先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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主導権は柊の手に:03

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柊の口から漏れた答えは
理性をすり抜けた本能そのものだった。

「……浴びない」

その瞬間、颯の口元に
ゆっくりと笑みが浮かぶ。

「ですよね……ワンコくん
 この時期、発情期みたいだし」

無造作に外したシャツの隙間から
まだ外気の熱を帯びた肌が覗く。

肩先に滲む汗が一粒
鎖骨をつたって胸元に消えていく。

それは見ているだけで、喉の奥が渇き
呼吸が浅くなるほどに甘い。

颯は一歩近づき、わざと距離を詰めた。

淡く香るのは、石鹸と
柔軟剤の匂いと、生の匂い。

外を歩いてきたばかりの体温と
ほんのりとした塩気が混じる香りが
柊の意識を支配していく。

「もう……僕の匂いに
 疼いてるんですよね?」

吐息が耳のすぐそばに落ち
鼓膜を震わせる。

柊は、わかりやすく喉を鳴らした。
熱が肺から漏れ出すたび
頬に触れる颯の呼気が重なる。

「……どうしたいですか?
 お願いしてくれないと、わからないですよ?」

至近距離で見下ろす瞳が
完全に試すように笑っている。
逃げ場はない。

柊の脳裏から
体裁も言い訳も消え去っていた。

「あ……ご主人様の匂いを……嗅ぎたいです」

吐息混じりの声が
抑えきれず零れ落ちる。

颯は目を細め
その唇の端を緩やかに吊り上げた。

「……ちゃんとお願い
 できるようになって偉いです」

ゆっくりと手を伸ばし
エアコンのスイッチを切る。

機械音が途絶え、部屋の空気が
じわじわと夏の温度を取り戻していく。

肌にまとわりつく湿気が
さらに空気を濃くした。

颯は何も言わず
柊の顎を指先で持ち上げる。

視線が絡み
互いの吐息が混ざり合う距離。
柊の胸の内で、最後の理性が
音もなく崩れ落ちた。



颯は、ゆるやかにシャツを肩から滑らせた。

布が肌を離れるたび
空気がわずかに揺れ
熱が柊の方へと流れ込んでくる。

指先で生地をつまみ
最後まで脱ぎ切ると
ためらいもなく床へ落とした。

露わになった上半身は
外の熱気を吸ったまま、まだ温かい。

肌の表面には
ごく薄い汗の膜がきらりと光っている。

視線を奪うのは、喉元から鎖骨へ
そして胸元へと続く柔らかな曲線。

鎖骨の窪みには
小さな汗の粒が溜まっている。

颯は一歩近づくと
座ったままの柊の首に
ためらいもなく腕を回す。

ゆっくりと腰を落とし
太ももに跨った。

体重がわずかにかかり
布越しに伝わる温もりが急に濃くなる。

同時に、肌から漂う生の匂いが
一気に距離を詰めてきた。

それは柊の感覚を一瞬で塗りつぶす。

颯は顔を近づけ
耳元すれすれに唇を寄せる。

「……ワンコくん。
 まずは、どこの匂いを嗅ぎたい?」

低く落ちた声は
吐息と一緒に耳の奥を撫で
背筋に微かな震えを走らせた。

「せっかく、ワンコくんから
 誘ってくれたんですから……
 ご褒美に、今日はお願い聞いてあげます」

腕の力がわずかに強まり
動きを封じられた柊の視線は
目の前の肌から離れられない。

「好きなところ……嗅いでいいですよ」

颯はほんの少しだけ
腰をずらし、距離を詰める。

「……どこがいい?」

可愛い笑みを帯びた瞳が
柊の反応をじっと待つ。

その視線は、逃げ場を塞ぐ
檻のようでありながら
同時に甘く誘う罠でもあった。
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