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何度も何度もイカされて:03
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新幹線の車内は静かだった。
指定席に腰を下ろしてからというもの
颯は一言も発さず、窓の外ばかり見ている。
──普段なら。
景色が変わるたびに
嬉しそうに話しかけてきて、
駅弁のパッケージを嬉しそうに開け
柊にも「食べます?」と差し出してくれる。
けれど今日は、それが一切ない。
颯は手を膝の上でスマホを握りながら
表情を硬くして外を見つめ続けていた。
その異変に気づかないはずもなく──
柊は、そっと声をかけた。
「……颯? どうした?
具合でも悪い?」
すると、ぴくりと眉を動かした颯が、
視線を外に向けたまま
むすっとした声で言い放った。
「……なんでもありません!!」
少し間を置いて、肩をすくめる柊。
それでもその場は流すしかなかった。
隣にいるはずなのに、遠く感じる距離。
──それからしばらくして。
ポケットのスマホが震えた。
画面を見ると、颯からのメッセージ。
今日、終わったらうちに来てください
命令です
句読点の少ない、淡白な文章。
けれど、そこに込められた感情は
柊にははっきりと読み取れた。
──怒ってる?だけど
でも、ただの"怒り"ではない気がした。
柊は小さく息をつき、スマホを伏せて
ちらりと横目で颯を見る。
颯の表情は変わらず
まるで窓の外に心を閉じ込めているようだった。
柊の中に、小さくて重い火種が灯っていた。
帰り道の約束が
今夜どんな夜になるのか──
まだ、知る由もなかった。
▶︎
オフィスに戻って入社式の準備を終えた頃、
柊は颯と一緒に颯の家へと向かった。
横に並んで歩く颯の表情は
どこか不機嫌なまま。
無言の時間が続くたびに
怒っているのが伝わってくる。
けれど――
どうして怒っているのかが
わからない。
部屋に着くと
颯は靴を脱ぐなり黙って
リビングに腰を下ろした。
柊もその隣に座ると
ぴたりと沈黙が落ちる。
やがて、颯の口が開く。
「……なんで怒ってるか、わかりますか?」
その問いは
まるで恋人同士の喧嘩みたいで。
けれど、声色は少し震えていた。
柊は戸惑いながらも、
「わからない。ごめん。
……何か悪いこと、しちゃった?」と返す。
すると颯は、少し顔を背けながら言った。
「……先輩は
僕のものじゃないんですか?」
「僕のワンコじゃないんですか?」
いつもの支配者の仮面は
そこになかった。
代わりに現れたのは
抑えきれずに滲み出した
――確かな、嫉妬。
柊の胸が、きゅっと締めつけられる。
それは命令じゃない。支配でもない。
ただ、誰よりも独占したいという、
とても素直で、痛いくらい
真っ直ぐな“気持ち”だった
指定席に腰を下ろしてからというもの
颯は一言も発さず、窓の外ばかり見ている。
──普段なら。
景色が変わるたびに
嬉しそうに話しかけてきて、
駅弁のパッケージを嬉しそうに開け
柊にも「食べます?」と差し出してくれる。
けれど今日は、それが一切ない。
颯は手を膝の上でスマホを握りながら
表情を硬くして外を見つめ続けていた。
その異変に気づかないはずもなく──
柊は、そっと声をかけた。
「……颯? どうした?
具合でも悪い?」
すると、ぴくりと眉を動かした颯が、
視線を外に向けたまま
むすっとした声で言い放った。
「……なんでもありません!!」
少し間を置いて、肩をすくめる柊。
それでもその場は流すしかなかった。
隣にいるはずなのに、遠く感じる距離。
──それからしばらくして。
ポケットのスマホが震えた。
画面を見ると、颯からのメッセージ。
今日、終わったらうちに来てください
命令です
句読点の少ない、淡白な文章。
けれど、そこに込められた感情は
柊にははっきりと読み取れた。
──怒ってる?だけど
でも、ただの"怒り"ではない気がした。
柊は小さく息をつき、スマホを伏せて
ちらりと横目で颯を見る。
颯の表情は変わらず
まるで窓の外に心を閉じ込めているようだった。
柊の中に、小さくて重い火種が灯っていた。
帰り道の約束が
今夜どんな夜になるのか──
まだ、知る由もなかった。
▶︎
オフィスに戻って入社式の準備を終えた頃、
柊は颯と一緒に颯の家へと向かった。
横に並んで歩く颯の表情は
どこか不機嫌なまま。
無言の時間が続くたびに
怒っているのが伝わってくる。
けれど――
どうして怒っているのかが
わからない。
部屋に着くと
颯は靴を脱ぐなり黙って
リビングに腰を下ろした。
柊もその隣に座ると
ぴたりと沈黙が落ちる。
やがて、颯の口が開く。
「……なんで怒ってるか、わかりますか?」
その問いは
まるで恋人同士の喧嘩みたいで。
けれど、声色は少し震えていた。
柊は戸惑いながらも、
「わからない。ごめん。
……何か悪いこと、しちゃった?」と返す。
すると颯は、少し顔を背けながら言った。
「……先輩は
僕のものじゃないんですか?」
「僕のワンコじゃないんですか?」
いつもの支配者の仮面は
そこになかった。
代わりに現れたのは
抑えきれずに滲み出した
――確かな、嫉妬。
柊の胸が、きゅっと締めつけられる。
それは命令じゃない。支配でもない。
ただ、誰よりも独占したいという、
とても素直で、痛いくらい
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