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颯のマーキング:01
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地方都市への一泊二日の出張。
同行するのは、颯。
初の遠出ということで
颯は少し浮かれているようにも見えた。
取引先との打ち合わせは
滞りなく終わり、宿へと向かう。
古めのビジネスホテル。部屋はツイン。
「先輩、こっちです」
颯が先にドアを開ける。
中はシンプルで、狭すぎず、広すぎず。
必要最低限の家具とベッドが、二つ。
「疲れたな」
「おつかれさまでした」
颯は荷物をベッドの横に置くと
背伸びをして一息ついた。
柊もジャケットを脱ぎ、ベッドに腰を下ろす。
「シャワー、先入るね」
「どうぞ」
浴室に向かう途中、ふと記憶がよぎった。
――あの夜のこと。
颯の部屋に泊まった
あの終電を逃した夜。
何気なく見たゴミ箱の中
山のように詰まれたティッシュ。
違和感の正体が掴めずに
それでも記憶のどこかに引っかかったままだ。
シャワーの音に紛れて
その記憶は泡のように揺れていた。
* * *
風呂を済ませると
颯がすぐに交代で浴室へ。
柊はTシャツとスウェットに着替え
ベッドに身体を預ける。
テレビもつけず、静かな夜。
やがてシャワーが止まり
颯がバスルームから出てきた。
濡れた髪、ラフなTシャツ姿。
どこか、普段より無防備に見える。
「先輩、今日の資料……もう完璧でしたね」
「ん、ありがと。
お前の準備があったからだよ」
「……僕はまだまだですけど。
もっと隣で見てたいなって、思いました」
その目線に、どこか熱を感じた。
どこか感情の色が濃い。
ライトを落とすと
部屋はほの暗くなった。
隣のベッドに入った颯は
すぐには寝つかないようで
布団の擦れる音が、かすかに続いていた。
「……先輩」
「ん?」
「寝る前に
少しだけ話してもいいですか?」
「……いいけど」
「この前、僕の家に泊まってくれたとき」
「……」
「先輩、全然気づいてませんでしたよね。
僕が起きてたの」
その声は柔らかかったけれど
妙に耳に残った。
柊の背筋がわずかに強張る。
「先輩って……案外、無防備ですよね。
寝顔、けっこう好きでした」
「ん……?」
「大丈夫。何もしてませんから。」
その言葉はやけに意味深だった。
そして、沈黙。
柊は、寝返りを打つふりをして
そっとそっぽを向いた。
しかし、心臓だけがなぜか速くなる。
ドアの鍵がかかっていることを
なぜか意識していた。
同行するのは、颯。
初の遠出ということで
颯は少し浮かれているようにも見えた。
取引先との打ち合わせは
滞りなく終わり、宿へと向かう。
古めのビジネスホテル。部屋はツイン。
「先輩、こっちです」
颯が先にドアを開ける。
中はシンプルで、狭すぎず、広すぎず。
必要最低限の家具とベッドが、二つ。
「疲れたな」
「おつかれさまでした」
颯は荷物をベッドの横に置くと
背伸びをして一息ついた。
柊もジャケットを脱ぎ、ベッドに腰を下ろす。
「シャワー、先入るね」
「どうぞ」
浴室に向かう途中、ふと記憶がよぎった。
――あの夜のこと。
颯の部屋に泊まった
あの終電を逃した夜。
何気なく見たゴミ箱の中
山のように詰まれたティッシュ。
違和感の正体が掴めずに
それでも記憶のどこかに引っかかったままだ。
シャワーの音に紛れて
その記憶は泡のように揺れていた。
* * *
風呂を済ませると
颯がすぐに交代で浴室へ。
柊はTシャツとスウェットに着替え
ベッドに身体を預ける。
テレビもつけず、静かな夜。
やがてシャワーが止まり
颯がバスルームから出てきた。
濡れた髪、ラフなTシャツ姿。
どこか、普段より無防備に見える。
「先輩、今日の資料……もう完璧でしたね」
「ん、ありがと。
お前の準備があったからだよ」
「……僕はまだまだですけど。
もっと隣で見てたいなって、思いました」
その目線に、どこか熱を感じた。
どこか感情の色が濃い。
ライトを落とすと
部屋はほの暗くなった。
隣のベッドに入った颯は
すぐには寝つかないようで
布団の擦れる音が、かすかに続いていた。
「……先輩」
「ん?」
「寝る前に
少しだけ話してもいいですか?」
「……いいけど」
「この前、僕の家に泊まってくれたとき」
「……」
「先輩、全然気づいてませんでしたよね。
僕が起きてたの」
その声は柔らかかったけれど
妙に耳に残った。
柊の背筋がわずかに強張る。
「先輩って……案外、無防備ですよね。
寝顔、けっこう好きでした」
「ん……?」
「大丈夫。何もしてませんから。」
その言葉はやけに意味深だった。
そして、沈黙。
柊は、寝返りを打つふりをして
そっとそっぽを向いた。
しかし、心臓だけがなぜか速くなる。
ドアの鍵がかかっていることを
なぜか意識していた。
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