先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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柊のマーキング:01

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9月になった。

朝晩の空気に少しだけ
秋の匂いが混ざり
汗ばむ日々の中にも
涼しさが顔を出す。

そのせいだろうか――颯との間に
ふと距離ができたような気がした。

思い返せば
去年もこの時期はそうだった。
あの時も、急に支配の手が緩んで
こちらばかりが疼き
落ち着かなくなっていた。

欲しがっているのに
自分からは言えない。
「可愛がって欲しい」とも
「抱いてください」とも。

ただ、じっと待つことしかできず
時間だけが空いていった。

そして月末。
颯は有休を使って会社を休んでいた。
去年も同じ日に休んでいたから
きっと何か特別な用事があるのだろう――
そう思った。

颯のいないオフィスは
いつもより少し広く感じられた。

1人で黙々と資料を作り
メールを返し、電話に応じる。

それでも仕事はなかなかスピードに乗らず
気がつけば残業の時間になっていた。

誰もいないフロアで
パソコンのキーを叩く音だけが
小さく響き続けていた。

壁掛け時計の針が静かに進む音と
パソコンのファンの
低い唸りだけが空間を満たしている。

ひと段落ついたところで
柊は椅子から立ち上がった。
給湯室へ歩き、カップにコーヒーを注ぐ。

淹れたての苦い香りが
静まり返った夜の空気に広がった。
熱いコーヒーを両手で包み込み、一息つく。

デスクに戻ると
スマホの画面が小さく点滅していた。
どうやら給湯室へ行っている間に
メッセージが届いていたらしい。

画面をスワイプすると
そこには颯の名前。
胸の奥が少しだけ弾む。

『お疲れ様です🐶
 まだお仕事中ですか?
 僕がいないと、書類の山
 が全然片付かない~とか言ってません?
 寂しかったりします?』

ふざけた文面に思わず口元が緩む。

続けて、もう一通。

『実は先輩にお願いがあって😶
 会社に忘れ物しちゃってるので
 もし先輩まだ会社にいるなら
 ちょっと見てきてもらえませんか?』

メッセージを読み終えた瞬間
コーヒーの香りよりも
颯の存在感が胸に広がっていく。

『……寂しいとかはともかく。
 案の定、残業でひとりぼっち😐』

ふっと苦笑しつつ、もう一通。

『忘れ物って、どこにあるんだ?』

送信ボタンを押して間もなく
即座に既読が付き、返信が届く。

『更衣室のロッカーの中です🥺
 僕のロッカーにはそれしか入ってないから
 すぐにわかると思います!』

どうやら探すのは簡単そうだ
と安心して『わかったよ』と返すと
またすぐに着信音が鳴った。

『ありがとうございます🐶
 じゃあまた休み明けにお会いしましょう。
 僕に会えない間は
 シコシコして待っててくださいね?』

呆れたように笑いながらも
短く返信を打った。
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