった。」
「…っ!」
そう言ってクラウスは握っていた手をゆっくり持ち上げて、手の甲に口付けした。
「…マーガレット、君に思う人がいるのは知っている。」
「!?」
「けれど誰にも譲れない。譲りたくないんだ。」
「クラウス…。」
私を見つめるクラウスの熱を含む瞳に囚われて動けなくなる。
クラウスには思う人がいるんじゃなかったの?
シーラが言っていた事を思い出して、惑って視線を逸らそうとするとこっちを見て、とクラウスの手が頬に添えられて目をそらす事も出来ない。
「マーガレット、俺は君が好きだよ。」
「…っ!?」
「君が誰を好きでも、諦めるつもりはないから…覚悟して。」
クラウスはそう告げると、唇ギリギリに近い頬に口付けした。
ゆっくりと唇を離す直前に、チュッ…と耳に甘い音を残した。
「~~っ!?」
生々しい口付けの音に、思考が完全に停止していた私は覚醒して、顔から火が出るのでは?と思うくらい熱を持った。
「…今はこれで我慢するよ。」
クラウスは耳元でそう囁きながら微笑んで見せた。
完全に混乱して言葉を発する事が出来なかった私は、微笑んでいるクラウスを真っ赤な顔で見つめ返すので精一杯だった。
ちょっと待ってほしい。クラウスが私を好き?
神様、どうなってるんですか!?
混乱状態の私がクラウスに返事をしていないのに気付くのは、家について冷静になってからだった。
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