先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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柊のマーキング:02

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コーヒーを机に置き、立ち上がる。
夜のオフィスを抜け、更衣室へ足を運ぶ。
ひとりきりの廊下に、革靴の音がコツコツと響く。

更衣室に入ると、
「神城」と書かれたプレートの
ついたロッカーの前に立つ。

ロッカーの中には
白いワイシャツが一枚
ハンガーに吊るされていた。

新品のように皺ひとつない生地。
ロッカーのその奥から――
颯の匂いがふわりと鼻腔を掠める。

清潔感のある柔らかな香り。
けれど、その奥にわずかに混ざる汗の記憶。
それは、間違いなく颯の匂いだった。

たったそれだけで
柊の背筋を微かに震わせる。

手を伸ばし、そのシャツを
ハンガーから外す。

――なのに。

指先が生地を撫でると
身体の奥が疼く。

颯の支配から解かれているこの頃
心のどこかに
ぽっかり空いた寂しさがあった。

そしてそれは
欲求不満という形で静かに積もっていた。

「……っ」
喉が小さく鳴る。
自分でもその音が
耳に届くほど、渇いていた。

シャツを胸に抱えたまま
更衣室の椅子に腰を下ろす。

両手でしっかりと
生地を握りしめ、視線を落とす。

視界いっぱいに広がるのは
颯の残り香が染み込んだ白。

嗅ぐことも、触れることも
許されていないはずなのに――
その衝動は抑えきれなかった。

更衣室の空気には
わずかにこもった汗の匂いが残っていた。
それが誰のものかはわからない。

けれど、その中に――
自分だけが知っている
清潔感の奥に微かに混ざる
颯の匂いが確かにあった。

目の前には
颯が着ていたであろう白いワイシャツ。
「忘れてた」ということは……
きっと着替えたあと
そのまま置きっぱなしにしたのだろう。

つまりこれは
颯が汗をかいたあとに脱いだシャツ――
そう勝手に推測し
都合のいい妄想を重ねてしまう。

「……っ」
喉が、また鳴った。

夜のオフィス。
更衣室のドアは閉ざされ
ここには自分以外誰もいない。

冷静になればなるほど
その事実が背中を押す。

見られていない、聞かれていない――
だからこそ、理性が溶けていく。

股間はもう、はっきりと主張していた。
鼓動と同じリズムで脈打ち
ズボンの内側で熱を持っている。

罪悪感に打たれながらも
欲望には勝てなかった。
そして、ゆっくりと顔を近づけた。

鼻先が生地に
触れるか触れないかの距離で
一度深く息を吸う。

すぐに、あの香りが押し寄せた。
洗い立てのような清潔感の中に
微かな体温の名残。

自分しか知らない
颯の“仕事終わり”の匂いだった。

鼻を鳴らしながら
もう一度、そしてもう一度。

嗅ぐたびに胸の奥が熱くなり
股間はさらに硬さを増していった。

柊は、ワイシャツをそっと膝の上に広げた。
まだ微かに温もりを残しているような
その生地を、指でなぞる。

手触りはさらりとしているのに
どこかしっとりとした柔らかさがある。
そんな気がした。
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