先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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颯のマーキング:10

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「あっ……見えてると
 覚えにくいですよね……」

颯はそう言って手元にあった布を
やんわりと柊の目元へ当てた。

押しつけるわけでも
乱暴でもない。
ただ、丁寧に、隠すように。

「……目……隠しますね?」

ふいに視界が閉ざされ
世界が音と匂いだけになる。

薄暗い部屋の静寂の中で
柊の心臓の鼓動だけがやけに響いた。

(なんで……こんなことに……)

思考は曇る。けれど身体は
わずかに震えながらも
なぜか拒みきれない。

恐怖とは違う、なにか妙な緊張と熱が
じわりと喉元を這い上がってくる。

颯の声がすぐ耳元で落ちる。

「どうですか、先輩。
 見えないって、不安ですよね」

「でも、感覚が……
 鋭くなってきますから……」

言葉の合間に、微かに聞こえる吐息。
そして、すぐ近くに寄る気配と
ふわりとした香り。

(この匂い……)

石鹸の香りの奥に
かすかに熱を帯びた
汗の匂いが混ざっている。

視界が奪われたことで
わずかな体温の違いも
音の反響も、香りの輪郭も
いやに濃い。

「僕の香り
 さっきより強くなってます」

「……先輩が熱いから汗ばんで。
 汗が皮膚から、滲んで」

囁きが、すぐ首の辺りをかすめた。
柊の喉が、無意識にごくりと鳴る。

「ねえ、先輩。
 どんな匂いに感じますか?」

「正直に、教えてください。
 僕の匂い……強く感じました?」

静かに、でも確実に心の奥を
追い詰めてくる颯の声。

いつものように
礼儀正しい語調のまま
まるで何でもない会話のように
支配が進行していく。

見えない。
けれど、はっきり感じている。

視界を奪われた柊は
もはやどこに顔を
向けているのかも分からない。

だが――その曖昧な空間が
なぜか心地よくて。

(やばい……何なんだ、この感覚……)

身体の奥が、ゆっくりと馴染んでいくように
香りが浸透していく。

まるで、五感すべてを使って
「自分」という存在を
塗り替えられていくようだった。
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