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それぞれの年越しへ:14
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お風呂の中は
熱いシャワーとふたりの体温
そして立ち込める湯気でむせ返るように満ちていた。
荒い呼吸を整えられないまま
颯は柊を抱きしめただ動けずにいる。
柊はその濡れた髪を優しく撫で
落ち着かせるように囁いた。
「……颯?」
小さく返ってきた声は掠れて震えていた。
「……激しすぎて……疲れちゃいました……」
「先輩……のせいで…」
そう言った颯の横顔は
泣いているようにも見える。
頬を伝う雫はシャワーの水なのか
汗なのか、それとも涙なのか。
悲しいのか、苦しいのか
それとも、ただ疲れているのか
判別できないほどに混じり合い
湯気に霞んで消えていく。
柊はその顔を胸に抱き寄せ
濡れた小さな背中を撫でながら息を重ねた。
熱に溶けきったふたりの身体は
まだ互いを離すことができなかった。
シャワーで互いの身体を流し終えたあと、
柊はタイルの上で息をつきながら
尻の奥に残ったものをかき出していた。
「……っ、はぁ……」
肩で息をする柊を
湯船に浸かった颯が覗き込む。
「先輩……なんか、それ。
すっごくえっちですね」
頬を赤らめながらも
どこか楽しそうに笑う。
柊は顔をしかめて
「これ大変なんだぞ」と返しながらも
仕方なく奥に溜まったものを押し出す。
「それ……やってて、興奮しません?」
「いつか僕との子犬生まれてきますね」
颯がからかうように声を落とすと
柊は視線を逸らして小さく答える。
「……それは……ちょっとは、な」
「それに、先輩何回イケるんですか?
ほんと羨ましいんですけど……」
「ずるいです。先輩ばっかり」
「そっそう言われても……」
湯気と笑い声が混じる浴室に
妙に甘酸っぱい空気が流れていった。
風呂を上がったあと
2人は並んでソファに腰を下ろす。
髪をタオルで拭きながら柊が口を開いた。
「明日は気をつけて久遠に帰るんだぞ」
それを聞いた颯は
ぱっと笑顔を見せて
「わ、なんか先輩っぽい。イケメーン」
と、わざとからかう。
柊は少し照れくさそうに息をついた。
颯は小さく頷き
柊の隣にそっと寄り添った。
けれど、その表情はどこか寂しげで
目の奥に淡い影が差しているように見える。
「……先輩こそ、気をつけてくださいね。
また休み明け、必ず会いましょうね。
約束ですよ。」
「無事じゃなかったら
ただじゃおきませんよ」
「なんかそう言われるとこわいな……
気をつけるよ……」
「それならいいです……っふふ。」
笑おうとする唇の端が少し震えていて
その声はどこか儚く響いた。
寝床に入りベッドで目を閉じる颯に
ソファで横になった柊は、声をかけた。
「……颯? 久遠に行って
“大切な人に会う”って
言ってたけどそれって……?」
薄暗い部屋に一瞬の沈黙。
颯は布団の中で小さく肩を動かし
柊の方を見ずに言う。
「先輩って、本当に何でも気になるんですね。
……でも、先輩が思ってるような
変態なことをしに行くわけじゃないですよ。
安心してください」
その声音は、どこか
触れてほしくない壁をつくるようだった。
「……そっか。ごめん。
踏み込みすぎた。忘れて」
柊がそう言って静かに
目を閉じると、しばしの間があった。
やがて、布団越しに小さな声が落ちてくる。
「……お墓参りです。
大切な人……というより、大切だった人の」
その言葉が闇に溶けて消えると
同時に、颯は「おやすみなさい、先輩」
とだけ告げて、静かに眠りに落ちていった。
そして、翌朝。
颯が手際よく用意した朝食を
2人で食べ柊は颯の家を後にした。
その日の午後──
年越しをそれぞれの場所で迎えるため
柊は風浦へ、颯は久遠へと向かった。
風浦へ向かう電車の中。
スマホに颯からのメッセージが届く。
――
帰省中は変な気を起こさないこと🐶
掘られたくなっても
変な発展場とか行って
病気とか拾ってこないでくださいね🐶
――
思わず吹き出しそうになりながら、柊は返信する。
――
それは颯の方だろ🐶
マッチングアプリ禁止🐶
――
すぐに既読がつき
矢継ぎ早に返事が返ってきた。
――
ひどい。もう登録してませんし。
心外です。ありえないです。
――
柊は画面を見つめ、指を止める。
――
うそうそ。
颯。ありがとう🐶
――
短く、素直なお礼を返すと
すぐにスタンプが飛んできた。
――
わかればよろしい🐶
――
メッセージの真意は嫉妬や不安で
柊が颯の見えない場所で
乱れてしまわないように
心配してくれているのだと
なぜかそう思った。
その優しさが胸に広がり
自然と微笑みがこぼれる。
車窓に映る自分の横顔を見ながら
柊は青く澄んだ冬の空を見上げた。
電車は揺れに身を任せ
静かに風浦へと進んでいった
熱いシャワーとふたりの体温
そして立ち込める湯気でむせ返るように満ちていた。
荒い呼吸を整えられないまま
颯は柊を抱きしめただ動けずにいる。
柊はその濡れた髪を優しく撫で
落ち着かせるように囁いた。
「……颯?」
小さく返ってきた声は掠れて震えていた。
「……激しすぎて……疲れちゃいました……」
「先輩……のせいで…」
そう言った颯の横顔は
泣いているようにも見える。
頬を伝う雫はシャワーの水なのか
汗なのか、それとも涙なのか。
悲しいのか、苦しいのか
それとも、ただ疲れているのか
判別できないほどに混じり合い
湯気に霞んで消えていく。
柊はその顔を胸に抱き寄せ
濡れた小さな背中を撫でながら息を重ねた。
熱に溶けきったふたりの身体は
まだ互いを離すことができなかった。
シャワーで互いの身体を流し終えたあと、
柊はタイルの上で息をつきながら
尻の奥に残ったものをかき出していた。
「……っ、はぁ……」
肩で息をする柊を
湯船に浸かった颯が覗き込む。
「先輩……なんか、それ。
すっごくえっちですね」
頬を赤らめながらも
どこか楽しそうに笑う。
柊は顔をしかめて
「これ大変なんだぞ」と返しながらも
仕方なく奥に溜まったものを押し出す。
「それ……やってて、興奮しません?」
「いつか僕との子犬生まれてきますね」
颯がからかうように声を落とすと
柊は視線を逸らして小さく答える。
「……それは……ちょっとは、な」
「それに、先輩何回イケるんですか?
ほんと羨ましいんですけど……」
「ずるいです。先輩ばっかり」
「そっそう言われても……」
湯気と笑い声が混じる浴室に
妙に甘酸っぱい空気が流れていった。
風呂を上がったあと
2人は並んでソファに腰を下ろす。
髪をタオルで拭きながら柊が口を開いた。
「明日は気をつけて久遠に帰るんだぞ」
それを聞いた颯は
ぱっと笑顔を見せて
「わ、なんか先輩っぽい。イケメーン」
と、わざとからかう。
柊は少し照れくさそうに息をついた。
颯は小さく頷き
柊の隣にそっと寄り添った。
けれど、その表情はどこか寂しげで
目の奥に淡い影が差しているように見える。
「……先輩こそ、気をつけてくださいね。
また休み明け、必ず会いましょうね。
約束ですよ。」
「無事じゃなかったら
ただじゃおきませんよ」
「なんかそう言われるとこわいな……
気をつけるよ……」
「それならいいです……っふふ。」
笑おうとする唇の端が少し震えていて
その声はどこか儚く響いた。
寝床に入りベッドで目を閉じる颯に
ソファで横になった柊は、声をかけた。
「……颯? 久遠に行って
“大切な人に会う”って
言ってたけどそれって……?」
薄暗い部屋に一瞬の沈黙。
颯は布団の中で小さく肩を動かし
柊の方を見ずに言う。
「先輩って、本当に何でも気になるんですね。
……でも、先輩が思ってるような
変態なことをしに行くわけじゃないですよ。
安心してください」
その声音は、どこか
触れてほしくない壁をつくるようだった。
「……そっか。ごめん。
踏み込みすぎた。忘れて」
柊がそう言って静かに
目を閉じると、しばしの間があった。
やがて、布団越しに小さな声が落ちてくる。
「……お墓参りです。
大切な人……というより、大切だった人の」
その言葉が闇に溶けて消えると
同時に、颯は「おやすみなさい、先輩」
とだけ告げて、静かに眠りに落ちていった。
そして、翌朝。
颯が手際よく用意した朝食を
2人で食べ柊は颯の家を後にした。
その日の午後──
年越しをそれぞれの場所で迎えるため
柊は風浦へ、颯は久遠へと向かった。
風浦へ向かう電車の中。
スマホに颯からのメッセージが届く。
――
帰省中は変な気を起こさないこと🐶
掘られたくなっても
変な発展場とか行って
病気とか拾ってこないでくださいね🐶
――
思わず吹き出しそうになりながら、柊は返信する。
――
それは颯の方だろ🐶
マッチングアプリ禁止🐶
――
すぐに既読がつき
矢継ぎ早に返事が返ってきた。
――
ひどい。もう登録してませんし。
心外です。ありえないです。
――
柊は画面を見つめ、指を止める。
――
うそうそ。
颯。ありがとう🐶
――
短く、素直なお礼を返すと
すぐにスタンプが飛んできた。
――
わかればよろしい🐶
――
メッセージの真意は嫉妬や不安で
柊が颯の見えない場所で
乱れてしまわないように
心配してくれているのだと
なぜかそう思った。
その優しさが胸に広がり
自然と微笑みがこぼれる。
車窓に映る自分の横顔を見ながら
柊は青く澄んだ冬の空を見上げた。
電車は揺れに身を任せ
静かに風浦へと進んでいった
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