先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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跨る支配:03

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「先輩……」

低く、囁くような
声が喉元をかすめた。

目の前にいるのに
声はまるで耳の奥で直接響くようで。

「僕……我慢できないかも……」

ネクタイを引いた指が、そっと離れる。
代わりに、胸元へ手のひらを置かれ
ゆっくりと圧がかかる。

「さっきからずっと──」

指先が柊のシャツの
布地を軽く握りしめる。

「先輩の匂いに……
 ずっと興奮してるんです」

「先輩も……わかってますよね?」

跨った体からじんわりと熱を帯びた
颯の硬くなったものが
自分のヘソのあたりに
当たるのがわかる。

体温の境界線が曖昧になって
ぴたりと密着する感覚。

「先輩の反応も
 全部……ここで感じてますよ」

自分の尻を柊の突起している物に
沿わせるように押しつけながら
颯は小さく、甘く笑った。

「先輩──」

「さっきの
 “期待してたんですか”って質問、」

「……まだ答えてもらってませんけど」

首筋に顔を寄せ
鼻先を軽く擦りつける。

空気の揺れが肌を撫で
浅い呼吸がぴたりと重なる。

「どうなんですか」

「今日、僕の家に来たのは……」

「本当に、お酒だけが
 目的だったんですか?」

そして、唇がそっと頬に触れる。
柔らかく、軽く──
それなのに、深く刺さる。

「……もう、認めて下さい...」

「先輩が僕を求めてるの
 ちゃんとわかってますから」

▶︎

目を伏せながらも
膝の上から離れない
颯が、顔を上げる。

その瞳は真っ直ぐで
だけどどこか艶を帯びていた。

耳元に唇を近づける。
かすかな吐息が肌を撫でる。

まるで空気ごと
心をくすぐられているようだった。

「今日……」

「僕のどこを、見てましたか?」

「目……唇、それとも……」

ふっと、子猫の様に……
すり寄るように密着する。 

「……匂い?」

甘く囁いた後、首筋に鼻先を当てる。
すうっとひと息、深く吸い込む。

「わかります。匂いって
 すごくえっちですから。
 一度、嗅ぐと……クセになる……」

それはまるで、温度まで
嗅ぎ取っているかのような言い方だった。

そして──もう一度、耳元。

「教えてください」

「何が……欲しいんですか?」

「僕のどこが……欲しいんですか?」

ぴたりと唇が肌に触れる。
その一瞬の温もりに、身体が反応する。

「黙ってるってことは……」

「僕に任せるってことですか?」

甘く、でも揺さぶるように。
それは、逃げ道を塞ぐための言葉の刃だった。

▶︎

颯の小さな手が
柊の手首をなぞる。
指先は決して強くはないのに
逃げ道を塞ぐには十分すぎた。

「ねえ……
 答えてくれないんですか?」

耳元に甘く触れるような声。
問いかけというより
誘い込む呪文のようだった。

唇が肌に、ぴたりと触れた。
その一瞬の温もりに、柊の喉がぴくりと動く。

それでも──何も言えずにいた。
自分の中で渦巻くものの正体を
言葉にするのが怖かった。

けれど、もう限界だった。

「……神城……」

声が震えていた。
言い慣れたはずの
彼の名前がこんなにも遠い。

「……神城の匂いを嗅ぎたい……」

たどたどしく
かすれるような声。

でも、その一言だけで──
柊の中で何かが壊れた。

言ってしまった。
理性が、羞恥が
最後に守っていた境界線が。

目を伏せたまま、柊は息を呑んだ。

その瞬間
颯の表情がふわりと綻ぶ。

「……よく言えました。えらいです。」

まるで褒めるように、慈しむように。

でもその奥には
確かな熱が潜んでいた。

「そんなふうに
 欲しがってくれるなんて……」

「先輩って、本当に……
 可愛い人ですね。」

そっと、颯は体を
重ねるように近づけて、
肩に頬を寄せながら──囁いた。

「じゃあ……
 たくさん嗅いでください。」

「僕の匂い……あげます。」

「だからもう
 知らないふりとか……
 できませんよ?」

「今さら逃げるなんて
 そんなの……」

「僕が、許しませんから。」
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