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※王太子の婚約事情
「父上、それでクロエとの婚約は……」
話を切り替えて問う。
無事クロエと解消させてもらえるだろうか。厳しい父上のことだから、もしかすると王太子の座を降ろされてクロエとこのまま結婚しろと言われるかもしれない。そう言われても僕には拒否権などないから、その言葉に従うしかないが。
僕は覚悟を持って父上の言葉を待った。
「……お前とクロエ嬢との婚約なら、始めからしておらん」
「……はい?」
「だから、始めからしておらんと言ったんだ」
まさか、そんなはず。
「ですが彼女との婚約のことは、もう周知の事実で……」
「そんなこと知らん。わしはサルディ侯爵家に『王太子の新たな婚約者候補として名前が挙がっている』という手紙しか出しておらん。クロエが勝手に勘違いして言いふらしたのだろう」
父上はサルディ侯爵家……クロエの実家にそんな手紙を送ったのか。
しかしまだ候補でしかないというのに、クロエは婚約者に選ばれたとばかりに周りに言いふらしたのか。
……はぁ、つくづくダメだな僕は。
彼女にまんまとやられたんだ。
「わしからはそれだけだ。後は自力で何とかするんだな。因みに王太子の座が守れるかどうかは、お前の今後にかかっているぞ」
それだけ言うと父上はその場から去っていってしまった。
いったい僕はどうすれば良いんだ……?
周りの誤解を解くために、そして父上に認めてもらうために。
父上が去ってから数分後、僕も頭を抱えながらゆっくりと自室に戻った。
「アラン様ぁ、やっぱり私には無理ですぅ。先生も、やっぱり私がお嫌いなんだわ!あなたが王太子妃になるのは相応しくない、なんて言われたんですっ」
翌日、クロエがいつものようにレッスンを抜け出して僕の書斎に逃げて来た。シクシクと泣くクロエに対して僕は言う。
「あのね、クロエ。僕の話を一つだけ聞いてくれるかい?」
「何ですかぁ?」
クロエが顔を上げる。涙なんて一滴も流れてないことに気づいて僕はつい指摘してしまう。
「泣いていた割には、涙痕の一滴もないんだね。目も赤くないし。演技だったら相当酷いね」
「っ!」
クロエは目を見開いて僕を見た。いつもの僕ならこんな意地悪なことは言わないからだろう。そして次第にガタガタと震え出す。
「あの、アラン様っ、今のはただっ」
「もう理由なんて何でも良いよ。どうせ聞いても意味ないんだから。……それよりさ、クロエ」
「は、はいっ」
ビクッと体を震わせクロエが返事する。僕は彼女にいつものように笑みを向けるとこう尋ねた。
「僕たちがまだ婚約していないことについて、もしかして知っていたりする?」
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